仙谷由人・衆議院議員インタビュー
――なぜ、人やシステムの構築にお金を投下できないのでしょう
政治の側の発想力不足もありますけれど、根本的には行政の縦割り構造でがんじがらめにされているために、一点突破することが必要な場面で力を集中できないのだと思います。
地方の公的病院は自治体が経営者ですから総務省管轄になります。大学病院は文部科学省管轄です。厚生労働省は、地域医療を支えているこれらの病院に手を突っ込んでデータすら取れません。現場の実態が厚生行政に反映されないのも当然です。また、特に大学および大学病院は基礎分野の研究はなかなかの成果を挙げているのだけれど、その臨床治療は未だしです。こういう構造があるので、金や人の資源をばらまいている割に効果が出ていない。要するに患者さんに資源投入の成果が全く還元されていないのです。これは大問題です。
現状では、厚生労働省と文部科学省、総務省の間に壁があるのはもちろんのこと、同じ厚生労働省の中でさえ、医政局と保険局では思惑が違いますし、同じ医政局の内部ですら学会ごとに角を突き合わせてます。スパゲッティが絡み合ってほぐれないような状態ですね。これを克服できるのは、省庁の枠組みの上からドカンとやれる政治だけです。
――政府が医療改革法案を出していますね。政治力の発揮ですか。
現場のことを知ってみれば、政府の改革案は、改革と呼ぶに値せず、医療を崩壊させる可能性が大きいというのは普通に気づくことだと思います。行政が現場のことを知らず、あるいは現場の状況に目をつぶって動いていることが、政府案に如実に現れています。こんな法案が出てきては、今年は「医療崩壊元年」だと言っている人がいますよね。