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ニュース〜医療の今がわかる

村重直子の眼18 古川勝久・安全保障/危機管理専門家(上)


村重
「コミュニティ間のコミュニケーションという点で、民間と軍が持っている医療アセットについてのコミュニケーションが大事になるわけで、それが日ごろから顔の見える関係でできればそれに越したことはありませんが、でも今回のように、たとえば今まで知られていなかったから使われなかった航空自衛隊の『空飛ぶICU』について、自衛隊の方たちが、普通ではありえないほどのお覚悟だと思うのですが、国民のためにあるものなんだから使ってください役に立ててくださいと仰って、積極的に連絡先まで出してくださったので、その連絡先さえ知っていれば医療関係者からアプローチすることはできるんです。そこから個別ケースの相談が始まるので、『空飛ぶICU』が役立つケースは十分あると思っているんです。実際、岩手から北海道の病院へ行っていた患者さんが地元に戻るため4月21日に『空飛ぶICU』が出動しました。震災直後のニーズが多いときに活用できればもっと良かったのですが、その後も数は少ないかもしれませんが、避難所で重症になってしまう人もおられるので、医療搬送のニーズはあります。自衛隊の連絡先を出してくださったことによって、患者さんを診ている現場のお医者さんから連絡ができる、重症患者の搬送について個別の相談を始められるような環境になったので、これからだと思いますね」

古川
「そこは両者の間を取り持たれた、村重先生に非常に深く感謝しないといけないと思っております」

村重
「皆さんのお覚悟があればこそです」

古川
「ただ、このような協力を、このような未曽有の大震災が起きた直後に機能させられなかったという点には、非常に忸怩たる思いを感じています。昨日、在京アメリカ大使館の方ともお話をしたのですが、米軍でも、緊急支援のために、他の海兵隊部隊や医療関係部隊等を待機させていた、との話を伺いました。ただ、日本政府からの要請がなかなか来なかったこともあって、結局、うまく活用されなかったようです。米軍では、関東近辺で病院機能を持っている部隊と、日本の大学の医学部生との間で交流を進めているケースもあるそうです。細々とではありますが、米軍では、医療を通じた日本の民間側との交流に取り組んでいたのです。しかし、我々も他の人たちも、そのような医療交流の取り組みについて知りませんでした。今回の災害対策を教訓に、今後、色々なネットワークでお互いの活動にシナジーを作り出せるような協力が必要、と感じた次第です。
今日、村重先生にぜひお伺いしたいことがあります。東京大学の上昌広先生が事務局を務めておられる、『地震医療ネットワーク』というメーリングリストがあります。村重先生も深く関わっておられますよね。このネットワークを通じて、様々な医者の方々がコミュニケーションして協力を展開されてこられました。私もこのメーリングリストに参加させていただいております。しかし、医者でない者として、不思議に思うことがあるんですよ。このネットワークを通じて、医療関係者の皆さんが、被災地の病院からよその病院に患者を搬送されたり、しかも大人数の患者の方々まで搬送されておられます。我々のような医療の素人から見ると、これほど複雑なアレンジになると、誰かが中核になってやっているものだと思い込んでいたのですが、ネットワークでのやりとりを聞いている限りでは、どうもそうではないようですね」

村重
「誰かがリーダーシップを取っているかどうか、というご質問ですね」

古川
「はい」

村重
「それはあまりないですね」

古川
「それはなぜ、リーダーなしで......」

村重
「リーダーがいない方がうまくいくんですよね」

古川
「それはなぜ」

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