リン酸探検隊こぼれ話 ~「3分の1ルール」と食品ロスと賞味期限

投稿者: 堀米香奈子 | 投稿日時: 2016年12月01日 13:35

ロハス・メディカル2016年11月号の「リン酸探検隊」では、清涼飲料水を調査し、リン酸がしばしば「酸味料」として使用されていることをお伝えしました。酸度を高めて保存性を増す効果が得られますが、もともと酸性がより強いのはずの炭酸飲料にも、なぜかたいてい入っています。疑問を追求するうちに、業界の「3分の1ルール」と食品ロス、そして賞味期限の問題と、課題が芋づる式に見えてきました。

きっかけは酸味料

「酸味料」としてのリン酸使用は、正直、2つの点で私にとっても衝撃的でした。


理由の一つは、改めて店頭で様々な清涼飲料水を手に取ってみると、「酸味料」を使用していない清涼飲料が極めて少なかったからです。着色料の不使用などを謳っていても、酸味料と香料が入っていない清涼飲料水を探すのは非常に困難でした(低カロリー版でないスポーツ飲料の一部、エネルギー飲料など。ちなみに興味深かったのは、サントリーの「オランジーナ」オリジナルフレーバーと、同じくオランジーナの「ホリデーミックス ウィズベリー」には酸味料が入っていないのに、ほかのフレーバーには酸味料が入っていることです。ただし、酸味料の正体がいつもリン酸とは限りません)。


もう一つは、「酸味を添加する」という名目の下、結果的に保存性を高める効果を狙っているという別の目的があることを、それまで考えてみたこともなかったからです。加工食品はなるべく原材料等をラベルで確認してから買うようにしていましたが、酸味料に関しては表記を目にしてもスルーしていました。純粋に酸味を添加する必要があるのだろう、ぐらいに受け流していたのです。もちろん酸味を添加し、酸度を上げることで、結果として保存性も得られるわけですから、「酸味料」との名目に問題はありません。何かを誤魔化したり消費者を欺いたりしているとは言えないのですが、それでも私は正直、「してやられた」と勝手に思ってしまいました。


次に考えたことは、炭酸飲料や果汁入り飲料、スポーツ飲料など、材料に元々酸味のあるはずの飲み物にまで、なぜあえて酸味料を添加してあるのだろう、ということでした。清涼飲料水はそもそも「水に甘味と酸味と香りをつけたもの」ぐらいに理解しています。ですから、これまで単純に「酸味が足りないんだろうな」と思ってきたのですが、改めて清涼飲料水をいくつか飲んでみても、甘味の方が明らかに勝っています。酸味はあくまで甘味を引き立たせ、さわやかな飲み口をもたらす程度。飲んだことのある人なら分かるかと思いますが、無糖の炭酸水はなかなかの酸味ですし、水に果汁を絞っただけのものを飲むと甘味はほとんど感じられず、酸味ばかりでおいしくありません。そこにさらに酸味を強めれば、相当甘味を強くしなければならなくなるのは容易に想像がつきます。そこまでして酸味料をあえて加える必要性が分かりませんでした。


そこに聞きつけたのが、保存性を高めるために添加されている、という事情。「リン酸探検隊」の記事にも書きましたが、元某大手清涼飲料メーカー社員の方に教わったものです。「ダイエット志向の強まりで、清涼飲料水も低カロリーや糖質ゼロを実現するために、糖類の代わりに甘味料を多く使用したものが出回っている。糖による保存性維持(雑菌繁殖抑制)が期待できなくなった分、酸度を高めて保存性を確保しなければいけない。その点、リン酸は無色無臭で安価なので、とても使いやすい」という話でした。


誌面に限りがあったので言及しませんでしたが、特にペットボトルはその性質上、瓶や缶と違って炭酸が抜けやすいのです。キャップと本体の隙間から漏れるのではありません。PET樹脂には、目に見えない小さな穴が無数に空いていて、水の分子は大きくて通り抜けられないのですが、炭酸ガスはごく微量ずつ、徐々に逃げて行ってしまうのです。
http://www.m-kagaku.co.jp/grproduct/company/mcc/cmd/notification/plastics_05.pdf


「3分の1ルール」って何?

