マグネシウムは抗ストレス・ミネラル

投稿者: 堀米香奈子 | 投稿日時: 2017年03月16日 00:07

「ロハス・メディカル」2017年1月号の「血管を守る」特集⑨では、マグネシウム(Mg)を積極的に摂取する必要性を取り上げました。血管石灰化を防いで心疾患を遠ざけ、インスリン抵抗性を改善して2型糖尿病の発症を低下させる、というものです。でも、それだけじゃないんです。


興奮を鎮める抗ストレス・ミネラル

東京慈恵医科大学の横山邦信教授によれば、マグネシウム欠乏と疾病の関係や、マグネシウム摂取による予防効果は、血管石灰化や糖尿病予防の他にも以下のようなものが報告されているとのこと。


メタボリックシンドローム、便秘症、こむら返り、子癇、月経前症候群(PMS)、尿路結石(蓚酸カルシウム結石)、微小循環障害(赤血球変形能低下・血小板凝集能亢進)、片頭痛、致死性不整脈(突然死)、骨粗鬆症、睡眠不足・障害、ストレス増強、白内障、慢性疲労、免疫能低下、疼痛の増強、気管支喘息、アトピー性皮膚炎など


さらに新しい知見として、マグネシウム欠乏とサイトカイン(炎症物質)の産生亢進、酸化ストレス腫瘍細胞増殖(大腸腺腫・大腸がんなど)、老化(エイジング)、悪阻(つわり)、胆石、長期記憶の低下、アルツハイマー病、うつ病なども示唆されているそうです。


ざっと見ても、あまりに多岐にわたり過ぎていて、どんな病気と一括りにするのは難しそうです。外見的には分かりづらいのですが、強いて言うなら、マグネシウムが不足した状態は細胞を興奮状態にとどめる、と言うこと。


このこと、「ロハス・メディカル」2017年1月号で、細胞からのカルシウム排出にマグネシウムが必須(図)で、不足はカルシウムの暴走を招くと説明しましたが、終始マグネシウムを主語にした書き方だったわけではないので、印象に残っていないかもしれません。改めてざっくり書けば、マグネシウムは細胞の興奮を鎮める物質、対をなすのがカルシウムです。

マグネシウムの働きの図
(ロハス・メディカル2017年1月号より)


例えば筋肉収縮や神経情報伝達も、カルシウムが細胞を興奮状態にさせて起きます。ですからマグネシウムが不足すると、細胞の中にカルシウムが流れ込みすぎ、筋肉の収縮がうまくいかず、痙攣や震え、こむら返りを起こします。心臓や血管がうまく収縮せずに高血圧や心臓病の原因となったりします。また、神経の興奮が抑えられなくなり、イライラ感、抗うつ感などのストレスが生じます。


つまりマグネシウムはカルシウムの暴走を制御する「抗ストレス・ミネラル」でもあるのです。


片頭痛の予防効果

中でも、マグネシウムで予防効果が期待できると学会がお墨付きを与えているのが、片頭痛です。日本頭痛学会が、「片頭痛の予防によいサプリメント」の1つとして、1日300~600㎎の摂取を示し(推奨グレードB)、「副作用には重篤なものはみられず、また安価」であるとしています。


ちなみに片頭痛とは、文字通り「頭の片側が痛むこと」とされます。日本神経学会によると、実際に左右の一方に頭痛が起こる場合が多いものの、4割近い片頭痛患者が両側性の頭痛を経験しており、日本では成人の8.4%が片頭痛持ちと報告されているそうです。(私もその1人です…)


片頭痛は通常4~72時間続き、頭の片側が脈拍に合わせてズキンズキンと痛むタイプが最も一般的。ただし、脈打たない場合や両側に起きることもあります。階段の昇降など日常的な運動により痛みが強まるのも特徴で、悪心(吐き気)や嘔吐を伴うことが多く、普段なら気にならないような光、音、においを不快に感じることもあり、日常生活に支障をきたします。


2012年にニューヨーク頭痛センターが「Journal of Neural Transmission(神経伝達誌)」に発表した論文では、マグネシウムが、片頭痛の発生に重要な役割を果たしており、片頭痛患者は健常者に比べてマグネシウム欠乏が多いとしています。


片頭痛のメカニズムはいまだ解明途上ですが、強力な血管収縮物質であるセロトニンが血小板から放出され、その後急速に代謝されて相対的に血中セロトニン濃度が低下すると、血管が拡張して拍動性頭痛が起きる、という説が有力です。同論文によると、マグネシウムの欠乏は、大脳皮質で片頭痛の前兆である「皮 質 拡 延 性 抑 制」(CSD、自発的な神経活動の抑制された状態)と呼ばれる現象を促進し、血中の血小板の凝集を促進してセロトニン受容体の機能に影響を与え、様々な神経伝達物質の合成や分泌にも関与する」としています。


片頭痛に悩む人は、普段の食生活を見直し、マグネシムを積極的に摂るようにしたいですね。


リンの過剰摂取で実質的に不足する

マグネシウム欠乏が起きてしまう原因として、ニューヨーク頭痛センターの論文では「遺伝的に吸収や尿中排泄に問題がある」「ストレスにより過剰に排泄される」「低栄養」が考えられるとしています。


しかし、現代の食生活ではリンの過剰摂取によっても実質的に不足に陥ってしまいます。「ロハス・メディカル」2016年7月号では、リン過剰による腎臓や血管への影響を和らげるためにマグネシウムが有効、という話をしました。これは余分なリンとマグネシウムが結びつく結果です。問題はこの時にマグネシウムも使われている、という事実。要するにリンが過剰であればあるほど、マグネシウムを摂取しても足りない状況が出てくるのです。


しかも、通常の採血検査は、体内の本当のマグネシウム量を反映していません。上記のニューヨーク頭痛センターの論文によれば、生体内のマグネシウムの67%は細胞外の骨に、31%は細胞内に存在していて、細胞外にある測定可能なマグネシウムは2%未満だというのです。


アトピー性皮膚炎を抱える敏感肌(乾燥肌)の患者さんの皮膚からはマグネシウムが失われやすく、その結果、皮膚のバリア機能が低下している、という実験結果も報告されています。この際、マグネシウムを経口摂取しても血中値はなかなか上がらなかった、とのこと。そもそもがマグネシウムの値は一定以上にならないよう保たれているわけで(恒常性=ホメオスタシス)、要はマグネシウムの血中値ばかり気にしていると、本当の不足に気づかない可能性がある、ということになります。


一方、マグネシウムは緩下剤としても使われるため、過剰摂取には注意が必要です。しかも横山教授によれば、「医療現場でもマグネシウムは下剤としての認識が強いために、欠乏が課題となっている栄養素であり、摂取によって疾病予防につながる、という認識が薄いのです」と指摘します。


経口や注射のマグネシウム製剤も広く使われており、安全で、価格も安いため、疾病予防や治療の効果が確認されれば恩恵を受ける人は多いはずです。マグネシウムを積極的に摂る必要性についての研究がもっと進み、認識が高まることを期待したいと思います。


次回は、マグネシウム摂取とメタボ予防の関係についてまとめます。

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