福島県立大野病院事件第九回公判(速報2)

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2007年10月27日 01:13

引き続き
「周産期医療の崩壊をくいとめる会」M医師の報告です。

検察側の質問は、午前中は比較的あっさりと終わりました。

検察: 癒着胎盤の特徴のひとつに、出血量が多いということがあげられますか
証人: はい
検察: どの程度の出血ですか
証人: 私の経験では、5千〜6千です。
検察: その5千〜6千の出血の時間は何時間ですか、長い時間ですか
証人: それは術中の出血なので、なかなかどの時間かはわかりませんので、答えようがない

検察: 術中には癒着の程度はわからないのですか
証人: わかりません

検察: 癒着胎盤が術前にはわからないというが、臨床的に診断するのはどのような場合ですか
証人: はがして出血が多いときを、臨床的に癒着胎盤と診断する。
検察: 用手剥離できない場合、臨床的に癒着胎盤と言いますか
証人: 胎盤が全く剥がれないということは私の経験にないので、答えられません
検察: 胎盤と筋層の間に隙間がないのを、臨床的癒着とするのはどうですか
弁護: 胎盤と子宮壁に隙間がある、って、子宮と胎盤がくっついていないってことですよね。でも胎盤は子宮に付着しています。検察は認識が違います。間違った事実認定をしています。

そして午後、

検察: 証人は患者さんの後壁下部に嵌入胎盤が認められたことはご存じですか
証人: 聞いています。
検察: 超音波検査をしたけれど、被告は嵌入胎盤を見つけることができなかったということになるのですか
証人: 被告とは、
検察: 加藤医師は、超音波検査を行ったが、所見を認めることができなかったということですか
証人: 疑う所見がなかった、のであって、見つけることができなかったのではないでしょう
検察: でも、実際は嵌入胎盤があったのですよね
証人: ありました
検察: でも、その像を見つけられなかった
証人: なかったのです
検察: どういうことですか
証人: 100%診断できるものではありません。所見がなかったから、疑わなかった、ということです。
検察: 検査をしても、嵌入胎盤があった、という一つの症例だということですか
証人: 診断効率は何をやっても100%ではない、一応検査をしたが、所見がなかったが、しかし、病理診断で嵌入胎盤という症例だと考えます。

検察: 超音波検査の写真にない部分に癒着があったということは考えられませんか
証人: まず一般的に医師は、超音波検査の際に、まず全体をみます。異常があればそれを残します。癒着の所見があれば、必ず記録をカルテに貼ります。
検察: それは証人ご自身の経験と知識からですか
証人: カルテを見ると、加藤先生は慎重にみています。尿潜血とかもみています。超音波検査で疑いがあれば、必ず書くと思います。
検察: 本人から聞いたのですか
証人: いいえ、カルテを見て、慎重だから、そうやると思う、私の考えです。
検察: 加藤医師の能力についてはいかがですか
証人: 資料を見ていると、私にはこれまでの経験から超音波検査の技術を判断する能力が自分にはあると思うのですが、超音波検査に、加藤医師は習熟していると思います。
検察: 結果的に嵌入胎盤だったのですが、それが術前の診療記録に残っていないのは、加藤医師の技量や経験を疑わないですか
証人: 全くないです。


検察: 証人は、最初の意見書ではどういう意識でお書きになっていたのですか
証人: こういうことについて、意見を述べてと弁護人から言われたことについて、意見を述べました。

検察: 証人は、胎盤のどのあたりまで実際用手剥離を行い・・
弁護: 異議あり、胎盤の用手剥離について主尋問をしていません。反対尋問の範囲を超えています。帝王切開から用手剥離までは、次回の証人に求めています。今回の証人は、入院外来カルテをみて、主に術前検査や診断について述べてもらっている。
裁判長: 鑑定書の中身は裁判所はわからないが、手術のことは記載されているのですか
弁護: 鑑定書に限定して聞いてください
裁判長: 今回の証人をとりあげるとき、重複していないようにするとは以前言われていることですね。どうしても聞きたいときは、それに限ってということで聞いてください。
検察: 証人は同じ立場なら、同じことをしていた、と述べているので、反対
尋問が及ぶということになります。

