福島県と亀田病院事件

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2017年01月18日 00:00

南相馬市で心療内科クリニックを開いている堀有伸医師がハフィントンポストに書いた『新たな経験の現れ』という文章を読み、ウウウムと唸ってしまった。


福島県の状況は正直よく知らないし分からない。だから、言及されたことの正しさに驚いて唸ったのではなくて、小松秀樹医師が懲戒解雇された亀田総合病院事件にも、そっくりそのまま当てはまるのに気づいて唸ったのだ。


「補助金を渡さないぞと厚労省から脅された」と小松医師に言った亀田総合病院の経営者たちは、客観的に見れば

構造的暴力に巻き込まれている被害者

のはずだ。しかし、彼らの攻撃の矛先は、「加害者」である医系技官を非難し抵抗しようとした小松医師の方へ向いた。


その英明さで全国に名を知られた亀田兄弟なのに、なぜそんなことになってしまうのかなと思っていたのだが、堀医師によれば

その事実を指摘することは、強い恨みを引き起こす可能性があることについては、ある程度の経験のある心理系の臨床家ならば、十分に理解して経験している事柄なのである。

だそうである。


亀田総合病院に勤務する多くの「良心的な医師たち」が、この問題に無関心を決め込んでいるのも同じ文脈で理解することができるのかもしれない。


人間の心理はそのようにできている。自分が巻き込まれている構造的暴力については、極端に思考能力が弱まるのだ。

さらに、そのことを意識すること自体が、強い罪悪感を引き起こす。そして、そのような事態を明らかにする対象を、何らかの悪とみなし、その上で攻撃して排除したい欲求が高まるのだ。この場合にその攻撃性は、共同体への愛着に由来する道徳的な真面目さの表現として理解されている。

このように「構造的暴力の被害者」である私を自覚することには困難が大きい。


根は深いと思わざるを得ない。唸るのみである。

<<前の記事:偽造薬の温床としての現金問屋(タイトル一部修正)    中身すり替え?:次の記事>>