手術を受ける患者の命綱 麻酔科医
手術チームの一員
手術麻酔を行う麻酔科医は手術室にいて、手術を受ける側の私たちは麻酔科医が働く姿をふだん見ることができません。病気や手術の内容については医師などから詳しく説明を受けると思いますが、手術室で誰がどんな風に動いているかまで知らないまま終わることがほとんどです。手術室では、誰がどんなことをしているのでしょう。
① 執刀医
② 麻酔科医
③ 手術室専属看護師
④ 臨床工学技士
①執刀医は、脳神経外科、消化器外科、胸部外科、産婦人科、整形外科、眼科などさまざまな外科系診療科の医師です。執刀医を助ける医師もいます。
②麻酔科医は手術中の患者の生理状態を観察しながら管理して、麻酔の深さをモニターで測ってコントロールします。執刀医が腫瘍などの患部を切り取ろうとする時に、血圧や心拍、呼吸といった全身状態まで観察することはできません。執刀医がベストを尽くせるように「縁の下の力持ち」として万全の態勢を整え、患者の体の機能を守っているのが麻酔科医です。
③「器械出し」と呼ばれる看護師は、執刀医が手際よく手術を進められるようメスやはさみ、鉗子などの器具や材料を手渡し、引き取ります。また、麻酔科医とともに、患者の出血量や尿量、体温など全身状態をチェックする間接介助を行う看護師もいます。
④手術室には人工心肺装置や人工呼吸器などさまざまな医療機器があります。複雑な操作を要するものですから、「臨床工学技士」と呼ばれる国家資格を持つ人たちがこれらの機器装置を管理しています。
すべての手術にかかわる 手術室は外科や内科などの各科に所属するのではなく、病院の中央部門の「手術部」として運営されることが多いです。手術室には各科の医師が出入りしますが、麻酔科医はすべての手術にかかわりますから、外科系のすべての診療科に関係します。麻酔科医は手術を受ける前の患者の全身状態をチェックし、検査データや既往歴、服薬中の薬、精神状態、歯の状態(気管チューブが口から支障なく挿入できるよう)なども把握します。麻酔科医が日頃から各診療科の医師と密にコミュニケーションを保持していることが、病院の医療全体の質の向上につながります。
また、麻酔科医は手術時や救急医療時の麻酔管理だけでなく、疼痛治療として緩和医療やペインクリニック、集中治療領域などでも活躍しており、幅広い分野で働いています。