協議会・討論詳録

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2007年11月14日 13:35

11日に行われた現場からの医療改革推進協議会シンポのうち
特に皆さんの注目度が高いと思われる「医療紛争処理」討論部を
詳録します。


上昌広東大医科研客員准教授
「討論に入ります。壇上に8人の先生が立ちまして話をします。新たにご参加いただく先生は、民主党参議院議員で外科医の足立信也先生、亀田総合病院院長亀田信介先生、東京高裁の判事西口元先生、自民党参議院議員の西島英利先生です。よろしくお願いします。司会は、鈴木寛先生にお願いしています」


鈴木寛参院議員
「それでは、討議に入りたいと思いますが、まず西島先生から。いろいろな発表がありましたが、ご感想、あるいはいろいろな取り組みについてお話をお願いしたいと思います。私は今日、やや西島先生の肩を持ちながらお話させていただきたいと思っています。実は自民党の先生方にも3名程お越しいただけないかお願いしたのですが、皆様大変お忙しくて今日は西島先生に来ていただいて大変ありがとうございます。舛添大臣も西島先生は3人分以上の方だからと言ってみえ、ご推薦をいただきました。

先程、上先生から大変熱心なご発表いただいたことは大変ありがたいのですが、一点フェアのために申し上げておきますと、現在発表されているのは厚生労働省案であって、厚生労働省案が決まって、その後の閣議決定で政府案になっていく。しかし、この8月以降特に国会で、与党も野党も大変イニシアチブを持って政策形成過程が変更しています。従って、与党案の自民党案、公明党案はまだありません。まさにそうした厚生労働省の議論を踏まえてそれを受け止めて、今日の議論を踏まえて西島先生を始めとする与党の皆様方が今後いろんな議論を踏まえて案を進化させていくという途上にありますので、そういう意味でも今日の西島先生を含めたご議論は大変意義があるものです。そういう前提でご理解いただけたらと思います。

当然今日の議論はこの会の発起人でもあります舛添大臣にも事務局の方からもご報告させていただきたいと思います。そういうわけで、西島先生今日は本当にお忙しい中ありがとうございました。西島先生よろしくお願いします」


西島
「発言の機会をいただきましてありがとうございます。今の私の立場は先程のお話にも出ましたが党の医療事故紛争処理のあり方検討会の副座長をしています。今後この考え方をどういう形で作っていくか鉛筆をなめる立場であります。そういう意味で、少し先程のお話の中で若干誤解があるという部分もありましたのでそういうことも含めてお話させていただきたいと思います。

私自身は、実は医療事故の担当を地域の医師会で6年間やってきました。まさしく対話型でないと何も解決しないということは十二分に分かっているつもりです。ただ、真相究明という時に出て来た観点等々では中々説明できない部分があります。その辺をどうしていくかという点が一番悩ましい所でありました。

今回厚生労働省が出した試案の中にはお亡くなりになった方を対象にするということになっています。それはどうしてかというと、いろんな事故が起きた場合、その全てを対処すると、とても処理が出来ないのが一点あります。二点目は生存されているのであれば、じっくりと事故の究明は出来るのです。ところが、お亡くなりになるとご遺体が火葬されてそれで終わりですから事故の究明が出来ないというところがありまして、一つにはお亡くなりになった方を対象にするということで今整理されているところです。

そして、あくまでも厚生労働省が検討会をやってそれを取りまとめた試案でありまして、これを我々が政治家の立場で立法する場合叩いていくわけですので、これは決して厚生労働省の考え方がそのまま立法されていくことではないということを、前提としてお話を聞いていただきたいと思っています。

それと、もう一点これは箱物を作る話ではありません。先程箱物の話が出ましたがシステムを作るという話です。先程河北先生が無過失補償制度を日本医療機能評価機構でやっているという話がありましたが、実は最初の段階ではこれは日本医師会でやるという話でした。私はこれに反対しました。なぜなら、透明性が担保できない。ですので、無過失補償制度は第三者機関である日本医療機能評価機構でやることで透明性が担保できるので日本医療機能評価機構でやるようにお願いしました。私はだいぶ日本医療機能評価機構から文句を言われました。なぜなら、『また仕事を増やすのか』ということです。しかし、日本医療機能評価機構は、ある意味では一番学者さん達も揃っていますし、透明性が担保出来るのですね。そういう意味で今日本医療機能評価機構で準備委員会を作って無過失補償制度をやっているということです。そういう意味ではおそらく、まだ内容が決まっていませんがまだもう一つの仕事が行く可能性があるのかなと思っていますので、覚悟の方よろしくお願いします。

社会保険庁のお話が出ましたが、社会保険庁のでたらめさがありましたから、実は社会保険庁を解体するので、社会保険庁の職員が行くことは100%ありません。それだけはお約束をさせていただきたいと思います。

そこでこの叩き台が出まして、これは何かと言いますとあくまでも患者さんからしてみたら、病因の究明をしていただきたいというのが患者さんの一番の願い事です。それから、医師側にしますと説明をするためのデータが無いと患者さんとしっかりとした話し合いが出来ないという部分もありまして、そういう意味でまず一つには原因究明というシステムが必要であろうということがあります。その結果はどうなるかと言いますと報告書を作りまして御遺族の方、当然医療機関にお渡ししまして、大きく取りまとめた結果をそれぞれの医療機関にもう一つの目的である再発防止という形でやっていくとういうことです。そして、この報告書が出た段階で初めて患者さん、ご遺族の方の対話がスタートするのではないかと思います。ですので、これを区分けしてお考えいただけないと先程のご説明はごちゃまぜになっていますので、このシステムについてはご理解が進まないと思いましたのでその辺の整理はさせていただきたいと思います。

