療養病床削減 何それ?
話を進める前に、高齢者に対する社会保障サービス(医療と介護)がどのようになっているか、その中で療養病床がどのような位置づけにあるかを把握していただこうと思います。医療の枠だけで考えて分かった気になると、間違えてしまう可能性があります。前項の概念図もご参照ください。
健康な高齢者が終の棲み家として過ごす場所は、大きく分けて、自宅か有料老人ホームかです。軽度の介護が必要だと、訪問介護やデイケアを使うことになります。
もう少し介護が必要だという時に選択肢に入ってくるのが「特別養護老人ホーム」(特養)と「グループホーム」です。長期入所する方がほとんどです。
介護の枠には、「介護老人保健施設」(老健)というものもあります。医療のひと段落した高齢者にリハビリをして、自宅や老人ホームへ帰れるようにするのが主たる役割です。
何だか療養病床と同じような機能を持っているようにも見えます。ただ現実には、介護と医療両方の必要な、リスクの高い人というのが存在し、その人たちを特養や老健ではあまり受け入れてくれないので、隙間を埋める存在として療養病床が使われているのです。
もちろん「在宅医療」特集(08年10月号)でも説明したように、介護保険や身体障害者自立支援法を上手に使えば、どんな疾患の人でも家で最期の時を迎えることは可能です。とはいえ、そこには家族の負担も必要で、特に認知症のように目が離せず先も見えない状態の場合、こうしたサポートを使わないと家族まで共倒れしてしまいます。
この療養病床を2012年度までに、介護型を全廃、医療型も減らして、介護施設へ転換させようというのが、国の方針です(左図)。
その理屈は、こうです。医療の必要はないのに受け入れ先がなくて退院できずにいることを「社会的入院」と言います。療養病床に入っている人の約半数は社会的入院で、そこへ医療資源を使うのはもったいないので、その分を介護施設などへ転換させよう--。
この見方に関しては賛否両論真っ二つに分かれます。ただし、正しい正しくないというより私たち国民が主権者としてどう考えるかの問題なので、国は医療の守備範囲をそう定めたいのだ、と理解するにとどめます。