偽造薬の温床としての現金問屋(タイトル一部修正) |
|
投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2017年01月17日 18:03 |
引き続き偽ハーボニー騒動を考える。厚生労働省の報道発表資料を見ると、どうやら厚労省は薬局チェーンの実名を公表する気がないらしい。
その薬局チェーンを善意の第三者と見なすというか被害者と見なすというか、明確な法令違反を犯しているという証拠が、現段階では存在しないということなのだろう。
しかし、今回たまたま見つかっただけで、以前の処方品にも同様の偽造薬がなかったという確認は取れているのだろうか。保険者や納税者の立場になってみると、以前から偽造薬の処方が行われていた場合、薬局が特定されなければ、薬剤費や調剤報酬の返還を求めようがないということにならないか。対価の対象となる薬を患者が受け取れていないのだから、そんなものに対してビタ一文払う義理はないはずだ。
なぜ、こんなことを書くかと言えば、報道発表資料を見ても分かるように、発見された偽造薬は計5個と言いつつ実は4種類もあった。日本で流通している偽ハーボニーが今回の5個だけと考えるのは、あまりにもお人好し過ぎる。既に大量に流通していると見るべきなのでないか。
流通経路としては、医療機関から余った薬を買い取り、他の医療機関へ売りさばく「現金問屋」という業態が昔からあるようだ。資金繰りを助けるという存在意義はあるだろうし、小さな背任とか脱税とかの手段になっているという程度なら、必要悪と言えないこともないかもしれない。しかし、病院から処方されたソバルディの横流しを図って逮捕された事案が発生するなど、この横流し市場の存在によって様々な弊害が発生していると考えられる。皆保険制度を揺るがすような高額な内服薬が登場した現在、健康保険制度や生活保護制度に寄生を許して構わない存在とは言えなかろう。
少なくとも一定以上の薬価が付いた内服薬についてはトレーサビリティの仕組みを整備して横流しできないようにすることが必要だろう。ただ急にはできないことなので、とりあえず高額薬剤を現金問屋から仕入れるのはやめた方が無難だと関係者全員が考えるようになるためにも、今回は一罰百戒で薬局チェーン名は公表すべきだ。そうでもしない限り、いくらでも偽造薬がはびこることだろう。
<<前の記事:偽ハーボニー 福島県と亀田病院事件:次の記事>>
コメント
都内の管理薬剤師です。
法令では処方箋の保存期間は3年。発注、納入記録の保管義務は6年となっております。
今回の事件の当事者である調剤薬局がコンプライアンスが良いとは思えませんが、記録は残っているはずじゃなくて残っていなくてはならないのです。
kopanda様
コメントありがとうございます。
文章の趣旨が分かりづらくて申し訳ありませんでしたが、当該企業に記録がないのでないかと主張したいわけではなく、レセプトを回される保険者に対抗手段がないではないかとの主張です。
引き続き、お気づきの点はご指摘いただけましたら幸いです。