先日、ヒアリングを2回に渡ってこれについて行いました。弁護士さんの代表の方々もお出でになりましたし、大きな事故がありました都立広尾病院のご遺族の方もお出でいただいていろんなご意見いただきました。このシステムについては基本的には賛成の方向で良いということです。ただ、細かい所で様々な問題があります。その時の細かい所が何かといいますと、どのような症例を一つは対象にするのか亡くなった方を前提にしてはいけません。信頼の中で亡くなった方もみえますので、どのような症例を届け出の対象にしていくのかということが今後の議論になっていくのかなと思っています。この時に、弁護士が言われた刑事事件にこの報告書が使われるということが書かれていますので、それは何かというと、故意に行ったもの、重過失については刑事事件の対象にしないといけないのではないかという意見でした。私もそれは賛成です。故意は問題無いと思いますが、重過失をどのような形で整理していくかということも、今後の議論だろうと思います。

それから、届け出を義務化するということになりますと、別の問題が起きてきます。将来的にそのような方向で使われるということは当然あります。当然それに対して隠蔽が行われる可能性もあります。届け出をしないということが当然起きる可能性があるということです。それで、大事なことは免責を必ず入れていかないとこのシステムは機能しないだろうと私は思います。ただ、何でもかんでも免責を出さなくて、先程申しました故意や重過失は事故調査の中できちんとした結論が出てくるわけです。そういう意味で、医療機関はそのような流れを作っていく必要があると思います。いずれにしても、免責を入れないと義務化は出来ません。そういうことがこれから法律を作っていく上での重大な議論になっていく部分でないかなと思います。

決して我々は警察庁、法務省、厚生労働省に投げたわけではありません。これはまず、審議会、検討会を作って議論をして下さい。その中には警察、法務省の言い分もあるでしょう。そのような中で検討会をしていうただいて、今いただいたことが試案という形でありますので、これから本格的な議論がスタートするのだということは是非ご理解いただきたいなと思います。

どうしてこれが出来たかといいますと、まさしく福島県の大野病院事件からであります。私は国会で質問しまして、医師法21条に問題があるのではないかということで、川崎大臣から検討をスタートするという答弁をいただいて、様々な動きがスタートしたのだということですので、是非ご理解いただきたいと思います。ありがとうございました」


鈴木
「西島先生ありがとうございました。報告書を読んでいただけでは分からない点を非常にクリアに解説していただきましてありがとうございます。

次は亀田先生にご意見いただきたいと思いますが、今日の議論を様々な角度からご発言いただきたいと思いますが、一つ私からポイントを提示させていただきたいのは、結局誰がチェックをするということが機能するということかなということだと思いました。

おそらく三つ位主体があって、一つは厚生労働省ないし警察庁といういわゆる国、もちろん行政と刑事は違いますので本来的にはもう少し細かく分けて考えないといけないですが、いずれにしても公権力がチェックをするという考え方です。しかしその場合、能力の問題、マンパワーの問題があると野村先生からもご指摘いただいて、まずは死亡事例からというところもそういったマンパワーと能力の問題ということも後で西口先生からも補足をいただきたいと思います。

第二のグループは専門家によってサポートされた患者さん、あるいはご家族自身がチェックをする。もっと言いますと権利の回復、という先程お話がありました現状の回復というのは医療事故の場合、河北先生も先程5つの分類の中で言われましたが現状の回復は非常に難しいのですが、患者あるいは患者の家族の皆様が専門家によって主導でやっていく。あるいはネットワークが付いてくるのだと思います。そのような方法論です。

三つ目はまさにピアーチェックと言いますか同僚の医師であれば医師コミュニティー、専門家のコミュニティーで、弁護士会はそのような構成を取っていますがピアでまさにチェックをしていくのだということです。
大きく言うとこの三つであって、そのどれかを選ぶという話ではなく、ベストミックスが議論の方向性としては正しいのだと思います。それを具体的な制度に落とし込む時に現状そのようになっていますが、現状急速な産婦人科の問題であれば萎縮医療、あるいは産科不足ということがここへ来て問題になっています。だから、今のままのバランス、あるいは役割分担では難しい。そこでもう一回再構築、再点検をして再構築をしようということかなと思っています。

これは一つのフレームワークということでお話をしましたが、どのような角度からでも結構ですが、亀田先生もまさにこの問題に日々取り組んでみえるわけですが、ご意見をいただければと思います」


亀田
「まず、現場でやっている実情からすると現実には我々の所でもそうなのですが、今まででは送られて来なかったアッペとかの簡単な手術が急激に増えています。それはどういうことかというと、周りの中小病院が手術をやめているということです。それで、手術数が増えているのですがその多くが特に地域の人に関しては従来亀田総合病院でやらなかった簡単な手術が増えてきてます。これは立ち去り型だと思います。

亀田総合病院ではよちよち歩きでメディエーションもどきというものを、和田先生からもご指導をいただいて始めています。医療の不確実性というかどんなに医療事故にしても過誤にしても減らせても無くならないという、やはり国民の皆様にどのように理解していただけるかということが一番大切だと思います。それで、我々は過誤が少しでもあれば当然セーフティーマネージメントではなくリスクマネージメントと考えた時、最も重要なことは、最も危険なことは隠蔽です。要するに情報公開ということが一番自分達を守ることになります。

