「インセンティブを大きな病院に」
■「後発医薬品の使用状況」で議論
優先度が低い「B項目」の中では、「後発医薬品の使用状況」が議論になった。後発医薬品の使用を積極的に進めることはDPC病院や急性期病院に特有の取り組みではないため、DPC制度の「新たな機能評価係数」の性質になじまないとの意見もある。
同日の分科会で、「後発医薬品の使用状況」を係数として評価することに西岡会長らが否定的な立場を示したところで、小山委員が次のように反論した。
「今まで厚生労働省の(政策の)進め方として、『この方向に進んでほしい』と思うときには、そこにインセンティブを与えていた。進んでしまうとそれを外すが、進むまでの手法として、テンポラリー(一時的)に、機能係数として入れてもいいのではないか。もしも、数量ベースで(後発医薬品の使用が)30%、40%までいったら、『この役割はいらないね』ということで切ってもいい。それまでの間だったら時限立法のようにやってもいい。『なぜ、もっと安い薬を使わないのか』という経済財政諮問会議の指摘事項に対して、われわれは『物が悪いから使わない』とは言っていない。『では、なぜ使わないのか?』ときかれた時に、『むやむやむや』と言う中に(答えが)ある。だから、そこは透明性という中で、削減すべきコストは削減する方向にする必要があるが、いろんな社会の情勢の中で進まないといけない。『これを進めたい』というときには、ある時期、インセンティブを与えてもいいのではないか、(新たな)機能評価係数に入れてもいいのではないか」
さらに、佐藤委員が「地方では普通の診療報酬だけでは駄目で、いろいろな......」と続けた。
「先程、先生(小山委員)が『むやむや』と言ったことも含めて、実はDPCで包括的にやっていると、"別の部分"で(病院経営を)支えているのも現実だ。それが、地域の医療や薬物治療を支えている。ある程度のインセンティブをDPC病院などの大きな病院に付けないと、『もやもや』とした部分を突破できない。(DPCの)議論としては不透明なところもあるが、(要望として中医協の小委員会に)出していただきたい。(後発品の使用が進んだ)次の段階では(係数から)消すということでもいいのではないか」
これらの意見に対し、西岡会長は「DPC病院の機能係数として採用するのは、論理的に難しいと思う。むしろこれは、医療費(抑制策)の中で、大きな政策の中でやってもらうべき問題ではないか。機能係数にするのは、ちょっと無理ではないか」と否定。また、B項目の「高度な設備(による評価)」についても、「DPC病院に独特というものではないし、変に機械だけそろえられても困るので無理ではないか。(B項目の)『治験・災害等の拠点病院の評価』も、補助金が出ているので機能評価係数にはそぐわない」と退けた。
意見交換を受け、厚労省の担当者は次のように述べた。
「今回(2010年度)の改定で、(新たな機能評価係数として採用するための)検討が難しいものをいくつか挙げていただいた。例えば、Aの中では、『手術症例数に応じた評価』や『術後合併症の発生頻度による評価』も難しいのではないかと。それから、『希少性指数による評価(難病や特殊な疾患等への対応状況の評価)』、『標準レジメンによるがん化学療法の割合による評価』も。一方、BからAに移して検討すべきものとしては、『がん診療拠点病院の評価』など、がん関係は引き続き議論をお願いしたい。事務局(厚労省)として気になっているのは、Aの『望ましい5基準』。これはBにもあるので、ご検討いただきたい」
西岡会長は、「この日の意見を踏まえて事務局と整理し、4月15日の(中医協・診療報酬基本問題)小委員会に報告する」とまとめた。
西岡会長は「DPCにふさわしい係数か」という観点から判断する立場でこの日も一貫。池上委員は、高度な医療を提供できる設備や人的資源を評価する「高度医療指数」の重要性を改めて強調した上で、候補となっている項目ごとの"重み"(医療費)をシミュレーションして示すよう、厚労省に求めた。
※ 同日の「調整係数」に関する議論は、DPC、「調整係数」廃止で大混乱?をご覧ください。