ワクチンは本当のところどれくらい作れるの?

投稿者: | 投稿日時: 2009年09月28日 00:54

新型インフルエンザのワクチン確保について、聞き捨てならない「?」な話を耳にしました。というのは先週末、こんな報道があったのですが・・・。


●新型インフルエンザ:ワクチン7700万人分確保へ 総額1400億円
(毎日新聞 2009年9月26日)


読んでみると、確かにこの中の一節に、よくわからない部分があります。確保できるワクチンの量に関してなのですが・・・。

この記事によると、

【政府は、新型インフルエンザのワクチンを今年度内に国産と輸入を合わせて約7700万人分確保する方針を固めた。(中略)約7700万人分のうち、約5000万人分は輸入ワクチンで、残る約2700万人分を国産で賄う。厚生労働省は、医療従事者や妊婦など優先的にワクチンを接種する対象者について、10月下旬~来年3月に5400万人分を確保する計画だが、その他の予防接種希望者にも対応できるようにする】

とのこと。


しかし、つい数週間前の報道にはこういうのもありました。

●ワクチン、来年3月までで1800万人分
(日テレNEWS24 2009年9月1日)

そこでは、

【新型インフルエンザのワクチンについて、国内で製造できる分は今年12月までに1300万から1700万人分とされていたが、それを大幅に下回り、来年3月まで製造を続けても約1800万人分にとどまる見通し】

としています。


そうなのです。9月始めの報道では、「国産でまかなえるワクチンの量は、来年3月までに多くて1800万人」とされているのに、数日前の報道では「年度内(=3月まで)に2700万人分を国産で賄う」としています。


9月頭で下方修正された数字が今回また見直された、と考えるしかなさそうですが、その理由は示されていません。一人当たりの接種回数や量を調整することで、接種可能な人数を調整しているということでしょうか。しかし、幼児などは通常の季節性インフルエンザでさえ2回接種となっていますし、成人でも、1回あたりの接種量をどれだけ減らしてよいのか、どこまで信用できる試験・研究結果にもとづき数字を修正しているか、よくわからず(知っている方ご教示ください!)、なんだか不安です。


ちなみにワクチンの製造能力は、確実に見込みを下回っているようです。というのもWHOでさえ、このエントリーの冒頭に紹介した報道の前日に、次のような発表を行っているのです。

●新型インフルワクチン生産能力を6割に下方修正 WHO
(朝日新聞 2009年9月25日)

一部引用すると、

【新型インフルエンザワクチンの世界の生産能力は、当初想定した年間50億回分を大幅に下回る30億回分にとどまる見通しを明らかにした。生産能力は26メーカーの回答に基づく。5月の調査後、ワクチンのもとになるウイルス株の増殖力が予想以下だったことが判明】

とのこと。


この記事から考えれば、やはり今回、数字が1800万人分⇒2700万人分となったのは、国産ワクチンの製造能力が上がったためとは到底考えにくいですよね。


幸い、我が息子の保育園ではまだ患者は出ていないようです。しかし出れば絶対にもらってくるに違いありません。ワクチンが間に合うのかどうか、かなり疑問、というか、かなり覚悟しています。妊婦だからと過剰に恐れているのかもしれませんし、第2優先群に入っているのだからいいじゃないかと思われるかもしれませんが、そういうことだけでなく、こんなふうに国の言っていることや考えていることがよくわからないと、いらぬ不安を持ってしまうし、何をどこまで信じていいのやら、と思ってしまうのです・・・。

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コメント

厚生労働省の資料(http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/dl/infu090828-01.pdf)や田代先生の資料(http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/dl/infu090828-02.pdf)から考えると、ワクチン用のウイルス株の増殖能力の低下がさほどでもなかったということなのではないでしょうか?

時事通信2009/09/18-21:51配信記事(下記)などによれば、厚労省の思惑は下記の通りと推察される。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200909/2009091801030
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厚労省は、2回接種しなければ十分な免疫が得られないとの前提で、夏から準備と計画を進めていた。

年内に用意できる国内産ワクチンは最大約1800万人分と予測されている。だが、1回接種になればほぼ倍の人数分が確保できることになる。

全て1回接種で1800万人の2倍なら3600万人分だが、アメリカなどでは10未満には2回接種でないと十分な免疫が得られないというデータも出ているから、一部対象者は2回接種とする。

そうしたことから、1800万人×2回分の国産ワクチンの全生産量、のべ3600万回の接種分を、次のように割り当てれば、合計人数は2700万人になる。

計画通り2回接種の対象者= 900万人(延べ1800万接種分のワクチン)
1回だけの接種で済ます者=1800万人(延べ1800万接種分のワクチン)
国産ワクチン接種者の合計=2700万人(延べ3600万接種分のワクチン)

単純な算数です。

竹庵さま、法務行の末席さま、ご教示ありがとうございます。接種開始が10月中旬に早まると言う話もありますね。ただし輸入ワクチンは無過失補償等の問題でもう少し時間がかかりそうですが、どうなんでしょうか・・・。

それにしても夏休みが明けて、患者の増えるスピードが速まっているようですし(http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20090928AT1G2801H28092009.html)、中旬にワクチンを打って下旬に有効な免疫を獲得できる、というスケジュールで間に合うか、個人的な感覚としてはかなり怪しい気もしています・・・。

結局のところ、バイアルを大きくしてムダを減らすということのようですね。
ただ、その場合だと個別接種でなく集団接種の方法を取らないとかえってムダが増えるように思います。

1バイアルで複数回の接種を行う場合チメロサール等の認可消毒剤の含有が必須となるでしょうね。

竹庵さま、前々期高齢者さま、

なるほど。バイアルを大きくすると、実はいろいろ計算外の部分が出てきそうですね。かえってむだが多くなれば、ワクチンがきちんと行き渡るか、なんらかのハプニングで駄目になったりして結果的に足りなくなってくる、なんてこともあるでしょうか。また、消毒という点でも、要は医療機関の管理次第ですから、ちょっと不安があります。

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