そういう意味では医療者の良心を信じていただくしかないと思うのですが、いずれにしても、医療過誤であればこちらから謝罪もし、交渉して和解もするということで最終的にはお金も掛かるということです。この財源をどうするかということですが、亀田総合病院では倍々ゲームです。事故は必ずありますからそうすると和解をしますので、病院は出来るだけ多く保険会社からお金を出してもらおうとするわけです。そうすると保険への掛け金が倍々になるということが現実に起きています。医療事故と医療過誤をどのように分けているかという問題がありますが、基本的に裁判になるのはほとんどは我々としては防ぎようが無かったし、きちんとやっていたと信じるものについて職員の心を考えた時にをこちらがよれたら、みんなやらなくなってしまうなという問題については行く所まで行くしかない。その時こそ本当は情報公開と言いながら、今度病院が全部の情報を公開したいと言うとなかなか情報を強者と思われている病院が情報を公開することは酷いのではないかという話になって来るわけです。

この辺を整理をきっちりつけて、やはり情報を公開すべきだと思います。裁判まで持っていくなら情報を公開して、もちろん個人のプライバシーは当然守るものとして、公開討論まで持っていくようなことが医療機関側にも権利をいただきたいと思います。マスコミの方も本当に入ってもらって、プロを入れて討論してみたいと思うものが裁判になっているケースだと思います。それと、なかなか折り合わない金銭がべらぼうに違ってしまうものもあります。

先程、河北先生から無過失補償制度のお話がありましたが、これも過失があったか無いか誰が対象者かということも非常に難しいです。それで過失が無かったからとこの金額でと言った時本当に患者が納得するのかという問題がすごく疑問です。ともかくCPなら1億円以上ということが相場ですから、訴えたらもう少し貰えるのではないかという1千万円ならこの子供を育てていけないという問題が、逆に患者さん側の考え方ではないかと思います。そうすると、裁判に必ずなります。ですので、どのように無過失補償制度を本当に機能させるのかということがすごく難しい所です。

ともかく、医師達の医療事故は最低限にしないといけないが、必ず起こります。その時にお互い納得するための制度をお金も含めて誰が財源を支払うのか。結果責任まで取ることは本当は良いのですが、結果責任に支払う医療費の中で持つのかそれとも、掛かる患者さんが納得の上でリスクに対して自分達で保険料を上乗せして払うのか様々なやり方があると思うのですが、そこまで含めてこの問題は大きく捉えていかないと、実際に現場では難しい問題が次々に出てしまうのではないかと思います」


鈴木
「亀田先生ありがとうございました。それでは、西口先生よろしくお願いします。この会に現役の高裁の判事さんにご参加いただいたということに非常に感謝しています」


西口
「裁判所の医療過誤事件でお世話になっている先生方がたくさんみえるみたいで、いつもありがとうございます。今日は先生方から厳しいご批判を受けるのではないかということで覚悟して来ました。

少し申し上げれば医療過誤によって萎縮医療、萎縮診療が始まっているということは先生方の過剰反応ではないかと思っています。私達が先週も判決を書きましたが、一審を取り消すように病院側が請求してきましたが、裁判所が認めることはよっぽど酷い案件です。それを少し誤解があるのかなという感じがします。多分先生方も裁判官は素人で良く分かっていないという面で見ていると思います。確かにそういう面もあるのですが、素人の立場での判断を出しています。

最近出した本で書きましたが鑑定書が出てくるのです。鑑定書を見て高裁は三人ですが、一人の裁判官がこうでないかと言って判断するのですが、チェックしていることは専門的なことではなく、例えば鑑定の前提事実を間違っているとかカルテの見方を間違っているという問題が結構あります。カルテの記載と証言をした医師、看護師の証言が違っているということがあります。そうすると最終的に裁判所が判断せざるを得ない。前提を間違っていたら鑑定が全く違います。それから医療文献の引用箇所が間違っているということが結構あります。こういう鑑定がざらにあります。医師は当然信用出来ないということになります。それで、鑑定が来てすぐに鑑定するということになります。

あとは、自信のある先生が若干多いので過失の判断までしてしまうのです。過失の判断は裁判所の専権事項であります。ですので、過失の判断まで言う必要はありません。先生方は医師としてこのように思うと言うだけで、普通の医師ならこのようなことはしないということは、最高裁の判断事項であります。ですので、先生方もそれ程怖がるのでなく自信を持ってやっていただければと思っています。

せっかく司会の鈴木寛先生から発言の機会をいただきましたのでご紹介しますと最近は医療関係訴訟が年間900件から1,000件位起きています。医療過誤の御三家と言われている診療科は、内科、外科、産婦人科です。この3つの科が医療過誤の御三家と言われています。平成18年の医療訴訟は内科256件、外科188件、産婦人科が161件です。医師が責任を認めたという認容率も世間の批判もありまして平成3年当時で認容率が25.6%でした。平成17年が37.8%です。倍近く上がっています。これはどこに原因があるか非常に不思議に思っているのですが、医師の事実誤認、裁判所の判断が間違っているということも結果的にはあります。認容率が4割位になっています。

あと、鑑定の実施率がそれ程高くないのです。統計では平成18年に17%位しか鑑定されていません。最近私自身非常に反省する点が多いのですが、自信を持った裁判官が非常に増えていまして『鑑定はいらない』と言うのです。それはどうかなと思います。医学文献を出してもらえれば十分分かると言うのです。確かにその程度の医療ミスは結構あります。何で先生方はそのようなミスを犯したのかなと初歩的なミスは結構あります。

