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ニュース〜医療の今がわかる

村重直子の眼11 薗部友良・VPDを知って子供を守ろうの会代表(中)


薗部
「予防接種というのは、国の危機管理対策の重要な一環です。予防接種行政を決めるにあたっては疫学を調べることが必要で、そこをお金なしで頑張れと言ったって集まりません。やっぱり、それは国の上に立つ者、およびそのブレーンが国民・子どもを守る意識を持ってやってくださらないとやはり無理です」

村重
「と、仰いますけれど、私は先生方のこの動きの方が国のブレーンより期待できると思っています。日本も変革期でこれからかなり変わっていくかもしれませんが、今の国のブレーンと言われる人たちの任命権は役人が持っていて、役人に嫌われるような発言をすると呼ばれなくなる人たちです。役人にとって都合よいことしか言わない人でないと、ブレーンと呼ばれる会議などには呼ばれないわけですから、この構造のままいくらやっても本当に必要なデータや科学的な議論はできません。まず冷静に数字を見てどっちの確率が高いのかという議論が最初になければ、その後の政策や予算の配分につながらないはずなんですけれど、そこの一番スタートのところが役人の人事で決まっているのですから、このままの構造では望みはないと思っています。それよりはVPDを知って子供を守ろうの会のような先生方の発信力で、本当にお母さん方に必要な情報が直接届いていることは大きな意味があると思います。1人でも多くの国民の方が知ってくだされば、それが一番。国全体を変えて行く力というのは、国民が知ることから始まると思います」

薗部
「そうですね。我々の会の最終目的は、我々の会が不要になることという言い方もできます。しかしどの時代も政府が出すものは100%信用していいとは限りません。どうしてもバイアスがかかるので、国民・子ども目線に立って、中立に何らかの形で活動を民間で続けて行くことが大切だと思っています」

村重
「まさにお母さんたち子供たちに何が必要かを、専門家として現場で見てらっしゃる先生方が一番の原点だと思うのです。その一番重要な情報を出していただきたいですし、仮に会がなくても済むような理想的な、国がちゃんとしたワクチンを接種してくれるということになったとしても、医学・科学が進歩してデータが変わっていけば、一度つくったスケジュールなどはどんどんアップデートしていかなければならないので、それはやっぱり専門家の先生方にしかできないことですから、ぜひ情報発信を続けていただきたいですね」

薗部
「将来は、米国のACIP(予防接種実施専門家諮問委員会)のように、国民・子ども目線にたったぶれない長期戦略を持った組織が出来ればお任せしたいと思っています。ですが日本では同じような理想的な組織が出来る可能性は低いので、何らかの民間のビジランスというものは非常に大切だと思います。しかし、民間でもバイアスがかかる可能性があります。そういう意味で、多くの人の意見が集まる会で行うことが大切だと思っています」

村重
「米国のACIPを真似て、審議会のようなものをさらに増やすという案もあるようですが、役人が任命権を握り、役人にとって都合よいことしか言わない人ばかり呼ばれる委員会では、役人の都合や責任逃れが優先される、結論ありきの議論しかできません。子どもたちを守るため、データに基づく科学的な議論、自由な議論はできないことに変わりないでしょう。それとビジランスですが、新型インフルエンザのワクチンの時にも感じたのですが、日本はビジランスがないからもっと強化すべきだ、サーベイランスを増やしてもっと情報を集めるべきだという声ばかりが厚労省の会議の場では言われるんですね。でも、それは現場の先生方の声ではなくて、役所側で座って待っている人たちが、もっとデータをほしいと言っているだけなんですよね。役人にとって都合のよい発言です。それで、彼らがやることは、現場にお金は出さずに法律などで義務をかけて、現場の先生方に提出させるんです。実際に手を動かしてデータをつくるのは現場の先生方。患者さんを診なければならない現場の先生方が、益々作業量が増えて、患者さんと話す時間が減るという悪循環を考えると、バランスを欠くような気がします。ビジランスや、サーベイランスのデータがたくさんあるほうがいいというのは、もちろんたくさんあるに越したことはないわけですが、でも既にあるレセプトデータベースも副反応報告データベースも公開してない、ちょこっとだけ公開していても副反応頻度とか自然界での病気の発生頻度とか、大事なデータが全然見えない状態です。研究しようと思ってもアクセスできない現状にありながら、もっと別のデータを提出させようという方向に進む現状が恐ろしいですね。その前に既存のデータベースをちゃんと公開すれば、新しくサーベイランスを増やさなくても分かることがたくさんあります。レセプトデータだって、死亡統計だってあるわけですから。あれを全部公開するだけで相当のことが分かるのに、どうしてこれ以上お医者さんたちの作業量を増やさないとならないんだろうと、すごく不思議に思っています」

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