ご存じでしたか? 地域医療計画
恐らく「医療計画」という一般名詞のような言葉を、法律・行政の意味ある用語として意識したのは初めてという方がほとんどだと思います。
さて、いったい何でしょう。
厚生労働省の表現によると「地域の体系的な医療提供体制の整備を促進するため、医療資源の効率的活用、医療関係施設間の機能連携の確保等を目的として、各都道府県が医療を提供する体制の確保に関する計画を定めるものであり、昭和60年の医療法改正で創設されたものである」(『医療計画の見直し等に関する検討会』資料より、以後同じ)だそうです。
あぁ、読むのをやめないでください。
さっぱり頭に入ってこないかもしれませんが、医療を提供する側の話か、皆さんのように医療を受ける側の話かと言えば、どうやら提供側のことらしいというのは、お分かりいただけると思います。それから「確保」「確保」と書いてあるところからして、どうも地域ごとに必要な医療をどうやって提供するかの計画なのかな、というのも想像がつかないでしょうか。
では、中に一体どんな計画が書かれているか。
まず、その都道府県を三層に「地域分け」してあります。狭い方から一次医療圏、一次がいくつかまとまった人口30万人程度のものを二次医療圏、二次がまたいくつかまとまったものを三次医療圏と呼びます。
なぜ三層かといえば、行政の発想では、医療そのものが三層に分けられているからです。つまり、診療所など一般外来で医師と患者が最初に接する「一次」、専門外来と一般入院に対応する病院での「二次」、高度で特殊な専門医療の「三次」の三層です。
そして、それぞれの医療を域内で完結させようとの決意で設定されるのが、「一次医療圏」「二次医療圏」「三次医療圏」で数字が大きくなるほど、患者も医療機関も数が少なくなるであろうということは想像がつきますね。
ただし、一次医療圏というのはたいてい市区町村の行政単位と同じで大した意味はなく、また、三次は北海道など一部の例外を除いて都道府県全域になっています。つまり、医療計画ならではの地域分けとは、二次医療圏をいくつか設定することです。日常的な医療に関して、同じ二次医療圏内に住んでいる人は運命共同体ということになります。
地域分けが済むと、今度はどの地域にどの程度の医療体制を置くかという計画設定に移ります。域内で必要な医療需要を割り出し、それをどう域内の医療機関で分担していくか明示する、ということになります。
はて明示なんかされていたかしら、と思うかもしれませんが、救急医療で、軽症者を診る初期、入院の必要な重症患者を診る二次、重篤例に対応する三次(救命救急センター)という分け方をするのには覚えがないでしょうか。これは地域医療計画の賜物です。ほかに産科や小児科なども、同様の分担が示されています。
簡単に言ってしまえば、都道府県が地域ごと医療機関に役割を与え、医療機関は代わりに補助金をもらう。そんなギブ&テイクの根拠になっているのが、医療計画なのです。