裁判官の立場として言いにくいことなのですが、裁判にふさわしい事件があると思います。裁判にふさわしい事件は裁判所に来て欲しい。それはなぜかと言いますと、公平性、中立性を保った判断をしたいからです。おそらく行政庁が作ったADRが使用されないということは国民が全く信用していないということです。行政庁は信用が無い、医師はお互いかばい合うという所がどうもネックになっていると思います。それで、全て裁判所に来るということになります。その辺の中立性を維持して欲しいということがあります。私自身も5、6年前に和解の実態調査を東大の先生と一緒にやったのですが、当事者の原告本人ですが、満足度が上がる一番の理由は公平でした。公平であれば裁判所は議論をする。公平であれば満足度は高まります。この辺も無視出来ないと思います」


鈴木
「非常に生々しい数字も含めて西口先生ありがとうございました。ただ、900件という数がもちろん増えていますがいろんな無念な思いを持った患者、家族の数を件数化した時に多いと見るか少ないと見るか。泣き寝入りとは言いませんが、本当はいろんな思いがありながら、それをどこにもぶつけられずに抱えたまま来る患者、家族がそのような900件という桁の数ではないのではないかと思います。その中で、900件全部を裁判所というわけにはいかないと思います。もっと社会全体として多様な選択肢が必要という議論が必要ではないかと思いました。
それでは足立先生よろしくお願いします」


足立
「鈴木寛先生の質問が果たして誰がチェックするかということでした。その前に司法の裁判の前の公平性の話が先程出ましたのでそちらを先に申し上げます。2000年位に消化外科学会の中で、司法と外科医の接点を探るというシンポジウムがありました。裁判所ではそれだけの思いを持って訴訟までして何とかしたいという被害者の思いを遂げさせたい。誰に責任があるか決めなければいけない、ということを言ってました。これで公平性が保たれるかという話をしたいと思います。

誰がチェックするかという話ですが、二つ意味があると思います。原因究明、調査に関して誰がチェックするか。それは専門家がやれば良いという話になります。モノによって違うと思います。研究所が必要であったり大学が必要であったり、事案によって変わると私は思います。

では、システム全体のチェックを誰がするのかということですが、これは相談、届け出された所です。私のイメージはがん対策基本法の話が出ていましたが、二次医療圏内に相談センターを286作り、そこが窓口になる。そこが進捗状況をしっかりチェックする、そうすればよいと私は思います。質問に対しては以上です。

もう少し話します。河北先生が無過失補償の話をされました。これは、10月9日に検討の方向性を厚生労働省の方から出されています。この件と先程の第二次思案をまとめてどうして正面からぶつかる考え方の相違が出てくるのかじっくり考えました。そこで行き当たった考えが無過失補償制度を例に取りますとスウェーデン、ニュージーランドでの例を参考にしていると思います。どのような対象かという条件ですが、不適切な医療よって患者が受けた避けられた筈の損害を対象としています。それで、訴訟を減らすことが目的です。絶対必要なことが支払いのための機構、原因を究明する機構、渉務(?)をする機構が絶対必要となります。訴訟を避けるためにある。誰に責任があるのか、どこがミスをしたのか。しかし、個人の責任にしないで補償するという考え方です。そこが、元々あった全ての制度はそうだったのですが、そこを捉えて原因究明の機関と無過失補償制度をそのまま作ってしまえという勘違いでスタートしているのではないかと思います。なぜ、勘違いしていると言えば、過失の有無に関わらず補償すると言うのです。過失があれば医師、看護士、医療機関の医療提供者に求償する。過失があれば求償は増えます。それを原資に訴訟出来ます。しかし、訴訟を減らすことは出来ません。逆に訴訟が増えていく心配の方が私達の無過失補償の枠組みから感じます。

何が原因かと言いますと、日本人は医療事故と医療過誤の区別がついていません。上先生が発表したことは医療事故が何なのかからスタートしています。鈴木寛先生が言われたことは、モノ言わぬサイレントマジョリティの思いをどこで受け止めるかという話です。佐々木さんのことがありましたが、訴訟出来た、裁判まで持っていけたということは、ほんの一部です。しかし、分からない、疑問を持っているという方は大多数います。その人達の思いをどのように受け止めるかということがこの考え方です。過失の有無からスタートする。そこら辺で少しズレがあるという気がしました。

先ごろ、小松先生の論座か何かの論文でその通りだと思ったことがあります。西東京市で開かずの踏切があります。1時間中50分開きません。危険なので自動的に踏切を制御しています。その脇に人間が押しボタンで開けられる仕組みがあります。そこで、可哀相ななかなか踏切を渡れない方がいたので、押しボタンで開けてあげたら事故に遭った。罰せられた人が押しボタンを押した人なのです。これはシステム上間違っていますよね。わざわざ機械的に自動的に制御している所にわざわざ隙間を作って、その人だけが罰せられている。こういう考え方が医療事故と医療過誤の区別についていない所からスタートする。対象はサイレントマジョリティである。そういうことを強調したいと思います」


鈴木
「足立先生ありがとうございます。先程西島先生も定義はどうするのかという問題が難しいということを言ってみえました。おそらく同じ問題意識だと思います。河北先生にもコメントいただきたいと思います。その前に、今日は高久先生にお見えいただいていますので、高久先生にコメントいただいてから河北先生にお願いします」


