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寒さがしみます。関節痛

もっとも多い変形性膝関節症。

 中高年からのひざ痛の原因のほとんどは、変形性膝関節症。ダントツ1位です。変形性膝関節症とは、ひざの関節軟骨がすり減り、骨と骨が直接あたって痛むもの。本来、弾力のある軟骨で覆われているはずが、年齢を重ねて水分量も減り、クッション役を果たせなくなるのです。
 特徴的な症状は、歩いた後や動かし始めのひざの痛み。特に初期だと、動かし始めはこわばりがあってぎこちないものの、動かすうちに少しずつ楽になり、動かしすぎると痛くなる、というパターンです。症状が進むと関節を動かせる範囲も限られてきて、ひざを伸ばしきれなくなり、正座もつらく、階段の下りでも痛みます。ついには完全に曲げられなくなってしまうのだとか。関節液が過剰に分泌されて腫れる、いわゆる「ひざに水がたまる」状態にも。
 ひざの関節軟骨がすり減る原因は、まず体質。関節軟骨が弱かったり関節に炎症が起きやすい体質が、遺伝子の研究からわかってきました。
 そして年齢。長く酷使され、さらに太ももの筋力が衰え骨も弱くなれば、負担がますます関節に集中します。
 さらに肥満。ただ立っていてもひざには全体重、歩けばさらに5~7倍の重さがかかります。体重が3キロ増えれば、15~21キロの負担増です。
 性別では、女性の方がかかりやすいとのこと。男性よりも筋肉量が少なく、太りやすいため。また、ホルモンバランスが乱れがちな更年期の女性にも多いといいます。
 その他、O脚はひざ関節に負担がかかりやすく要注意。立ち仕事や階段の上り下りが多い生活習慣、激しいスポーツや外傷も原因となります。
 医療機関(整形外科)を受診した場合、問診、視診、触診、レントゲン検査を行い、骨の変形や軟骨のすり減り具合を調べます。軟骨や靭帯、筋肉の状態は、MRI検査で詳しく診ます。血液検査や、注射器で関節液を抜き取り検査して病気を判断することも。
 変形性膝関節症と診断されたら、体重増加に注意し、ひざに負担をかけない生活を心がけて。重い荷物を持たない、長時間歩かない、長い階段や坂道は上らない、などなど。
 一方、無理をしない範囲での運動も大変重要。リハビリテーションです。可動域訓練と筋力訓練が基本です。
 可動域訓練は、動きが悪くなったり動く範囲が狭くなったりした関節を曲げ伸ばし、改善させるもの。ひざを温める温熱療法を取り入れて行うと、痛みも緩和され、関節や筋肉も柔軟になっているので効果的です。温湿布のほか、お風呂で行うのがおすすめ。
29-1.2.JPG 筋力訓練では、太ももやひざの周りの筋肉を鍛えます。図解の運動は、もっとも重要な太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)に効果的です。
 さらに有酸素運動も行えば、新陳代謝が高まり治療促進に。水中歩行などプールでの運動なら浮力でひざの負担も減り、筋力も強化できて◎です。
 加えて通常、装具療法と薬物療法も並行します。
 装具の目的は、ひざ関節の負担軽減と安定化です。サポーターや杖といった親しみやすいものから、金属やプラスチックでできた機能的ひざ装具まで、種類はさまざまです。
 薬物療法の目的は、病気を治すというより、炎症を抑え、痛みを軽くして回復を助けること。動き改善には、人工の軟骨成分を関節内に直接注射する治療もあります(コラム)。
 なお、よほど重症の場合にのみ、手術が選択されます。すねの骨を切ってまっすぐにつなぎ直す手術や、悪くなった関節を人工関節と置きかえる手術などが行われています。

ヒアルロン酸注入とひざ痛  関節の成分のひとつヒアルロン酸。ネバネバして潤滑油の働きもしていますが、変形性膝関節症ではこれが壊されてしまいます。そこで人工のヒアルロン酸を関節内に注射すると、ひざの動きも再び滑らかに。ただ、「効果てきめん」とまではいかないようです。また、ヒアルロン酸やグルコサミン、コンドロイチンなどの軟骨成分をサプリメントとして服用することも、中度重度の痛みには効き目があるようですが、すべてのひざ痛に有効とはいえないとのこと。過信にはご注意を。

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