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先進医療、「保険収載されたら赤字」

4月9日の「先進医療専門家会議」.jpg 「やるたびに何万円も赤字になってしまう。せっかく保険収載してもらったのに、全くできない状態」―。高度な医療技術について検討する厚生労働省の有識者会議で、金子剛委員(国立成育医療センター形成外科医長)は、先進医療として認められていた医療技術の値段が、保険適用されると下がってしまうことを問題視した。(新井裕充)

 交通事故や先天的な奇形などが原因で頭や顔が変形した患者に対し、骨を切ったり移植したりする手術をする前に、実物大の模型(モデル)を作る「実物大臓器立体モデルによる手術計画」という医療技術がある。

 これは、高度な医療技術について保険収載されていなくても保険と併用できる「先進医療」として認められていたが、2008年度の診療報酬改定で保険適用された。
 首から上の領域には血管や神経などが複雑に絡み合っているため、大出血や神経まひなどの後遺症を残さないよう、CTスキャンで取り込んだ画像情報を専用の機械に読み込ませて頭蓋骨の立体模型(モデル)を作成する技術で、手術のシミュレーション(予行)として利用される。

 金子委員は、4月9日に開かれた厚生労働省の「先進医療専門家会議」(座長=猿田享男・慶應義塾大名誉教授)で、保険適用された"デメリット"を次のように指摘した。

先進医療専門家会議4月9日.JPG 「頭蓋顔面骨(の実物大臓器立体モデルによる手術計画)が、K-939の『画像等手術支援加算』で保険収載されたが、2000点(2万円)になってしまった。これは、(旧)高度先進医療として12万円ぐらいから21万円ぐらいの値段で認められていたものなのに、そうなった(保険収載されて点数が下がった)ことによって全く止まっちゃって、(日本形成外科学会の)会員から、会うたびに『先進医療に戻してくれ』って言われている状態。同じような技術で、『ナビゲーション』(による画像等手術支援加算)も同じようなくくりで(2000点で)保険収載されたが、『ナビゲーション』は、機械を買って、使えば使っただけ元が取れる。しかし、『モデル』の場合は、一人ひとりに合わせて1個作るので、やるたびに何万円も赤字になってしまう、そういう構造になってしまった。ですから、その辺をもう一度検討していただきたい。せっかく保険収載してもらったのに全くできない状態になっている。毎回、学会に行くたびに非難されている」

 これに対し、厚労省の担当者は「診療報酬改定の要望につきましては、私どもの(中医協・診療報酬調査専門組織の)医療技術評価分科会に、学会からの要望を出していただくことになってございます」と一蹴(いっしゅう)。「また、何か要望として出していただいて、診療報酬の話ということでございましたらですね、そちら(分科会)でご議論いただければ...」と、明確な回答を避けたところで猿田座長が声を上げた。

4月9日先進医療会議で.jpg 「もちろん、通す時に、保険収載でちゃんと説明してんでしょ? そうじゃないんですか? なんで(保険収載されると)安くなっちゃうのか?」

 厚労省の担当者が回答に窮したため猿田座長は、「担当者の方が一番よく分かっていると思いますので、そういった点もちゃんと検討していただくことが大切だろう」と、その場を納めた。
 会議終了後、金子委員は「保険適用されると安くなってしまうケースはよくある。特に検査の分野で多いようだ」と話している。

 同日の検討会では、2月に受け付けた6件の医療技術のうち、4件を「書類不備」として返戻(へんれい)、残る2件について承認した。返戻扱いとなった4件の中には、「実物大臓器立体モデルによる手術計画(骨盤・四肢骨・関節に係るもの)」があった。

 同日、先進医療として承認されたのは、▽内視鏡下筋膜下不全穿通枝切離術 ▽歯科用CAD/CAMシステムを用いたハイブリッドレジンによる歯冠補綴(ほてつ)―の2技術。

先進医療_中医協配布資料より.jpg

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