検察: 証人は、加藤被告がどのあたりまで用手剥離を行い、どこからクーパーを用いたという認識ですか
証人: 記憶が曖昧なのではっきり申し上げられないが、ある程度まで用手で
検察: 大部分ですか
証人: それはちょっとわかりません
検察: どの資料でそれはお知りになったのですか
証人: 見たか記憶にないが、そういうような調書を読んだのではないかと
検察: 加藤医師のですか
証人: 私は今、記憶がはっきりしないので、答えられないと
検察: 胎盤の付着部位はどこでしたか
証人: 後壁に広範に、胎盤がかなりおおきかったと記憶していた
検察: どれくらい
証人: いや、かなりというしか
弁護: 主尋問で、証人の経験としてクーパーの使用はきいていますが、前提の資料を読み込んでいないのですから、お答えできません。主尋問の範囲を超えています。
検察: 証人は本件のクーパーを使用の是非を鑑定書に書いているわけですから、信用性を争いたい。証人が被告人でも、同じ事をしたということなので、証人の認識の上で聞きたい。
裁判長: 検察は、範囲の前提にこだわっていたのですから、そこを考慮してきいてください。
検察: でもきかれてましたよね。
弁護: それはそっちでしょ
検察: 限定できていないと、鑑定書に両方の証人に重複しているわけだから、
弁護: 我々はあくまでも証人の経験として聞いたわけで、本件に即してきいていません。
検察: ではそもそもクーパーの使用についてきいた意義は何ですか
弁護: 一般の産科医としてクーパーを使うのかきいたのです
検察: 本件のクーパーの意義をきいている
裁判長: 一般的なところで良いではないですか。中身の正確性でどうしても聞くところまでは聞いてください。弁護側は証人により内容の区分けをすると言われていたので、その範囲で聞いてください。
検察: そういう前提で確認することは、内容の信用性を吟味する上で必要です。
裁判長: そこに影響するのですか。最初に弁護側に全部準備してもらうことが必要でしょ
弁護: 午前の尋問では、一般論として聞くということで、あくまで言っています。
検察: 本件と一般論とどう関係あるのですか
弁護: 検察だって、一般論として、色々聞いているではないですか。それは本件と関係ないとでも言うのですか

検察: 証人は癒着の範囲をどの程度だと認識していますか
証人: ちゃんと読んでいませんが、一部と理解しています。
検察: 病理診断の資料はあったのですか
証人: 写真は、ながめていたが、記録を読む事はしていません
検察: 病理診断には、検察側のと弁護側のものとがあるがどちらですか
証人: 検察のかと思いますが、結果は知りません。
検察: 局所的とは
証人: そういう話は聞いていましたが、範囲はきいていません。
検察: 鑑定書には、局所的と書かれています。クーパー使用は局所的に、と。そういう前提ですか
証人: そう聞いています。

一般的な質問が続き、そして、イリュージョンの再来である。
被告医師、その医局の教授と、証人は関係があるのだから、不利になることは書かないだろう、という、印象を持たせるような質問。

検察は、何と、証人が東北の代表として、警察側の鑑定を引き受けなかったことに責任を感じないのか、(これはちょっとびっくりしました。おまえがうけなかったから、格下の田中に頼んだんじゃないか、ってことですか、と)忙しいから警察の鑑定を拒否したのに、翌年逮捕後に意見書を提出した、声明文も出した、と証人に因縁をつけているとしか思えない質問を始めた。以下の如くである。


検察: 今回の意見書についてですが、具体的にいつできたのですか
証人: 書いていなくて、覚えていません。
検察: いつころ頼まれたのですか
証人: 覚えていません

検察: 証人は被告人との面識はありますか
証人: 全くありません
検察: どのような見識の医師なのかは知っていましたか
証人: 福島県立医大の佐藤教授は先輩なので、そういう意味では知っています。加藤医師と話しをしたのは初めてです。
検察: 福島医大の佐藤教授は先輩ですか
証人: そうです
検察: つきあいはありますか
証人: あるとは思いますが、
検察: 加藤医師がどんな先生なのかはきいていなかったのですか
証人: 周産期医療を専門としており、10年くらいの経験年数の医師と聞いています。
検察: 佐藤教授とこの件で話したことはありますか
証人: 個人的にはありません。しかし佐藤教授は学会の監事で、理事会で毎月一回は会います。


