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がんの可能性 そう言われたら

検査のあれこれ 目で見るもの

 治療方針決定前の全身検査が重要である理由はお分かりいただけたと思います。検査精度に限界があり、すべて事前に分かるものではありませんが、少しでも精度よく検査できるよう、注意事項をよく守るようにしましょう。
 また、やがて治療法を決定する時に備えて、何を調べているのかを理解することも大切です。不明な点は医師や看護師などにどんどん質問するようにしましょう。
 それでは、どのような検査があるかを順に説明します。大まかに分けて、肉眼で見える大きさのものを見つける検査法と肉眼では見えない大きさのものを数値で推測する検査法とがあります。
 まず目で見るものから。
 最も広く普及しているのが、X線検査です。おなじみですね。レントゲン検査とも言われます。検査に用いる放射線は照射治療に用いるものより線量がはるかに少なく、浴びたからといって直ちに害はありません。
 裏にフィルムを置きX線を当てると、一般の組織はよくX線を通すのに対し、骨や炎症、腫瘍などの部分は通しにくいため、現像した時にその部分が白く浮かび上がります。いわゆる「影」です。専門家が見れば、影の部位や大きさ、形などから、どのような病変か推測することができます。ただし確定はできません。乳がんを調べるマンモグラフィも、この仲間です。
 X線を通さないバリウムなどの造影剤を飲んでからX線撮影をすると、普段は画像に写らない消化管の形を見ることができます。ポリープなどが見つかります。血管に注射してから撮影すれば、血管の形を見ることができます。これらは造影検査と言います。
 平面的にとらえるX線撮影に対し、360度からのX線照射とコンピュータを利用して体内の輪切り画像を作るのがCT検査です。病変部が、どの臓器にどんな形であるのか立体的に分かります。
 強力な磁力をかけることで、細胞内の水分量の違い、ひいては異常な細胞がないかを見るのがMRIです。放射線を使わないので被曝の心配がありません。
 組織の形状ではなく、活発さを見ることができるのがPET検査です。放射性物質で目印をつけた糖を注射し、その取り込みが多い部分を見つけます。安静にしていれば、分裂の活発なところ(がんなど)を見つけられます。最近は、CT検査とPET検査を同時にやってしまう機械も出てきています。
 同様に放射性物質で目印をつけた炎症部に取り込まれやすい医薬品を投与し、その分布を外から撮影するのが、RI検査もしくはシンチグラムと呼ばれるものです。臓器の血流と働きがどうなっているか情報が得られます。骨転移の様子を見る時などによく用いられます。
 前立腺や乳腺、甲状腺など限られた部位や腹水の溜まり方を見たい場合には、超音波を当てて、体内のしこりで跳ね返ったり吸収されたりするのを画像化するエコー検査が用いられます。その場で動画として見えるので、病理診断用に外から針を刺して細胞を採取する際にも用いられます。
 内視鏡検査は、身体の中へ胃カメラや大腸カメラなどを入れて観察する方法です。消化器系のがんの発見に向いています。胃カメラは口から入れて食道や胃を、大腸カメラは肛門から入れて大腸全域を観察できます。ごく最近、小腸用のカプセル内視鏡も保険収載されました。気管支鏡は口から入れて気管の中を観察できます。
 体表に小さな穴を開けてカメラを入れる検査もあります。胸腔鏡は肺を、腹腔鏡は肝臓や他の内蔵を観察します。膀胱鏡は泌尿器がんの診断に不可欠です。内視鏡は、観察するだけでなく同時に細胞や組織を採取して病理診断に回したり、早期のがんを切除したりすることもできます。

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