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ニュース〜医療の今がわかる

山田憲彦・防衛医大教授インタビュー

―― 災害対応が進めば、日常のたらい回しがなくなるわけですか。

 余力を持った災害拠点病院というのは、総合病院の救急医療に関する機能が24時間フルスタッフで営業しているイメージですから、搬送先を迷う必要がありません。高度な救急医療を分散したままでは、医師や看護師の大幅増員がなければ、たらい回しになるのは避けられないのではないでしょうか。

 国民にとって、救急医療は身近にほしいというニーズがあります。それは地理的でなくて時間的でも構わないはずです。一方で医療が高度化・複雑化してリソースを集中しなければならないという大きな流れもあります。身近なニーズに応えつつ医療の高度化に対応すること、すなわち救急医療の近接性と高度性の両立のポイントは、集中したリソースを効率的に運用する体制の構築にあります。このような体制こそ、日常のたらい回しの解消と災害時の適切な救急医療提供の基盤になるものと思います。

―― 大変勉強になりました。

 以前、ヤマト運輸の人から面白い話を聴きました。クロネコの宅急便は、サービスを開始した時から25年間で荷物の取扱量が10の4乗オーダーで増えたそうです。最初は単純な宅急便だけだったのが、クールとかタイムサービスとかサービスが細分化しましたので、タスク量を考えると10の5乗にはなっているでしょう。しかし、人員やトラックは10のオーダーでしか増えていない。こういうことが実際に起きているんです。

 それを可能にしたのが毎年100億円近い情報管理への投資なんだそうです。限りある資源を効率よく運用するためには情報管理が不可欠ということがよく分かります。この観点はまだ災害医療の分野にはないのですが、新たなリソースの投入が困難だとすると、情報管理の充実は今後のキーポイントになると考えています。

(略歴)
1960年 兵庫県生まれ
1985年 防衛医科大学校卒業
1987年 航空自衛隊部隊勤務
1994年 大阪大学大学院卒業
2002年 自衛隊岐阜病院教育部長
2004年 防衛庁航空幕僚監部 首席衛生官付衛生官
2005年 現職

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