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気づくかが分かれ目 脳卒中

血管が詰まっても破れても卒中です。

 卒中とは卒(にわかに)中(あたる)という語源から来ています。急性の脳血管障害と呼ばれることもあります。簡単に定義すると、脳の血管が詰まったり破れたりして突如神経症状を引き起こす疾患ということになります。
 神経症状が起こるのは、脳の組織に血が届かなかったり、血の塊(血腫)に圧迫されたりして、その組織が壊れるためです。壊れた部分が呼吸や心臓の動きなど、生命維持に大切な役割を担っていた場合は死に至ります。生命を取り留めた場合も、失われた脳細胞の担っていた働きがいったん失われてしまうため、半身麻痺や言語障害などが残り、そのリハビリテーションが不可欠になります。
 この「詰まったり破れたり」にもいろいろな種類があります。
 詰まる方、すなわち脳梗塞には2種類あります。詰まるのは多くの場合、血液成分が固まったもの(血栓)ですが、血栓が脳あるいは脳へ行く動脈の壁で発生したものを脳血栓と呼び、血栓が心臓や頸動脈など、脳の外で発生し脳内に流れ込んだものを脳塞栓と呼びます。
 脳血栓には、血栓の詰まる場所によって2種類あり、細い血管が詰まるものを「ラクナ梗塞」と呼びます。ラクナとは小さな穴のことで、このタイプの梗塞では急性症状が出ずに、脳血管性の認知症(06年7月号「認知症」特集参照)となることも少なくありません。
 太い血管が動脈硬化の結果として詰まったタイプの脳梗塞を「アテローム血栓性梗塞」と言います。アテロームとは、粥状動脈硬化(07年7月号「脂質異常症」特集参照)のことです。
 脳血栓に対し、脳塞栓では、脳の外でできた血栓が、その下流にある脳の血管を塞いでしまいます。結果的に脳の血管が詰まるのは脳血栓と同じことですから、神経症状だけでは脳血栓となかなか区別ができません。
 一方、脳血栓・脳塞栓と同様に、脳の血管が詰まって神経症状を起こしても、間もなく血流が再開して症状も消えてしまうものがあり、これは一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれます。症状はいったん消えても、いつ本格的な脳梗塞になるか分からない非常に危険な状態なので、血栓ができにくくなるアスピリンなどの薬剤で、脳梗塞への進行を予防する必要があります。
 続いて脳出血を説明します。以前は日本人に非常に多くみられる疾患でした。その理由は次項で改めて述べます。原因や破れて出血する血管の場所によって、これも2種類に分けられます。
 出血場所が脳の中にある場合を「脳内出血」と言います。破れるのはどちらかというと細い血管で、出血が塊(血腫)となって、周囲の組織を圧迫したり壊したりします。症状だけでは脳梗塞となかなか区別がつきません。
 脳の表面にある太い血管が破れたものは「くも膜下出血」と呼びます。脳の表面は薄い「くも膜」で覆われており、出血がこの膜と脳の隙間に広がるためこういう名称になっています。出血量が多く症状も重くなりがちです。
 いかがでしょうか。脳卒中といっても様々な種類があること、脳の血管が、詰まっても破れても、脳の組織が障害されることをご理解いただけたでしょうか。

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