「保険診療は既に破綻している」~医療構想千葉 亀田信介氏
これに対して明らかに人手が足りない。
こうした事態は予測できたのに、85年をピークに、医療費抑制のために医学部定員を減らしてしまった。この結果、世界一の高齢化率なのに対人口あたりの医師数が先進国でも下から4番目になってしまった。日本より下にいる韓国は、まだ高齢化率は10%台だけれど、既にメディカルスクールをつくって医師の大幅養成増に踏み切っているので、抜かれるのは時間の問題だ。アメリカが意外に多くないように思えるが、医師だけじゃなくてコメディカル、スタッフが文字通り桁違いに多い。日本は何でもかんで医師がやることになっているうえに、これだけ少ない。明らかに限界に来ている。
女医の割合が増えていることも問題視されている。女性のライフサイクルの中では、フルタイムで働けない時期がある。医師がここまで不足していなければ、そのように女性にも働きやすい職場をつくるという解決策もあるだろうし、そのようなサポートで何とかなったと思う。しかしここまで不足してしまうと、たとえ職場側で配慮したとしても、その"優遇"を受けている側が他の医師に対して申し訳ないという気持ちから耐えられなくなってしまう。その結果、完全に辞めてしまうという悪循環だ。
看護師も足りない。看護協会も、現場で看護師がどれだけ看護師じゃなくてもできる仕事に追われてイヤになって辞めているか直視した方がいい。7対1、10対1というけれど、DPCだと補助者を入れても点数がつかない。結果として、徘徊する患者を看護師がつきっきりで見るというような勿体ないことになっている。介護を担う補助者も適切に配置した統合した病棟が必要だし、そうしたものを含めた医療計画や診療報酬体系が必須だ。
千葉県立病院の医業収益比率は135.4%。100円稼ぐのに136円使っている。これを診療報酬だけで成り立たせようと思ったら36%上げないといけない。差額は税で補填している。
都立病院はもっとすごい。医業収益比率が146.7%なのに、もっと補填して黒字にしている。これが果たして保険医療か。
全国の自治体立病院を見渡してみても、医業収益比率は悪化の一途だ。日赤とか社会保険病院とかを含めた公的病院で見ても、やはり医業収益比率が100を上回っている。私的病院も補助金頼みで何とかやっている。要するに、医療は単独の産業としては持続可能でない状態だ。