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がん 医師の言葉が分からない。

最期の悩みどころです編

 ロハスモ氏78歳は、再発がんの化学療法を続けてきましたが、腫瘍の成長を抑えられなくなってきました。
 医師「現段階では、がんそのものの治療にエビデンス(1)のあるレジメン(2)は、もうありません。化学療法は打ち切って、今後は苦痛を取り除きながらベストサポーティブケア(3)を行うことにしましょう。この病院でもある程度は可能ですが、キューオーエル(4)を考え、より適した医療機関をご紹介しましょうか」
 ロハスモさんは、家族との時間を大切にしたい、と自宅に帰って在宅医による緩和ケアを受けることにしました。

難しい言葉の多い「病理」  がん治療の方針決定に欠かせない病理診断。生検以外に、尿や血、痰などに含まれる細胞を見るサイボウシンケンサ(=細胞診検査)もあります。このうち痰に関してはカクタンサイボウシン(=喀痰細胞診)という呼び方があります。
 病理診断で主に見ているのは、良性か悪性かを鑑別するためのソシキケイ(5)、今後の進行度合いを予測するためのイケイド(6)、ブンカド(7)です。


(1)エビデンス

医療行為の効果を測る科学的な根拠のこと。これに基づいて行われる医療をEBM(イービーエム=ロハス・メディカル07年3月号で特集)と呼ぶ。

(2)レジメン

化学療法の薬剤の組み合わせ方や投与量・間隔などを定めた仕様のこと。

(3)ベストサポーティブケア

苦痛を軽減し、極力QOLの高い状態を保とうとする医療行為を支持療法(シジリョウホウ)と呼ぶ。ベストサポーティブケア(BSC)とは、治療の主体をこの支持療法としていくことを指す。緩和ケアと同義的に用いられることもあるが、症状の有無にかかわらず支援することから、緩和ケアより広い意味を持つ。

(4)QOL
生活の質
(5)組織型

腫瘍の病理形態学的な分類のこと。

(6)異型度

顕微鏡で見た腫瘍の形が、どの程度、正常からかけ離れているかを表す度合いのこと。差があればあるほど、一般に悪性度が高い。

(7)分化度

分化とは、細胞が成熟していくこと。成熟するにつれ、どの臓器・組織の細胞になるかが明確になる。がんの場合、成熟度が低いほど、つまり分化度が低いほど、一般に進行が早い。


さて、3つの状況に合わせて駆け足で語句のご紹介をしてきました。これ程まで意味不明の言葉が続出する状況はないでしょう。でも1個や2個はあるはず。医師の説明の中で意味の分からない言葉があったら、あやふやなままにせず調べ、それでも分からなかったら遠慮なく医療者に尋ねましょう。知ったかぶりで済ますには、あまりに重大なことです。

(番外編)
こんな言葉も「分からない」
(本文)
シンジュン=浸潤
がん細胞が元いた場所の境界を破り、隣接する組織や臓器に侵入すること。臓器レベルでは臓器浸潤、組織レベルでは間質浸潤、リンパ管浸潤、静脈浸潤などと言う。
チョクチョウシン=直腸診
肛門から直腸に手の指を入れ、腸壁やその周囲の組織の様子を探る検査法。
サイネン=再燃
消えてはいないが症状がいったん治まった、あるいは進行の止まっていたがんが、再び進行し始めること。いったん消えた後に再びがんが現れる「再発」と区別する。
テストステロン
男性ホルモンの一種。
キンキ=禁忌
絶対にやってはいけないこと。
エストロゲン
女性ホルモンの一種。
サイケンシュジュツ=再建手術
病気や事故、手術などで失われた体の機能や働きを修復することをめざす手術。
ズイハンショウジョウ=随伴症状
主たる症状ではないが、疾病によって副次的に引き起こされる苦痛。
タイショウリョウホウ=対症療法
疾病の原因ではなく、症状を取り除くことをめざす医療行為のこと。
タイセイ=耐性
疾病の原因である細胞に対して、薬剤が効かなくなった時、「細胞が耐性を持った」と表現する。化学療法を半永久的に続けられないのも、がん細胞が抗がん剤に対して耐性を持つため。
コウケツ=硬結
皮膚の下にあるしこりのこと。
ヤクザイカンジュセイ=薬剤感受性
治療目標となる疾病原因の細胞に対して、薬剤が効く程度。事前に調べることができる場合もあり、それを試す行為を薬剤感受性テストと呼ぶ。
ナイブンピリョウホウ=内分泌療法
主にホルモン製剤を用いる治療法のこと。
リカンリツ=罹患率
ある疾病に罹る人の割合のこと。

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