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埼玉・千葉が危ない②

saitamachiba-2.JPG医師の数から見る
救急車を呼んでもすぐに受入れ先が見つからない背景には、医療機関のマンパワー不足があることを前回お伝えしました。今後、高齢化がますます進むと、医療を必要とする人はどんどん増えていくでしょう。医療のマンパワーが足りているか心配です。今回は、医師の数という視点から考えてみます。(論説委員 新井裕充)
(新聞社版・がん研版のオリジナル記事で、本体には載っておりません)


医師不足の国
saitamachiba-2.1.JPG 日本の医師数は海外の諸外国と比較してどんな水準なのでしょうか。まず、データをお示ししましょう(図)。これは、OECDヘルスデータを基に作成しました。医師数を国際比較するデータとして、同様の表が国の審議会などで頻繁に使用されます。
 これを見ますと、人口千人当たりの医数数がOECD単純平均の3分の2ですから、日本の医師数は国際的に見て低いレベルにあることが分かります。日本は医師不足の国なのです。
 地域の病院が頑張って連携システムを整えても、医療現場が汗を流して踏ん張っても、そこには自ずと限界があります。医療供給の絶対量が足りないからです。これでは、助かる命も救えない事態が起こりえます。

医学部の定員増
 政府もこうした状況を重く見て、医師を増やす方向に舵を切り始めました。医師を養成する大学医学部の設置・認可などを所管する文部科学省は、これまで政府の方針で抑制していた医学部の定員を増やしています。直近4年間で、既存医学部の定員を約1300人増員する対策がとられ、今年度の定員は昨年度より77人増の8923人と過去最高になりました。
 厚生労働省の調査によると、医師免許を持っている「届出医師数」は2008年末時点で28万6699人で、前回の06年調査から8772人増加しています。医師の数はなだらかではありますが、右肩上がりで推移しています。
 つまり、日本の医師数は国際的に見て少ないけれども、徐々に増え続けていると考えることはできます。しかし、楽観視はできません。今後起こり得る急激な医療ニーズの増大に対応できるかどうかは別問題です。既に、至る所で救急受入れの不能事例などが続出しています。

医師の偏在
 医師の数が足りないことは当然ですが、「偏在」も問題になっています。まず、診療科の偏在です。外科や産科など訴訟リスクを抱える診療科の医師が少なく、耳鼻科や眼科、整形外科など開業しやすい診療科に人気が集まっています。そのため、救急医療を支えるマンパワーが不足しています。
saitamachiba-2.2.JPG さらに地域的な偏在があり、医師が大都市部に集中する傾向があります(図)。人口10万人当たりの医師数は212・9人で、これを都道府県別に比較してみますと、京都府が279・2人と最も多く、次いで徳島県277・6人、東京都277・4人となっています。
 一方、最も少ないのは埼玉県で139・9人。次いで、茨城県153・7人、千葉県161・0人となっており、東京に隣接する埼玉、千葉が深刻な医師不足に陥っている地域であることがわかります。今回の大震災で多大な被害を受けた東北も埼玉や千葉と並ぶ「医療過疎」で、日本の医師数は「西高東低」と言われています。医師の地域偏在の背景には、大学医学部や医科大の「西高東低」が関係しているとの指摘もあります。一定数以上の人口があり、政令指定都市を持つ都道府県については、医学部や医科大を新設すべきとの考え方もあります。
 今後、日本はかつて経験したことがない超高齢社会を迎えます。将来の医療需要に応えるため、医師数の増加はもちろんですが、医師の診療科偏在、地域偏在も同時に解消する必要があります。医療を受ける立場として、こうした問題にいかに向き合っていくかも問われています。

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