とはいえ、ペットボトルでも炭酸による酸度が2カ月は維持されるとのこと。それでは足りない、と言うことでしょうか? でも、メーカーの倉庫にペットボトル飲料が2カ月以上、ホコリを被るまで山積みになっている画は浮かんできませんし、そんなに回転の悪い商品が返品もされずに数カ月、小売店の在庫として置かれたままにされるはずもありません。消費者側としても、1本買えばたいていすぐ飲んでしまって何カ月もとっておく状況は考えづらいですし、箱買いするとしても、それは頻繁に飲んであっという間になくなってしまうからこそ。はたまた災害や病気などの備えで買っておく、という場合は、用途からしても低糖タイプの商品は選ばないように思います。


それが、「3分の1ルール」を知って、ようやく腑に落ちました。

3分の1ルールとは、加工食品メーカー・卸・小売店間の商慣習で、メーカーからの納品期限や小売店の販売期限を、「製造日から賞味期限までの期間を概ね3等分」して設定するものです(図、こちらからお借りしました)。
2016年12月1日ブログ図.png

問題は、初めに賞味期限ありきで3等分しているというより、実際には、販売期限~賞味期限を一定期間確保することが大前提となっている点です。清涼飲料水で言えば、「賞味期限の2か月前を販売期限とするため、それを元に逆算して小売店への納品時点で賞味期限まで4カ月は必要」(前出の元某大手飲料メーカー社員)というのが長年の共通ルールで来たそうです。結果、製造日から賞味期限までは最低6カ月なければなりません。そのために、酸味料で酸度を高めているというわけです。


なお、小売店側は3分の1ルールに従って賞味期限まで一定期間(清涼飲料なら2カ月)を切った商品の多くを廃棄したり返品したり(その後はやはり廃棄でしょうか)しますから、3分の1ルール自体が、まだ食べられる食品が廃棄される、いわゆる「食品ロス」の大きな要因にもなっています。そこで国も、3分の1ルールの見直しを奨励。2013年には、「納品見直しパイロットプロジェクト」として、半年程度、飲料と賞味期限180日以上の菓子の一部の納品期限を、賞味期限の「2分の1」に延長する実験的取り組みが行われ、メーカーや小売など35社が参加しました。


その結果、小売業物流センターやメーカー段階での食品ロス削減効果が見られた一方、小売店舗での廃棄増などの問題は生じませんでした。また、飲料・菓子業界全体で取り組んだ場合の食品ロス削減効果は推計で4万トン超、事業系の食品ロスの1.0%~1.4%に相当すると見込まれました。納品期限を緩和することで、納入が容易となる在庫品等もあり、納品円滑化にも一定の効果が期待できると報告されています。
http://www.dsri.jp/forum/pdf/2014nouhinPPfin.pdf


この結果を踏まえ、プロジェクトに参加した大手スーパーやコンビニの一部は納入期限の見直しを実施。同じく加工食品メーカーも、商品の製造技術や包装技術の進歩を根拠に、商品の賞味期限延長に取り組み出しました。
http://www.pref.fukui.jp/doc/junkan/tabekiri/net-soukai_d/fil/nousuisyou.pdf


しかしながらその後、3分の1ルールそのものが撤廃された、あるいは、見直しが業界全体に拡がった、といった話は特に聞こえてきません。


“賞味”期限は過ぎても食べられます!

3分の1ルールは、食品ロスの事業者側の要因の1つとして改善が求められますが、実は食品ロスには事業者だけでなく消費者側、つまり一般家庭側も同じくらい加担しています。平成25年度推計では、事業系食品廃棄物のうち、規格外品や返品、売れ残り、食べ残しなど可食部分と考えられるのが330万トンで、家庭系の食品廃棄物のうち、食べ残しや調理時の過剰な除去、直接廃棄などの可食部分が302万トンとされています。例えば昨年の米の国内生産量は約843万トンですが、その4分の3以上にあたる重量の食料が、本来は食べられるのに廃棄されており、その半分近くが家庭から出ているのです。


食べ残しや調理時の過剰除去についても、心がけや意識変革からの行動変容が求められますが、特に気になるのは「直接廃棄」です。食べ物に手も付けずに丸ごと捨ててしまう状況など多くは考えにくく、身近にあるとすれば、食べないうちに古くなってやむを得ず捨てる、ということではないでしょうか。加工食品の場合、その判断基準となるのが、消費期限と賞味期限です。


