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統合失調症 患者も誤解も多いんです。

50-1-1.JPG精神疾患を抱える人が増加している近年、傍目には気づきにくい「統合失調症」も、実はがんと同程度の患者さんがいるとも言われます。
監修/加藤進昌 昭和大学烏山病院院長
     小原圭司 日本精神神経学会英文誌編集事務局長

 初めて病名を聞く人にはどこの部分のどんな病気か見当もつかない「統合失調症」。とはいえ最近では、なかなかの知名度であるようです。ざっくり言えば、脳をはじめとする神経系の働きがうまくいかず、現実の正しい判断や感情のコントロール、正しい意思決定ができなくなったりする慢性疾患。つまり、今年5月号でも特集した「心の病」のひとつ、ということになります(なので、「心の病って何?」という方は、そちらもご参照ください)。
 さて、そう言われてもピンと来ない、身近にはいないな、と思われた方も、ちょっと待ってください。統合失調症は、国や人種を問わず、今このときにも百人に1人がかかっているとされています。これは、医療機関で診断名がついていなくても、実は統合失調症の症状を抱えている人がかなりいるだろう、ということ。珍しい病気ではないのです。
 ところでこの統合失調症、かつては「精神分裂病」と呼ばれていました。そちらの名前のほうが聞き覚えがあるという方もいらっしゃるかもしれません。しかしこの「精神が分裂する」という響きをもつ病名が、さまざまな誤解や偏見を助長してきたとも考えられています。
 最もよくある誤解が、「理性が崩壊し、日常生活が送れなくなる」「多重人格になる」「かかったら一生治らない」「遺伝する病気」「親の育て方や環境の悪いことが原因」といったものです。これらは一部、病気の要素と関係して考えられるところもありますが、正しいとは言いがたいものです。実際に患者の人に接してみると分かるかもしれませんが、さほど重くない段階であれば、症状が出ていないときは普通の人と変わらないことも通常です。そのために、かえって発見が遅れることもあるくらいなのです。
 そこで、間違った理解を少しでも減らせればということで、平成14年に病名が変更されて「統合失調症」となりました。これは思考や行動にまとまりがなくなってしまう症状からつけられたものです。
 ただし、病名は新しくなったものの、統合失調症の症状は実はさまざま、そして原因にも以前分かっていない部分が非常に多くあるのが実際のところです。ですから統合失調症がどんな病気であるかは、患者1人ひとりの症状の特徴と全体像から。「こんな症状の出る病気」と、包括的に理解するしかないのです。
 そういう状況ですから、まだ誤解や偏見がすべて解消されたわけではありません。それだけに、患者や家族の方々だけでなく、一人でも多くの人がこの病について理解していく必要があるんですね。
 では次頁から、統合失調症について詳しく見ていきたいと思います。

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