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入院期間の評価、「病床規模の差はほとんどない」 ─ 厚労省

厚労省担当者0805.jpg 「病床規模による差はほとんどない」「大規模病院や特定機能病院ばかり優遇されない」─。厚生労働省の説明が揺れており、「新たな機能評価係数」をめぐる議論は迷走している。(新井裕充)

 2010年度の診療報酬改定で、「新たな機能評価係数」がDPC病院に導入される。「新たな機能評価係数」とは、他の病院よりも優れた機能を持っている病院を診療報酬で優遇しようというもの。
 前年度の収入実績を保証する「調整係数」を廃止して、その財源の一部を充てる。「調整係数」の財源をそっくりそのまま移行させるわけではないので、医療費削減につながる。

 現在は、すべてのDPC病院に「調整係数」という"恩恵"が与えられている。しかし、これを来年度から段階的に廃止して「新たな機能評価係数」に切り替えるため、「新たな機能評価係数」の導入はDPC病院の差別化を意味する。
 このような「新たな機能評価係数」の考え方からすれば、病院機能をどのような基準で評価するかによって、次期改定で優遇される病院と切り捨てられる病院との明暗がくっきり分かれる。

 現在、中医協の調査専門組織「DPC評価分科会」での審議は、「大病院優遇」「中小病院切り捨て」の方向で進んでおり、中小病院の医事担当者などから早くも悲鳴が上がっている。中医協・基本問題小委員会でも同様の指摘があった。
 このため、厚労省はこれまでの説明とは違って、「病床規模による差はほとんどない」「大規模病院や特定機能病院ばかり優遇されない」などと、"本音"を隠した苦し紛れの説明をしている。

 最近の議論を振り返ると、中医協のDPC評価分科会は6月24日の中医協・基本問題小委員会で、「新たな機能評価係数」の候補を示した。
 このうち、優先順位の高い「次期改定での導入妥当」は、▽正確なデータ提出 ▽効率性指数 ▽複雑性指数 ▽評価診断群分類のカバー率─の4項目で、「正確なデータ提出」と「診断群分類のカバー率」の導入は了承されたが、「効率性指数」と「複雑性指数」は反対意見が出たため、継続審議となった。

 同日の小委で、日本医師会の委員は「DPC自体が平均在院日数を縮小(短縮)するというインセンティブが働いているので、二重評価ではないか」などと指摘し、「効率性指数」の導入に疑問を呈した。
 「複雑性指数」については、病院団体の委員が「(特定機能病院に対する)ダブル評価という見方もできる」と指摘した。

 そこで、厚労省は8月5日の中医協・基本問題小委員会で、それぞれの指標の特徴などを示して理解を求めたが、再び継続審議となった。
 同日、平均在院日数が短い病院を評価する「効率性指数」について厚労省の担当者は「病床規模による差はほとんどない」と釈明した。
 しかし、5月14日のDPC評価分科会では、「これ(効率性指数の箱ひげ図)は、『平均在院日数が短いかどうか』というものを見ている効率性の指標だが、見ていただいたらお分かりの通り、400床以上のところが一番高い数字となっている」と説明しており、やや矛盾している。

 一方、平均在院日数が長い病院でも診療報酬が下がらないようにする「複雑性指数」については、「若干、特定機能病院が高めにも見えるが、それほど大きな差異にはなっていない。特段、大規模病院や特定機能病院ばかりが優遇されるようなイメージには必ずしもなっていない」と説明した。
 しかし、これも5月14日のDPC評価分科会での説明と異なる。同日の分科会で厚労省の担当者は、「特定機能病院は最も高い数字となっている。(専門病院と総合病院を比較すると)専門病院のほうが高い値」とした上で、「難しい疾患を多く取ってらっしゃるのかな」とコメントしている。

 このように、「新たな機能評価係数」に関する厚労省の説明は微妙に揺れており、もはや「客観的なデータによる機能評価」とは言いがたい。むしろ、「医療課の担当者によって意図的に操作できる係数だ」と正直に言うべきではないか。

 この日の厚労省の説明、質疑応答は次ページ以下を参照。
 

 【目次】
 P2 → 「病床規模による差はほとんどない」 ─ 厚労省
 P3 → 「新たな機能評価係数を入れる理由は投入量分布だけか」 ─ 対馬委員(支払側)
 P4 → 「二重評価に一定のクライテリアがない」 ─ 藤原委員(日医)
 P5 → 「算定式との関係が私の頭では理解しにくい」 ─ 牛丸委員(公益委員)
 P6 → 「新たな機能評価係数の設定と改めて書いてあるが」 ─ 西澤委員(全日病)


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