高久史麿・日本医学会会長
「今、亀田先生が言われましたが、私も大学の病院にいるのですが、病院とよく話をするのですが、非常にマイナーな手術が殺到してきて外科が本当にパンク状態になってきて、かえって重要な手術が遅れるということで危機感を持っています。

それから、先程厚生労働省の事故調査の報告について11月2日までにコメントを日本医学会の臨床部会の運営委員会というものをやっていまして、初めの原案は大変厳しいものでしたが、運営委員に虎の門病院の山口徹病院長がみえて、是非厚生労働省の室長の話も聞いてもらいたいということを聞きまして、何となく何かをしたという非常にトーンダウンをしました。

一つは19学会が調査機関を作れというコメントを出しています。その辺は評価出来ます。一番問題になったことは、診療関連死の定義を皆様がハッキリ明確に、しかも医療従事者が納得出来る定義を樹立してもらいたいということが一つのポイントだと思いました。

ところが大学に戻りましたら、私共の大学に今年から来た医療事故に詳しく、元々東京電力の電力関係の事故から専門にやっている河野龍太郎准教授が、理由はハッキリ言いませんでしたが、厚生労働省の第二次思案を見て国際的な恥だと言っていました。いつか河野龍太郎准教授のお話を聞く機会があれば良いのではないかと思いました」


鈴木
「高久先生ありがとうございました。一応、今厚生労働省の関連死の定義はモデル事業の定義を踏襲するということになっています。事実確認なのですが。


高久
「報告書の中では今行っているモデル事業があります。その結果を見て決めるということでまだ決めていません」


鈴木
「それでは河北先生いろんな指摘、議論がありましたらよろしくお願いします」


河北
「産科医療補償制度についていくつかコメントをいただきましたので、私の考えを述べたいと思うのです。今、我々は無過失補償制度というように考えています。過失の有無の判断は我々はしません。原因究明は組織の中でやっていこうということは考えています。最終的に今の医療事故調査委員会等が動き始めた時は変わってくると思います。

それで、裁判は過失の有無を争うわけですが、最終的に産科医療で脳性麻痺の子供が産まれた時に先程1億円という話が出ましたが、その位の賠償責任が決定されるということは、それ程率は高くありません。ですので、今までそこでは過失が認められなかった人はそこで終わりのなってしまいます。障害を持った子供達の基本的に誰のための何のための制度かとい考えた時に脳性麻痺の子供達の生活を補償していくというための制度です。今までは過失が認められなければ、国が作っている補償制度は全く無く、そこに上乗せする補償制度だということをご理解いただきたいと思います。

金額的にはいくつか案が出て来ていますが、介護費用をカバー出来る位の金額になっていくと思います。一時金ではなく、何とか分割制度で支払していくようなものにしていきたいと思っています。それで、お金を渡してしまうと今度は訴訟が増えるのではないかという指摘がありました。確かに、その可能性が無いとは言えませんが、とりあえず全く過失が認められなかったが、CPの子供を抱えてしまった家庭に対しての補償制度を始める所に意義があると思います。

そこで、我々は自民党から示された枠の中で議論して、出来るだけ早くそれをスタートするという立場にいます」


鈴木
「河北先生ありがとうございました。では、会場の先生どうぞ」


久保隆彦・国立成育医療センター産科医長(会場から)
「去年もお話したのですが、対象をCPにしたという理由が全然分かりません。現実的に脳性麻痺という診断を作っているのは産まれてから1年から3年と時間が経ってからですよね。その時に、初めて言われても両親にとっては何年前の話でしょうかね。それをなぜ対象にするのか分かりません。もちろん無いにこしたことはありませんが、そういう可能性がある場合には最初から判定せずにお金を出すということにしたらどうか。実際、軽症から重症と幅は広い。重症を対象にしていると言われましたが、神経小児の専門家にも重症か軽症か診断がつかないと言っています。それを対象にしようとしています。それなら、最初から脳性麻痺の可能性がある最初のグレーゾーンの状態から産まれたらすぐお金を払い始めたら良いのではないか。そういう制度でないといけないのではないか。今の話でしたら、決まってからお金どうこうの話になるなら、ナンセンスそのものだと思います。それについていかがでしょうか?」


河北
「それは我々が判断することではありません。なぜなら、自民党が示した枠組みの中にそのように書かれているからです。これはもう仕方ないのです。我々は枠組みの中でやるのです。そこは私がお答えすることではありません。

ただ、診断は6ヶ月から5歳位までにしたいという考えはあります。ですので、そこをどうするかは、これからの運営の中で決めていきたいのですが、対象を絞ったということはおそらく自民党からの意見です」


久保
「最初は新生児の中でやるなら、死亡例を見るというのはどうでしょうか?年間1,200から1,500人位の死亡例がいるわけですから、その方がはるかに現実的だと思います。脳性小児麻痺に関しては、もっと別の制度で考えていくべきだと思います。実際に亡くなって先程1億円という値段の話がありましたが、そうでなければ1千万円、2千万円という話もナンセンスだし、介抱するならもっと変えていかなければならないわけです。最初に私が聞いた話では、脳性小児麻痺の数と、用意した予算の数が合ったから1千万円、2千万円という値段にしたというような訳が分からない説明を聞いて、私はすごくナンセンスだと思います」


