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「補助金で病院支配する医系技官を引き剥がした」-厚労人事、省内の声

 舛添要一厚生労働相が6月26日午前に発表した異例の人事異動に、省内には衝撃が走った。ある医系技官は「補助金によって医療機関を支配する医政局の医系技官を引き剥がした。良くなることはあっても悪くなることはないだろう」と感想を話した。(熊田梨恵)

 舛添厚労相は午前の閣議後記者会で、省内幹部人事の骨格を発表。江利川毅・事務次官が退任し、水田邦雄・保険局長が後任となる。キャリアポストである保険局長には、医系技官の外口崇・医政局長が就任。医政局長にはキャリア組の阿曽沼慎司・社会・援護局長が就いた。従来の医系技官とキャリアポストを入れ替える人事の発表に、省内には衝撃が走った。
 
■「医政局と健康局が医療機関を支配してきた」
 厚生労働省は同日午前、都内で新型インフルエンザに関する会合を開いており、関係者は厚労省の入る合同庁舎5号館から離れていた。会合に参加していたある医系技官は、帰るなり人事の話を聞いて面食らったという。医政局長にキャリアが就いたことに関して、「良くなることはあっても悪くなることはないだろう」と安堵を示した。「厚労省が医療機関を支配するのは、診療報酬で首を絞めておいて、『補助金を付ける』として言うことを聞かせるパターン。この補助金を動かすのが、医系技官が局長の医政局と健康局で、これまで医系技官が医療機関に対する権限を握っていた。今回、医政局長を引き剥がしたことでその構造が崩れた。法令キャリアが医政局に就けばまともになると思うし、阿曽沼氏は評判もよい方。本来は診療報酬で病院をみていくのが本筋だろう」
 ただ、今回の人事はあくまで医系技官とキャリア組のポストを入れ替えただけのものとも指摘する。「保険局との単純な入れ替えでなく、医政局長や健康局長の医系技官を完全に外すことができれば本当にすごいことになると思うが、大臣としては最大限できる範囲で頑張ったのではないだろうか」

 また、他の医系技官は医政局長の異動について、「医系技官にとってはショックな話」と語る一方で、「キャリアの方が医系技官よりも組織として動く能力に長けていると思うので、要となる部分をキャリアに押さえてもらっていた方がいいのかもしれない」とも言う。外口氏の保険局長への横滑りに関しては「結局は財務省に頭を押さえられていることには変わりないので、どうなるかは分からない」と話す。
 
■「改革派の阿曽沼氏に期待」 
 約20年にわたり厚労省で働くキャリアは、「省内でも皆かなり驚いている。医系技官と事務官の数は合わせないと双方から不満が出るので、今後他の部分をどう数合わせをしていくかは皆気になるところ。医政局のポストを空けるために保険局長を空けたのではないだろうか。医系技官にとっては保険局は財源を考えても魅力あるポスト。ただ、キャリアにとって医政局はあまり魅力はない。阿曽沼元老健局長は改革派のキャラクターなので、医政局には適任だと思うが」と話す。
 
■たすき掛けは損なわなかった? 
 ただ、保険局長といえば従来は事務次官に就くことが予想されるキャリアのみに許された出世コース。そこに今回は医系技官である外口氏が就いた。また、事務次官ポストについては、内閣府から来た江利川氏の前には厚生系の辻哲夫氏が就いていたため、次は旧労働省系から就くとの見方が省内には根強かった。しかし、今回は厚生系の水田氏が就任。これについて、他のキャリアは、内閣府から江利川氏が来たことで厚生と労働の"たすき掛け"の人事がいったんリセットされていたとして、「たすき掛けを損なうものではないのでは」との見方を示す。一方、「現状は労働系には適した人材がいなかったのでは」と話す医系技官もいる。
 
 
 このほか、「同期から回ってきたメールで知った」と話すのは若手の医系技官。「最近はインフル騒ぎで予定していた検討会を開けなくなり、委員の先生たちとの調整に手こずったりと、ルーチンの仕事もろくにできていなかったが、最近ようやく元に戻りつつあるかと思っていた。大臣は選挙前にやれば国民へのアピールにもなると思ったのかもしれないが、地味な仕事をしている自分たちには結局のところあまり関係ない気がする」とため息を漏らした。
 
 
 
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