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がん 医師の言葉が分からない。

化学療法を勧められました編

主婦のロハスマさん65歳は3年前に肝臓への一部転移もある大腸がんの切除手術を受け、術後の化学療法は行わず、3カ月に1度の外来診療を続けてきましたが、肺にも腫瘍が見つかりました。
 医師「前回の大腸からエンカクテンイ(1)したものと考えられます。他にも転移巣がないかCT撮影します。コツシンチグラフィ(2)検査もしてください」
 検査の結果、骨転移が見つかりました。
 医師「ティーエヌエムブンルイ(3)ではステージ4になります。骨転移がなければ肺の手術も検討するところですが、今回はテキオウガイ(4)です。骨転移は放射線照射でたたき、肺の腫瘍は化学療法で抑え込みましょう」
 ロハスマさん「それって抗がん剤ですよね。副作用が心配です」
 医師「もちろんサヨウキジョ(5)から言って、コツズイヨクセイ(6)のように避けられない副作用はあります。ただしオンコロジー(7)は日進月歩で、ユウガイジショウ(8)を極力出さないようタザイヘイヨウ(9)でやるようになっています。治療せずに放置するよりはユウイ(10)にヨゴ(11)が良いというエビデンスもありますので、お受けになったらいかがでしょう。大腸原発のがんはレジメン(次項参照)の選択肢も豊富で、ブンシヒョウテキチリョウ(12)もあります。何より、あなたはまだ若く、全身状態も良いです」
 ロハスマさん「必ず効きますか」
 医師「必ずとは申し上げられませんが、1クールが終わったところで再度CT撮影をしていただき、コウカハンテイ(13)をします。ソウコウ(14)していれば続行しますし、効果が見られなければレジメンを変更します」
 ロハスマさんは化学療法を受けることにしました。現在のところ、進行を抑えられているようです。

(1)遠隔転移
がん細胞が元々いた組織を離れ、血液やリンパの流れに乗って、他の臓器へ移り、そこで根付くこと。
(2)骨シンチグラフィ
骨の様子を調べる検査。骨転移があると分かる。
(3)TNM分類
癌の進行度を表現するため国際的に定められた基準。原発巣の大きさや浸潤(※・)の度合い(T)、周辺のリンパ節にどれほど転移しているか(N)、遠隔臓器への転移はあるか(M)、の3要素で決められている。
(4)適応外
疾病の状態が、ある治療法の対象から外れていること。医薬品などを、保険で認められていない疾病や部位などに使う場合を「適応外使用」と言うこともある。
(5)作用機序
薬が効果を上げるまでにどのようなことが体内で起きるかを示したもの。
(6)骨髄抑制
抗ガン剤の副作用で骨髄細胞が減少し、白血球や赤血球などが少なくなる状態。
(7)オンコロジー
腫瘍学
(8)有害事象
医療行為の結果起きる、患者にとって好ましくない事態のこと。薬の副作用も、その一つ。
(9)多剤併用(療法)
様々な薬剤を組み合わせ、その短所を補い長所を最大限に生かそうとすること。
(10)有意(差)
統計学上、偶然ではなく何か理由があると考えられるだけの差。
(11)予後
病気や傷など主に治療後の回復の見込みのこと。時として平均的余命を指すこともある。予後因子(ヨゴインシ)は、予後の見通しに影響を与える事柄。
(12)分子標的治療
がん細胞が持つ特徴を選択的に攻撃するよう設計された薬剤のことを分子標的薬と呼び、それを用いた治療のこと。
(13)効果判定
治療がどの程度の効果を上げたか判断すること。
(14)奏効(率)
化学療法によって腫瘍が縮小すること。腫瘍が完全に消失した場合(CRと表記)、断面積が50%以上縮小した場合(PRと表記)の合計が、全体に占める割合を奏効率と言う。

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