検察: 証人は東北大学でお忙しい、周産期医療をされて、と伺って良いですか
証人: はい
検察: 平成17年春、加藤被告が逮捕される一年前ですが、富岡署の鑑定依頼を証人は拒否されましたね。何故ですか
証人: 裁判所の依頼は受けたことがありますが、警察の鑑定は初めてで、どういうものかわからなかったのと、多忙で時間がとれなかったのです。
検察: 警察は、鑑定の依頼を行うことができると、証人にそのときに説明したのですよね
証人: したかもしれませんが、覚えていませんが
検察: 理由は忙しいからですか
証人: 誰でも鑑定は喜んでやるものではないですよね。非常に多忙でしたし。私は刑事事件の鑑定は初めてで自信がなかったのがひとつめ、忙しいというのが二つめの理由です。
検察: 証人は、その際、鑑定の仕事だけしているわけではないので、引き受けないと、担当官にお話されたか、記憶にありますか
証人: 記憶にないが、そういうことを言ったかもしれません
検察: 警察が先生のところに鑑定依頼に行った時点では、まだこの事件は大きな話になっていませんでした。福島県でおこった事例で、福島県に医師がいなかったため、東北大教授の証人に依頼しに行ったわけですが、東北地方の代表として、鑑定する責任が証人にはあると感じなかったのでしょうか
証人: そう言われると、責任あるかもしれませんが、忙しかったので、引き受けられなかった。
検察: 証人が拒否されて、一年後、被告医師が逮捕されたころ、証人が意見書を書いて弁護士に提出したのは覚えていらっしゃいますか
証人: はい。しかし内容は覚えていません。
検察: 記憶喚起と同一性の確認のため、証人作成の意見書を示したい。
裁判長: 証拠に出ていますか
弁護: 証拠として提出するために開示した記憶はありません。
裁判長: それなら作成の経緯からきいてもらわないと、こちらにわかりませんので。では10分休憩いたします。(15:15)  


検察: 日付はないのですが、意見書で証人の署名押印があります。証拠請求はないですが、弁護側からいただいたものです。
弁護: それは裁判の証拠ではなく、捜査段階のときに弁護側が提出したものです

検察: 日付記載ございませんが、平成18年3月7日、受理のゴム印が確認できます。作成は3月7日より前ですか
証人: はい
検察: 意見書の経緯はご記憶ございますか
証人: これは加藤先生が逮捕されて、それに対して学会としても、不当逮捕であると、理事会などの話があり、意見書を書こうということだと記憶しています。
検事: ここには、肩書きとして学会理事と、周産期委員会の委員長ということが書かれていますね
証人: はい
検察: どういう意見か記憶ございますか
証人: 記憶はだいたいですが、要するに、業務上過失致死に問われ、医師が手錠をかけられ逮捕されたことに衝撃を受けました。それに対する意見書です。
検察: 「過失があるか疑わしい」と書いていますか
証人: はい
検察: 「術前の癒着胎盤の診断が難しい、MAPも十分量確保されていた、術中超音波検査も行うなど慎重であった。しかし思わぬ出血があったということで、加藤医師の逮捕は遺憾である」という内容ですね
証人: はい
検察: そのときには、医師記録をご覧になりましたか
証人: 学会で
検察: 一枚目に、カルテをみるのは不可能と書かれていますが、事故調査報告書と関係者の聞き取りによると。
証人: そうだと思います。
検察: 関係者とは
証人: 学会の理事会で問題になり、佐藤教授の話を聞いたということです
検察: これは直接ということではなく
証人: 直接、加藤先生からですか、聞いていません
検察: 鑑定前に、加藤医師から話しを聞いたことはありますか
証人: 私は直接はきいていません。
検察: 起訴前のものですが、起訴後には医会の宮城県と連名で、声明を出されましたね
証人: はい
検察: 内容は覚えていますか
証人: 覚えていないですが
検察: 平成18年4月5日では
証人: 日付は忘れましたが、連名で出しました。
検察: 団体長としてですが、文面は証人がかかわったのですか
証人: 部長会理事会医会の中で、どなたの起草か記憶にないが、私ではない
ですが、内容をみて、皆で出しました。
検察: 内容は見ましたか
証人: はい
検察: できるかぎりの努力を必死で行った、と書いていますね。証人もそう考えましたか
証人: 聞く範囲でそう思っています。
検察: 弁護人から依頼を受けて鑑定を引き受けて本日に至るのですね
証人: はい
検察: 以上です (検察側主尋問終了)

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