今さら聞けない 健康保険って、どうなってるの?
健康保険を用いるか否かは、医療機関の自由です。医療機関側が独自に価格を設定し、患者は全額を自己負担する「自由診療」制の医療機関も一部にあります。
ただし一般には、費用負担の重い自由診療では患者が集まらず、経営が成り立ちません。結果的に、多くの医療機関が保険診療を行っており、診療報酬が改定される度に医療関係者が一喜一憂します。
そして、同一の患者に保険診療と自由診療を同時に行うことは「混合診療」として禁じられています。適正な価格で必要な医療を提供するという理念からすれば、保険の適用となっていない医療は多くないはずです。
しかし、前項でも説明したように、どこまで医療を受けるか個人の価値観次第の疾病が主流になった結果、保険の適用となっていない新しい医療行為を受けたいと願う患者が少なからずいることも、これまた事実です。
保険では「必要な」医療が受けられないと思わせることは、国民皆保険の意義を根底から揺さぶります。といって、すべての医療行為に保険適用を認めたら、保険料等を引き上げない限り、財政が破たんするかもしれません。
保険診療と自由診療のどちらか一方だけというのは、少々現実にそぐわなくなっています。例えば保険の適用となっていない新薬を使用した場合、他のすべての治療が自費となるのですから、患者は新薬をあきらめざるを得ない恐れがあります。実際には、「高度先進医療」(コラム参照)と認定された場合、自費診療と保険診療の併用が認められますが、これは、特例扱いです。
費用負担の公平性の観点からも、苦しんでいる人を救うべきだという人道的な観点からも、医療のどこまで保険を適用するのか、逆に保険で面倒をみるのはどういう医療なのか、保険の再定義が必要な時期に来ているのではないでしょうか。
そして本来それは、誰に決められるものでもなく、費用を負担している私たち自身が、どういった医療にどの程度の金額を払うのか、決めるべきことです。
診療報酬を変更したり、ある医療行為に保険を適用するか否かを決めたりするのは、以下のような仕組みです。厚生労働省が、関連する学会や団体などの意見を聴いたうえで原案を作り、寄せられたパブリックコメントを踏まえて、中央社会保険医療協議会(中医協)で検討されます。
この中には、それまで高度先進医療として自己負担とされていたものを保険適用とすること、あるいは新たな医療技術を高度先進医療として試験的に導入することなどが含まれます。
中医協は、支払い側委員が7人、診療側委員が7人、学識経験を持つ公益委員が6人という構成になっています。
どうやったらこの仕組みに自分たちの意見を反映させられるのか、果たしてこの仕組みでよいのか、あなたのご意見はいかがでしょう。
混合診療と高度先進医療 保険適用するほど一般的ではないが、先進的で患者にニーズがあるという治療法の場合、「高度先進医療」として国が承認し、それを行うことのできる医療機関も国が承認します。4月現在で101種類の高度先進医療があります(詳しくは厚労省サイト参照)。 高度先進医療を受ける場合、その費用は保険で支払われませんが、一般的な医療費部分は保険で支払われます。つまり、高度先進医療であれば「混合診療」(vol.29参照)が許されるという運用になっています。