第1回不活化ポリオワクチン検討会 傍聴記 その5

投稿者: 堀米香奈子 | 投稿日時: 2011年09月09日 10:47

8月31日に開催された「不活化ポリオワクチンの円滑な導入に関する検討会」の傍聴記⑤、生後8ヶ月のときにワクチンポリオで麻痺を発症し、現在はポスト・ポリオ症候群(PPS)という厳しい現実に直面されている丸橋達也氏(ポリオの会)の話です。お母様の当時の記録とアルバムも紹介されました。悔しさ、憤り、やるせなさ、そんな気持ちを抱えつつ、乗り越えつつ、今日まで過ごしてきて、そしてそうした感情を抑えながらお話される車椅子姿の丸橋氏が印象的でした。


丸橋氏は昭和40年生まれで、生後7ヶ月で経口生ワクチン(OPV)を接種、1ヵ月後にワクチン関連麻痺(VAPP)を発症して緊急入院されました。それから2ヶ月後にリハビリを開始した当時の記録があります。


●小児療育病院 病歴カルテ記載事項
生後8カ月の時、発熱(38.2℃位)が3日間続き解熱したら左下肢に麻痺が残った。ひきつけはなかった。現在、つかまり立ちとつたえ歩きが数歩出来るのみで身体の移動は膝をついてはっている知能は普通 (発熱の16日前にポリオの生ワクチンを飲んだ)


以来、数十年間、丸橋氏は補装具をつけて生活してきました。その間、病気で医者に説明するたびに、「ワクチンでポリオになった!?」と驚かれてきたそうです。丸橋氏によれば、「ほとんどの医者がポリオの事知りません、もう終わった病気だと認識していました、『その被害は10万人に1人くらい出るとても珍しい病気なんだよ気の毒に』と言いました。私はその事が当たり前でつい数年前まで生きてきました」


それが数年前、更なる試練に直面して認識が変わったといいます。


「40歳を過ぎた頃から腰痛がひどくなり、筋力の低下など体調に今までにない変化が現れ、2005年4月、自宅にて転倒、右腓骨骨折をしてしまい、利き足の骨折の為そのまま入院、その1年後には 突然頭の先から雷が落ちた様な痛みに襲われ動けない状態となりました、あちこちの病院を回りましたが原因は不明、痛み止めの薬を処方されるだけのものでした」


典型的なPPSの症状でしたが、しかし、PPSを知ったのはポリオの会に入会してからのこと。「どこの医者に行ってもわからなかった事がわかった瞬間でした」


丸橋氏は、ワクチンポリオそのものの実態についても、それまで何一つ知らずに生きてきたのだといいます。


「会員の方の多くは自然株からの感染ポリオで私と違う事を初めて知りました」
「私は聞きました、ポリオを防ぐはずのワクチンでなぜポリオになるんですか?その答えは驚くものでした!それが今も続いてるのよ、と小山さんは悔しそうに話してくれました。しかもそうならないワクチン不活化ワクチンがあるのだと。単純に、ではなぜそれを使わないんですか?との疑問から、今、私はここに来ています」


 丸橋氏が憂うのは、自らの境遇だけではありません。


「私には3人の子供がいます、長男は結婚していて子供もいます。ポリオの会の会員の中には長男と同じ年齢の子、孫と同じ年齢の子がいます。先日は厚生労働省へ、その子たちと一緒に不活化ワクチンへの切り替えを求める署名を提出に行きました。その時写真です。
彼らは、私にとってはまさに息子であり孫と同じなんです。なぜもっと早くに、私がこのことに気付き、行動出来なかったのか、悔しい思いでいっぱいなのです。この子達もこの先、ポリオという病気と一生戦うのです。それがどれだけ辛い事か私はわかります。私の母親が私がPPSで苦しんでいる時に、ごめんねと言って泣くんです。親も一生戦うんです。親は一生責任背負って生きて行くのです」


このあたりまでくるともう、私にはまさに他人事ではありませんでした。自分のことを言われている気がして、胸が締め付けられました。


そして丸橋氏は、自分の幼少期のアルバムに彼の母親が添えた文章を紹介していきました。

「私が入院したのは、5月6日。前日は5月5日で、私の初節句のお祝いでした。母が書いています。『生まれて初めてのお節句です。楽しい1日です。翌日、思いもよらぬ運命がまっていることも知らずに・・・。今になって思えば、このとき顔が少し元気がないようにも思えます』」

「それから次は、入院して2ヶ月ほどしたときの写真。私はとてもにこやかな表情をしています。『2ヶ月間の入院をさせました。その間、悲しい思いもしましたが、看護婦さんたちがよくしてくれて、病院では人気者でした。達也自身の記憶には残らないことですが、父親、母親にとっては一生忘れることのできない悲しい時期でした』と記載されています」


本当に胸が痛みます。短く淡々とつづられていますが、子供をポリオにしてしまった、体に一生残る傷を負わせてしまった、という親としての無念さがにじむ、つらく、そして生々しい文章でした。


「親が親は我が子を守るためには命をかけて守るのが当たり前だと思います。今、生ワク
チンは危険だと言う情報だけが一人歩きしている状況だと思います、個人の責任で不
活化のワクチンを接種するかたが増えていると聞いています。これは緊急事態だと思いませんか?この検討会が私たちのこれ以上被害者を出したくないと言う思いのもと開催され
ているものだと信じています」


写真を含め、丸橋氏の発表はポリオの会のホームページにアップされています。


さて、小山氏、丸橋氏の両発表は、私がこれまで書いてきたように“丁寧すぎる”検討会の、丁寧すぎる部分の最たるものだったのかもしれません。しかし、統計的な、疫学的なデータの話とは違って、プリントの資料で数字を確認するだけでは絶対に伝わらない、しかし、これからのワクチン行政のあり方を考える人たちが絶対に感じ取って共有しておくべきものが、そこにはあったと実感しています。


つづく

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