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ニュース〜医療の今がわかる

放射線って何? きほんのき


何が怖いの?
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 では、改めて放射線とは何なのかから話を始めます。
 放射線とは、紫外線より波長の短い電磁波と、光に近い高速で動く粒子、そして「中性子」です。物質を構成する原子の中を通過したり、当たった原子を不安定に(壊れやすく)したりする性質を持っているものの総称です。
 既に読むのがイヤになったかもしれませんが、中学の理科の授業を思い出していただけば決して難しい話ではありませんので、もう少しだけ我慢してお付き合いください。

まず理科の復習

 『水兵リベリア僕の船』と元素周期表を覚えた方も多いことでしょう。水素とか酸素とか炭素とか、はたまた金とか銀とか、それぞれ固有の性質を持つのが「元素」で、その最小の粒を「原子」と言うこと、思い出していただけたでしょうか。
 大昔は、原子をもうそれ以上細かく分割することはできないと考えられていました。しかし今では、プラスの電荷を持つ原子核の周りを、マイナスの電荷を持つ電子がいくつもグルグルと回って、電気的に中性になっていると分かっています。ちなみに、電子が多いか少ないかして、電気的に中性でない状態のものが、イオンですね。
 中心にある原子核を構成しているのが、正の電荷を持つ陽子と電気的に中性の中性子です。元素の種類を規定しているのは陽子の数(原子番号と言います)で、同じ元素であっても中性子の数の違うものが数種類存在します。これらを「同位元素」と呼びます。陽子の数と中性子の数を足したものは「質量数」と呼ばれ、同位元素を区別する場合、元素名の後ろに記載されます(例えば、ニュースによく出てくるヨウ素131の131です)。
68-2.3.JPG 陽子の数と中性子の数の組み合わせによっては、安定的に存在していることができず、壊れて別の元素に変わってしまうことがあります。このように不安定なのが「放射性元素」です。
 おっと、ここで「放射性」の言葉が出てきました。文字通り、これらの元素は壊れる際に放射線を出します。
 放射性元素は、全部が一気に壊れるのではなく、時と共に一定の割合ずつ壊れていきます(図参照)。放射性元素の量が当初の半分まで減るのにかかる時間を「半減期」と言います。半減期の短いものは短期間で一気に放射線を出しますが長続きしません。長いものはじわじわ出し続けます。放射能汚染やそれに対する防御を考える際、半減期は非常に重要な概念です。

極ミクロの壊し屋

 繰り返しになりますが、放射線は、当たった原子を不安定にします。その原子の入った分子が壊れるような現象も起きます。与える影響の程度は、放射線の強い弱い、多い少ないに概ね依存します。
68-2.4.JPG ある程度以上の強さの放射線が体に当たると、細胞の一部が壊れ、結果として細胞が死んでしまうこともあります。そのような細胞が多ければ大変なことです。
 同様に遺伝子に傷が付くこともあります。生体には修復機能も備わっていますが、その機能には限界があります。細胞分裂中の遺伝子は放射線の影響を受けやすいので、増殖の盛んな免疫細胞や生殖細胞、消化管粘膜の上皮細胞が真っ先に被害を受けます。大量に当たると臓器不全を起こしたり、感染症にかかりやすくなったりします。
 遺伝子の傷の付き方によっては、細胞は死なずに傷が受け継がれ(突然変異)、将来がん細胞化しやすくなる可能性もあります。生殖細胞に突然変異が起きた場合は、その変異が子孫へ受け継がれることになります。
68-2.5.JPG この放射線の性質を逆手に取ってがん細胞を殺すのが、がんの放射線治療です。(次項コラム参照)

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