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原因不明 もしかしてホルモンの病気

36-1-1.JPG患者数が増えているといわれるホルモンの病気。
しかし症状が分かりにくい、他の病気と誤診しやすい、などの理由もあり、気づかず放置していることが多いようです。

監修/吉村弘 伊藤病院内科部長
    下澤達雄 東京大学講師

 よく耳にするのに、実のところ「ホルモン」がいったい何者か、きちんと理解できていない人は意外と多いのではないでしょうか。ホルモンは、脳の視床下部や下垂体、首から肩のあたりにある甲状腺や副甲状腺、膵臓の膵島、腎臓の上にある副腎、男性では精巣、女性では卵巣といった主に「内分泌腺」と呼ばれる器官から分泌される化学物質です。作られた器官とは別の器官(標的器官)まで血液に乗っていき、そこでカギが鍵穴にはまるように結合すると、特定の作用を起こすように情報を伝達するのです。こうしてホルモンは全身の器官の機能をコントロールし、成長や発達、生殖、性徴などのさまざまな過程に影響します。
 器官のコントロールに必要なホルモンはごく微量。となると、それぞれのホルモンの分泌量は正確に調節されなければなりません。そこで重要なのが、フィードバック機構。正と負の2パターンあります。
 正のフィードバックとは、あるホルモンの分泌によって他のホルモンの分泌が促され、それによって先んじたホルモンも促進され......という具合に両者が「雪だるま式」に増えていくもの。血液中のホルモン濃度が急上昇する必要があるときに見られますが、いわば安定化と逆行するもので、分娩時など限られています。
 一方、負のフィードバックとは、あるホルモンの分泌によって他のホルモンの分泌が抑制されること。これにより最終的にホルモンの血中濃度は一定に保たれているのです。言い換えると、ホルモンが原因の体の不調は、このシステムに障害が生じていることが多いというわけです。

分泌量異常は全身症状の原因に

 というわけで、「ホルモンの病気」というとき、たいていはホルモンの分泌量の異常が問題になります。多すぎても少なすぎても病気になってしまうのです。それぞれ次頁以降で具体例をご説明します。
 また、まれにホルモンの分泌量は正常でも、それに対する体の反応が低下していることもあります。症状は分泌低下の場合と似ています。
 いずれにしても、問題が生じているホルモンによって体の症状は違ってきます。どこか特定の器官に影響が出るばかりでなく、倦怠感や発汗、のぼせなどの全身症状になって現れることも多いもの。そのため原因の特定がしづらく、対応が遅れてしまうことも珍しくないのです。

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