西島
「それは全くありません。脳性小児麻痺の対象になる人がどの位いるかという数は明かではありませんでした。500名という数字もありましたし、例えば沖縄の事例で見ると1,000名以上になるというお話もありました。ですので、最初から予算ありきで考えたわけではありません。

もう一つこの制度そのものは、日本医師会から最初に提案してきたのです。それで、これを検討しましょうということでやりました。実は、医学会等々にも様々なご意見を伺いながら実はこの部分に関しては範囲が出て来ました。自民党の国会議員は専門家ではありませんので、自民党の国会議員が決めるわけではありません。様々な学会のご意見を伺いながらまずはそこからスタートしようということです。河北先生はご存知だと思いますが、準備委員会の中で様々のご意見が実は出ています。例えば、なぜ脳性麻痺だけなのか。もっと、様々な難病があるではないか。など、様々なご意見が出ています。ですので、まずここからスタートしてということで、今準備委員会の中でおそらく進んでいると思います」


鈴木
「では、和田先生」


和田仁孝・早稲田大学法科大学院教授
「今、日医の話が出る前、福岡県の医師会でお世話になっていました。実は、その当時九州大学にいて委員の一人で一緒に作ったのですが、その時には全く先天的なものも含めて救済するというアイデアでした。ただ、結局どこで線を引くかという問題があります。内外とのバランスの問題があります。そうすると、今のような形で線を引くのか死亡事例を別の形を含めて拡充していくのか、その財源の手当はどうするのか。このバランスという課題をこれから考えていかないといけないと思います。

二点目ですが、訴訟に行ってしまうのではないかという可能性についてですが、一つは、訴訟した方が1億円貰えるのではという可能性がある、こちらだと1千万円、2千万円しかもらえないという問題があるということも一つは問題としてあると思います。今日佐々木さんのお話にもあったように、妊婦にとってお金の問題ではないと思います。そうだとすると、単に脳性麻痺になりましたからいくらお金出しますという形だけでは納得出来ず、もっと明らかにしていくのだという方が普通だと思います。そちらの方がお金の観点よりもっと大きな問題だと思います」


久保
「全く賛成です。私も訴訟より絶対ADRの方が良いと思っています。最初はADRから行くべきだと思います」


鈴木「はい、では足立先生、対象の話をどのようなご見解でされていますか?」


足立
「先程少し言いましたが、元々は過失があると思われて避けられた筈の障害という所からスタートしています。そういう所には様々な投薬ミス、検査ミスなど全て入っています。そこがまずあります。今は過失を問わず、まずは補償からスタートするのだという考え方に立てば、極めて限定的なものからスタートするしかないのではないかということです。そこの考え方です。過失が多いというのも、訴訟にしないためにこの制度をスタートしたというのが元々の出足です。そういう意味合いが強いのです。

そうではなく、失敗が有りうるのだという観点に立った場合にはこの制度そのものがもう少し変わってくるのではないかと思います。もちろん医療メディエーションから始まって、先程のサイレントマジョリティの話ですが、これを行ったら、話し合い、説明の中からスタートしないと解決しないと思います」


鈴木
「佐々木さん」


佐々木孝子(医療過誤患者遺族)
「裁判と言いましても、裁判をするのは簡単です。それでどうなるかは弁護士の力量によるかもしれませんが、弁護士も裁判官も医師ではありません。ですので、そこに医療過誤を持ってきても裁く時には専門の医療者が必要です。ですので、私達の時はそれは分からなかったと医師が認めたわけです。それは今なら分かると言いました。それでは過失を認めますねということで認められたわけです。そこで明白な事例でしたから裁判長も過失を認めたということで判決が決まりました。

しかし、被告が控訴したので二審に入りました。なぜなら、鑑定が出ていなかったのです。鑑定無しで被告が過失を認めたので一審の判決が出たのです。裁判長は医師が認めているので鑑定はいらないということで勝訴しました。しかし、被告が控訴したので私は本人訴訟でしたから、控訴審で裁判長、裁判官、判事、被告の弁護士が出て来て部屋で話し合いました。その時の裁判官の話が『私も医師ではないし、分かりません』と言っていました。弁護士も『医師ではないから書きようがない』と言いました。それでものすごくもめて、何回もFAXを送って来て鑑定内容が分からないと言いました。それで、裁判所から鑑定を頼みました。それで、一審通りだという簡単な鑑定が出て来たわけです。医療者ではないということで本当に難しいという判決でした。

それと、患者は本当に裁判するのは簡単ですが、とにかく医療者から話が聞きたいということが一番にあります。そして、医療者から話が聞きたいということになると本当にそういうことは聞いてもらえません。そうなると、私達の方にも話を聞いて下さいという電話が掛かってきます。それで一時間位話されます。北海道からでも九州からでも。それで相槌をされますと、本当に話を聞くだけでスッとしました。と、納得されるのです。ですので、裁判に行く前に話し合うというADRが本当に必要だと私は思います」


鈴木
「佐々木さんありがとうございます。土屋先生どうぞ」


土屋了介・国立がんセンター中央病院院長(会場から)
「国立がんセンターの土屋です。先程、西島先生のお話で私が少し引っかかったことは、原因究明の調査をして、その結果が出た所から家族への対応が始まるという表現がありましたが、そこの段階ではもうすでに家族の不満が爆発しそうな所になっていると思います。

