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産後鬱になっちゃった ~記者が当事者になって気づいたこと①

 この2年半ほどの間に結婚、出産、転居を経験し、さらに体を壊して実家で療養しました。この間、記者として知っていたつもりで、でも意外と分かってなかったことも多いと気づきました。記憶が新しいうちに書き留めておきます。
論説委員 熊田梨恵(社会福祉士)

 私は、2014年1月に亀田総合病院へ出向し、2015年5月の出向終了後そのまま産休・育休に入りました。手当付きの育児休業は昨年7月で明けましたが、体調を崩してしまったため、そのまま病気療養に入り、この4月から復帰したところです。

 お蔭様で、2015年7月に出産した長男は、成長曲線を飛び出るほど背も高く、すくすくと元気に育っています。

 朝5時には私を叩き起こし、散歩に行きたがるくせに玄関で石をつまんで1時間以上過ごし、ご飯を放り投げてお茶を口にためて吹き出したり、浴槽で転んだりと、よくもまあこんなに忙しくできるものだと思います。

 イヤイヤ期に入って、思うようにならないとわめいたり叩いたりするので、お手上げになることも多いです。

 子どもは可愛いけど大変、大変だけど可愛い、と身に染みて思う毎日です。 育児は大変ですが、やはりこの子たちが未来の宝なのだとも感じます。

 自分の経験を、未来の子どもたちのため、将来の日本のため役立てていきたいと願い、まずは恥をさらすようなことから書いていきます。

甘く見ていた

 さて、私は、産後の肥立ちが悪く、気持ちも落ち込んで、いわゆる産後鬱に悩まされました。一時は床から起き上がれないほどで、しばらく育児や家事ができなくなりました。

 特に、目の焦点を合わせようとするとつらくなったり、光が過度にまぶしく感じられるようになったりしました。パソコンやスマートフォンで文字を見ようとしても、すぐ瞼が閉じてしまい、読めません。最近は友人と連絡を取り合うのも、ちょっとした情報を調べるのも、すべてスマホです。特に一日中家で赤ちゃんの世話をしている時は、それが最も手軽な手段ですから、使えないと、友人に相談したり育児について調べたりもできず、余計に孤独に追い込まれました。電話やメールを再びできるようになるまで、何カ月もかかりました。

 「産後は体を大切に」と何となく聞いてはいたものの、こんなに大変なことになるのか!! と、妊娠出産の大変さを、身をもって知りました。

 今思うと、里帰り出産もしませんでしたし、甘く見ていたなと思います。

 ただ、そんなに大変なことなのだということを教えてくれる人は、いませんでした。大変な状況になってからネット検索すると、同じ状況に陥った人はたくさん見つかりました。でも、そうなる前に検索することを思いついたかと問われれば、思いつかなかったと答えます。

 今回改めて、当事者が必要な情報を得る、特にトラブル発生を未然に防ぐための情報を得る、それがとても難しいということに気づきました。

記者と当事者の違い

 私は医療介護福祉分野の記者をずっとしてきましたし、社会福祉士の資格も持っています。周産期医療を題材に『救児の人々』という本を書いたこともあるので、妊娠出産に関する医療情報についても、一般の妊婦さんより知っていると思っていました。

 ところが、妊娠して以降「え、全然知らんかった。そんな大事なこと、誰か教えてよ」と思うことにしばしば出くわしました。
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