今さら聞けない 健康保険って、どうなってるの?
このありがたい国民皆保険は45年前の1961年にできました。当時、職場や地域には種々の健康保険がありましたが、加入者は限られカバーする医療行為も限られていました。現在も何通りかの健康保険があります(コラム参照)。
どの保険に加入しているかで保証内容や毎月の保険料に差はありますが、大まかな仕組みはほぼ同じです。
健康保険の仕組みに登場するのは、「患者(被保険者)」と「医療機関」と「保険者」の3者です(図参照●)。
まず、被保険者は、保険者に保険料を支払い、加入の証として「健康保険証」を受け取ります。
被保険者が医療機関を受診する場合、「健康保険証」を持参し、受診が終わったら、かかった医療費のうち3割(高齢者以外)を払います。自己負担分がある金額を超えた時は、保険者から還付してもらえます(後述)。
医療費とは、実際に行われた医療行為の対価を、あらかじめ定められた価格(診療報酬)に従い積み上げた金額になるのが一般的です。これを出来高払いと言います。出来高払いには、先ほども説明したように医療行為が不足することのないよう担保する働きがあります。
医療機関は一カ月分の医療費を集計し、自己負担分以外の金額を保険者に請求します。この際、誰にどんな医療がどれだけ行われたかを説明するのが診療報酬明細書(レセプト)です。
保険者はこのレセプトを審査し、特に問題がないと判断した場合には請求金額を支払います。保険の範囲を超える医療と判断した場合、支払いを拒絶します。拒絶分の費用は医療機関の持ち出しになることが多いようです。
また保険者は患者に対して「医療費通知」を送り、実際の受診と異なる部分がないか(医療機関が不正請求していないか)の確認を求めます。
ただしこれまでは、具体的にどんな医療が行われたのか患者側に知らされない場合が多く、レセプトが手書きでチェックするのに大変な手間がかかったことから、不正請求を見つけるのが困難との意見もありました。
4月からは、どんな医療行為が行われたかを記した領収書を要求できることになり、またレセプトの電子データ化も許されましたが、どちらも義務づけはされていません。
保険者がその運営と支払いに要した費用は、保険料と他の保険者との融通のしあい、国民健康保険などの雇用主負担分に相当する額の税金等で賄われます。
この仕組みは、非常にうまく機能していました。しかし近年、制度のあり方を巡って議論が繰り返されているのは、皆さんもご存じでしょう。改革を迫る外的要因が、いろいろ出てきているのです。
健康保険にも、いろいろあります 日本の場合、歴史的にみると医療や健康保険は、サラリーマンに対して、その雇用主が福利厚生サービスとして提供し始めたものです。現在でも、企業や公務員組合の共済が運営主体となっている病院が多いのは、その名残です。米国は現在もその流れが続いていて、自動車最大手のゼネラル・モーターズ(GM)が医療費負担が大きすぎて経営不振に陥ったことをご存じの方も多いことでしょう。 サラリーマンの健康保険(社保)は以下の仕組みになります。企業単体もしくは業界内で収入と支出のバランスを取れる場合は、それぞれ独自に健康保険組合を作ることができます。しかし最近は、負担に耐えかねて解散する健保組合が増えています。 健保組合が解散した場合や、単体では規模が小さすぎる企業のサラリーマンの場合、政府管掌健康保険というものに入ります。保険者は年金でおなじみの社会保険庁です。公務員は勤め先の共済組合が保険者となります。 いずれにも該当しないような自営業者や無職の人、退職した人が加入するのが国民健康保険(国保)で、この保険者は市町村です。61年に国民皆保険制になったと表現されるのは、国保が全国にでき、保険に加入していない人がいなくなったということです。健保組合の多くは、それ以前から存在していました。