この2つ、あまり明確に区別していない、という人はいませんか? 分かっている人には当たり前の話ですが、賞味期限と消費期限は、完全に「似て非なるもの」です。


消費期限は、品質(状態)が急速に劣化しやすい食品を、「食品衛生上、安全に食べられる期限」です。例えば、弁当や調理パン、惣菜、生菓子類、食肉、生めん類などに表示されていて、その期日を超えると腐りやすい、ということ。基本的には製品ごとに、メーカー側が独自に微生物試験や理化学試験、官能試験などを行い、知識や経験も加味して、未開封のまま定められた方法で保存した場合に、腐敗、変敗、その他劣化によって安全性が損なわれるおそれがない期限を設定しています。ですから「消費期限」を過ぎた食品は食べないようにしましょう。


他方、「賞味期限」は、比較的品質が劣化しにくい食品に、「おいしく食べることができる期限」として表示されています。例えば、スナック菓子、即席めん類、缶詰、牛乳、乳製品などです。こちらも製品ごとに、メーカー側が独自に試験や検討を行い、未開封のまま定められた方法で保存した場合に、期待されるすべての品質の保持が十分に可能であると認められる期限となっています。ですから消費期限と違って、期限を超えた場合でも、多少味などは劣るかもしれませんが、必ずしも直ちに食べられなくなるわけではありません。
http://www.caa.go.jp/foods/qa/kyoutsuu02_qa.html#a02-1


つまり、消費期限を過ぎた食品は廃棄するしかありませんが、賞味期限を過ぎた食品は、消費者が食べられるかどうか自分で判断する必要がある、ということです。実際、私も賞味期限を過ぎた食べ物でも、食品の性質や保管状態を加味して食べることはよくあります。例えば、納豆やヨーグルトなどの発酵食品は、適切に冷蔵庫で保管してあれば、発酵が進んだとしても問題なく食べられます。元々の賞味期限設定が長い缶詰や瓶詰、その他梅干しなどのいわゆる保存食も、数日の違いなど確実に誤差範囲でしかありません。


というのも、そもそも賞味期限は、試験結果など客観的な指標から品質保持が可能とされる期限に対し、念のためさらに1未満の係数(安全係数、通常は0.8以上)をかけて設定されます。要するに賞味期限は元より短めに設定してあって、数日の超過は織り込み済みということ。しかも、賞味期限までの日数が長い食品ほど、超過分も長めに確保されていることになります。
http://www.caa.go.jp/foods/qa/kyoutsuu02_qa.html#a02-1


こうして食べてよいかどうかの判断を自分で下すことを考えると、商品に製造年月日が併記されていないことが、私にはとても不便に感じられます。製造から賞味期限までどれくらいもつ食品なのかを知ることが、判断の大きな材料になるからです。例えば1週間もつ食品、1カ月もつ食品、そして1年、2年ともつ食品では、賞味期限を数日~数十日過ぎることの意味が全く違いますよね。


記憶にもありますが、かつては「製造年月日」が商品ラベルに表示されていました。しかしながら、①保存技術の進歩により、製造年月日を見ただけではいつまで日持ちするか分からなくなっていたこと、②製造年月日表示が返品や廃棄を増大させていたこと、③国際規格との調和が求められたこと、といった理由から、平成7年に期限表示に変更され、2年の移行期間を経て平成9年4月から完全に転換されたとのことです(②の理由は、3分の1ルールに置き換わっただけで解決されていないですね。私の記憶では、当時は③が強調されていたように思います)。
http://www.caa.go.jp/foods/qa/kyoutsuu02_qa.html#a02-1


期限表示に加えて製造年月日を併記することは認められていますが、ほとんど見かけません。ぜひ、併記を基本としてほしいところです。


なお、経験上、賞味期限の多少の超過を気にするよりも、定められた保管方法を守ることの方が大事だと、私は思っています。特に温度、湿度、光の管理です。冷蔵庫なのか、常温なのか、また、冷暗所なのか、といったことです。特に、温度には気を使っても、光を意識していないと、紫外線による劣化が進んでしまうといったことが起こりえます。ラベルに「保存方法」として書いてありますから、しっかりチェックして実践しましょう。そして、いずれにしても開封後は早めに食べきることをお忘れなく。


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