情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。
気づかぬ間にしのびよる肝硬変(脂肪肝経由)
肝臓は「沈黙の臓器」ともいわれます。
自覚症状のほとんどないまま病気が進行し、気づけば取り返しのつかないことに、なんてケースも後を絶ちません。
監修/下澤達雄 東京大学講師
渡邊清高 国立がんセンターがん医療情報サービス室長
さあ、お酒とご馳走三昧のシーズンが本格到来です。このところ立て込んできた忘年会、クリスマス、そしてそのまま正月休みに突入!......という具合に、飲んで食べての日々が当分続くという方、かなり多いのではないでしょうか。
しかし、そうして悦楽にひたっている陰で、実はひそかに、ハードワークに耐えている部位があります。そう、肝臓です。
「沈黙の臓器」ともいわれる肝臓は、病気になっても本人が気づくまでに時間がかかる臓器の代表例。これは主に3つの理由によると考えられます。まず、①肝臓は実際ほかの臓器に比べて非常にタフなのです。多少の無理を強いても、ダメージを受けても、残った正常な細胞がそれをカバーして働き続けます。しかも、②知覚神経が内部にきていないため、感覚が鈍いというのもあります。「痛い!」と悲鳴を上げられずに、黙って重労働に耐えてしまうのです。加えて、③再生能力に優れるのが大きな特徴。極端な話、肝臓の70%を切り取っても約半年~1年でもとの大きさに戻るとされるくらいです。
しかし、このタフさが裏目に出ることが多いのも事実。なかなか文句を言わない、つまり、軽度の肝機能障害ではすぐに痛みなどの症状が現れないために、ついつい負担が過ぎてしまいます。そして異常に気づいたときにはダウン寸前、となりがちなのです。
そのころになってやっと、食欲不振や吐き気、疲れやすい、全身倦怠感、さらには肌が黄味がかってくる黄疸や、お腹に水がたまる、などの症状が現れるようになります。
自覚症状が出ても何もしないでいれば、高い確率で肝硬変へと移行するか、もしくはすでに肝硬変になっているかもしれません。肝硬変は、長期にわたって肝臓にダメージが与えられ続けた結果、肝臓が硬くなり正常な機能を失ってしまった状態。もう完治は不可能です。怖いのは、高い確率で肝臓の機能が低下して肝不全になったり、肝がんを発症するところ。その前で何としても踏みとどまらねばなりません。
肝臓がやられてしまう主な原因としては、肝炎ウイルス、アルコールの過剰摂取、免疫・代謝異常のほか、食生活の欧米化による肥満、薬剤によるものなどが挙げられます。
最も大きな原因である肝炎については特集済み(07年2月号参照)なので、そちらをご覧ください。
もう一つの大きな原因である脂肪肝は、食べ過ぎによる肥満やアルコールの飲みすぎなどで起きます。
肝硬変に至る前に、検査で異常が見つかった方もそうでない方も、ぜひ今日から肝臓に優しい生活を始めましょう。