コレステロールを下げる薬と高血圧を治す薬を組み合わせるなど、効き目が異なる複数の成分を1つにまとめた「配合剤」をけん制する動きが中医協で活発化している。「配合剤」は、1回に服用する薬の錠数を減らすことができるなど、患者にとって利便性が高い薬とされる。しかし、中医協委員は「先発品メーカーに利便性がある」という点を問題視しているように見える。(新井裕充)
中医協(会長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)は6月10日の総会で、新医薬品9成分19品目の薬価収載を承認したが、「配合剤」の扱いをめぐって議論があった。
最初に問題になったのは、高血圧薬(ARB)と利尿薬の配合剤「ミコンビ錠」(日本ベーリンガーインゲルハイム)。支払側の委員から、「どういった点が患者の利便性の向上に資するといえるのか」との質問が出た。
「ミコンビ錠」は、「テルミサルタン」いうARBと、「ヒドロクロロチアジド」という利尿剤を配合した薬。厚生労働省の担当者は、「2剤を合わせて、より高い降圧効果が期待できるということが、一番のメリット。利尿薬で懸念される副作用を『テルミサルタン』で軽減する」と説明したが、議論は止まらなかった。
なぜ、中医協委員は「配合剤」に過敏になっているのだろうか?
現在、革新的な新薬の開発が難しい状況が続いており、"特許切れ対策"が先発品企業にとって重要課題になっているという。2010年前後に大型先発品の特許切れが相次ぐ。
そこで、特許切れを間近に控えた先発品を"延命"させるため、先発品同士を組み合わせる「配合剤」という戦略を使う。
しかし、先発品のライフサイクルが引き伸ばされると、後発品の参入が阻止されてしまう。つまり、「配合剤」は後発品の使用を促進して医療費を削減しようという目的に逆行する恐れがあるので、中医協委員が反発しているとも言える。
しかし、「後発品の普及を阻害する」という理由だけで、配合剤に反対しているのだろうかー。「配合剤」には、根深い問題が潜んでいるように思える。
同日の議論は、以下の通り。