今佐々木さんが言われたその前のメディエーターが大変大事だと思います。副院長を4年間やって、毎月のようにそのようなことをやって、裁判を4つ抱えるということをやっていますと、問題が発生した段階から真面目に院内での調査機関をやっている我々でも調査に3ヶ月位掛かります。その間に副院長で調査委員長もやりながらメディエーター的なこともやる。メディエーター的な所が手薄になるからその所が家族は不満なのです。その間に誰が担当して家族の相手をするのかがものすごく大切です。そうすると、調査結果が出た時にそうでしたかということで終わってしまいます。そこが上手くいかないと調査結果が出ようが出まいがニッチもサッチもいかない。その手前のメディエーターの所がぜひ上手く機能して欲しいということが現場の切実な願いです」


西島
「先程申し上げましたが、ADRと訴訟は区分けして考えて下さい。私は医療事故の担当を6年やりました。まずはそのような事故が発生した時には必ず御家族との話し合いからスタートしていきます。2、3ヶ月位何回もお会いしながらご理解を求めました。もちろん医師に過失があれば身を医師が切る、そこが一番大切です。先程申し上げました原因究明が不明な場合があります。その場合このシステムを使わないことには次のステップに進みません。そういう意味では原因究明のある程度の報告書が出た段階で本格的なADRがスタートするのではないかと私は申し上げました。その間放っとくということではありません。

一番大切なことは、先程から謝罪の話も出ていますが私は医療事故を担当した時、医師の皆様に言いましたのは、まず謝りなさいということです。家族のご期待に応えられなかったことに対して謝りなさいということが私の考え方です。

それが本当に医師の過失でそのようになったのかどうかは別の問題です。ですので、そのためのシステム作りは必要だと先程申し上げましたので言葉足らずで誤解を生んだかもしれません」


土屋
「対応の仕方は大きな病院は徹底していると思います。その上に佐々木さんの気持ちを考えるとさらに足りない部分が病院にあると思います。それが、今のメディエーターの講習会に沢山出席することで現状が出ていると思います。どちらが先かという問題ですが、私はメディエーターの方を先にやって欲しいということが現場の大きな声だと思います」


鈴木
「佐藤先生どうぞ」


佐藤章・福島県立医大教授
「ADR、無過失補償に関しても先生方がすごく努力なさって、これだけ盛り上げてくれて、前に進みつつあるということは私にとって非常に喜ばしいことです。

根本的に私が申し上げたいことは医事紛争で訴訟になった場合、民事と刑事が全く違うのだということです。今私自身が抱えている問題については刑事問題なのです。そうなると根本的に私がお願いしたいことは、業務上過失致死が医療事故に適用されないような方向に持っていかない限り、医師は皆不安になります。医療の萎縮、崩壊ということは皆どのように思っているかというと、刑事問題になって逮捕されると思っています。それなら我々はやらないということになります。患者さんは一生懸命努力したが、不幸にして亡くなったということに関しては民事で何とかしてくれないかということであります。刑事罰に対する恐怖があり、それなら我々は何もしたくないということになってしまっている現状を変えるために、先進国でやっている医療事故に対して刑事罰が適用されず、業務上過失致死ということはありません。そこを、自動車の交通事故とは違うという発想が一番最初にあったら、その診療行為に関連した原因究明、 ADRそれから無過失補償というような順序に行くべきであって今見ていると無過失補償の方から行っています。結局、刑事側としては捕まえる。司法としては今の法律が変わらない限り、あなたがこのようなことをやっているのだと言って、少しも我々の不安を解消してくれる所まで行っていないということを私は思います。そこを根本的に考えていただきたいと思います。それが我々臨床医の切実な考えです。患者さんや被害者の人達は、絶対に真相究明して欲しくて、隠すな、しっかりやってくれ、同じことを二度とするなということが遺族の願いだというように言っているわけです。これを一人の責任に負わせたら、同じことを繰り返します。やはり、なぜそうなのかをしっかり明らかにさせるためには、一人の個人に責任を刑事罰で負わせるということが、私は現状を良くしないと思いますので是非来賓の先生方はそのような視点に立ってやっていただきたいと思います」


西島
「簡単に申し上げますと、そもそも医師法21条の厚生労働省の解釈は、殺人もしくは虐待で患者が運び込まれて来た時は、刑事事件に発展するわけですので、是非24時間以内に警察に届け出て下さいという協力要請事項でした。

それが平成6年に日本法医学会が一部の方ですがガイドラインを出されて、診療中の死亡事故も異状死体とされました。ここから考え方が変わっていきました。平成12年に国立大学附属病院長会議がありまして、医療事故もしくは医療事故の疑いがある場合には速やかに警察に届け出ることとし、その下に医師法21条と書いてありました。ところが、これは解釈の大きな変更ですので、厚生労働省、医政局の意思でしっかり検討してやったのかというと、医政局は関わっていません。ですので、厚生労働省の解釈は変わっていません。変わっていませんが、都立広尾病院の事件が起きまして、裁判になり憲法論議までやったのですが、最高裁で届け出ることについては当然やるという判例が出ました。そこから考え方が完全に変わってしまいまして、24時間以内に届け出なければ逮捕という話が出て来ました。

福島県の大野病院事件は、事故が起きて病院で検討会を開いて再発防止のための報告書を作りました。それを警察が見て医療事故ではないかと言われ、なぜ24時間以内に届け出なかったのかということで医師法21条で逮捕されました。こういうことが起きましたので、今の流れがあります。それだけは御理解いただきたいと思います」


鈴木
「和田先生どうぞ」


和田
「今、制度の切り分けの所から議論があって、非常に有意義なご議論だと思うのですが、同じことを被害者の患者さんの思いから見ていく必要があると思います。先程、ADRのような対話の場という場面と、原因究明、刑事の問題は切り離して考えると言われました。

しかし、被害者の気持ちから見ると、それは全て繋がっています。例えば、なぜ刑事の方に行くのか。最初から刑事の追求、個人の責任を追求したいと思っていない。なぜそうなるかというと、原因究明、真相究明がなされていないという理由があります。そこで、真相究明がどのような仮説で出来ているかと申しますと、現在のシステムとして考えた場合、医療事故調査委員会は様々な機能を抱え込もうとしすぎているのではないかと思います。

例えば、21条の問題を今度医療事故調査委員会に報告する際、重過失なのかどうか線引きをする要素は、法律家が関わらなければいけないし、医療事故調査委員会の手続きが非常に重くなります。そこで、重過失ということになれば警察へ行く。しかし、その時には医療機関から届け出があって重過失かどうか判断して刑事に行って、司法解剖になります。患者さんがチェックする場が全くありません。実際現時点でも医師法21条で医療機関が届け出たことによって、そのことで患者さんが傷つく。真相究明は、解剖をして客観的な結果を見いだすということより、もっと患者さんの思いは広いと思います。日本的な発想かもしれませんが、遺体というものは自体が亡くなった方そのものだし、解剖に対して非常に抵抗があったりします。

そういう時に重過失かどうかの判断は警察もしくは裁判所がやればよくて、発動のイニシアティブを取るのは患者さんの思いであって、患者さんに取ってもらいたい。ですので、真相究明も患者さんが初発点になる。初発点の所でしっかりケアを対話のような形でADRしながら動かしてもらいた。そこで、常に患者さんをポイントにしておくという形にすればそこでしっかりした手当がされれば、患者さんは何も無理矢理刑事の方の告訴するとかということにはならないのではないかと思います。

そういう面ではソフトウェア的な面があるかもしれませんが、こういう発想が大事ではないかと思います。切り分けではダメではないかと思います」


鈴木
「足立先生どうぞ」


足立
「簡単に申し上げますと、共有する考えとして説明が大事である。そして、先程謝り方のことまでありました。それなら、なぜ行政権限を持っている厚生労働省が届け出先になるのか。そしたら、正直な話し合いなんか出来ません。根本的な誤りはそちらにあると思います」


鈴木
「豊田さん、どうぞ」


豊田郁子・新葛飾病院セーフティマネジャー
「豊田と申します。私は、医療事故の被害者遺族で、なおかつ病院内で院内メディエーションを実施しています。厚生労働省の検討会のメンバーです。

医師が萎縮してしまう気持ちになることは理解出来るんですが、先程から院内メディエーションを中に取り込みたいという意見が沢山ありました。それは、病院がしっかり向き合う姿勢をしてこなかったことを認めることと同じだと思います。怖いということもあるかもしれませんが、病院が患者や遺族の気持ちに対して病院側がシャットアウトしてしまっている現状があります。そのことから仕方なく、皆刑事告訴や被害届を提出しているという現状があります。

私も刑事で問いたくなかったのですが、1年間どうにもならなくて仕方なく被害届を提出しました。結果的に不起訴のなりましたからその医師は全く行政処分も無く、依願退職で何の処分も受けていません。しかし、実際そのような例もあります。やはり、医療機関の中で自浄作用を行ってこなかったことに対して、考えていかなければ、いくら様々な法案を考えても国民や患者さん達は理解出来ないと思います。

実際に院内メディエーションを私が実践していることで、病院の中での反省点、改善点が本当に見えてきます。その向き合う姿勢を見ていただいたことで患者さん達が医療者に対してすごく思いやりの言葉が出てきます。感動することが沢山病院の中で実際起きています。ですので、佐々木さんが先程から言っている法的な過失の有無だけを言っているわけではないと思います。院内メディエーションすることで法的な部分だけではなく医療者が変わらないといけない所、反省しないといけない所を見ていただいて患者さん達は最終的には医療者を応援する日が来ると思います。

私も医療界の中に飛び込んだことで、現状の大変さを思い知らされていますから、心から心ある医療者に対しては応援したいと思っています。しかし、自分達は大変だとばかり言っていたら応援する元気が無くなってしまうのです。そこを分かっていただきたいです。

ですので、今日こちらの協議会の方で新しく考えられているものを読ませていただいて賛同する部分はかなりありますが、中には遺族がこれはと思う部分が正直あります。それは、遺族の気持ちを本当に聞いているのでしょうかという気持ちです。ですので、今現在これを出されるのでしたら、患者支援法案という名前ではない方が良いのではないかと思います。どうして、医療者の皆様が議論している所で医療者支援法案という名前が入らないのかと思います。私は、別に批判だけをしているのではありません。一緒にやるためには自分達が大変だということだけではなく院内で行うことを皆で協力しましょうということです。是非私にも協力させて下さい。仲間に入れて下さい。患者の声を中に入れて下さい。それが本当の声なき声だと思います。よろしくお願いします」


鈴木
「ありがとうございます。是非ご一緒にワーキンググループの方に入っていただいてもっと良い案を出せたらと思います。それから、ご発言は医療者の方が続きましたがそれ以外の様々な方が聞いていますので是非更に磨いていけたらと言っていただきたいと思います。

 だいぶ時間が超過しましたが、元々時間内で決着の着く問題ではありませんが今日をきっかけに更に今のような提言を含めて良いディスカッションが行っていければと思います」

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