文字の大きさ

過去記事検索

情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。
特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

がんの可能性 そう言われたら

いよいよ治療法の決定です。

 検査が一通り終わり、病状の大体の見当がついたら、いよいよ治療法を決定することになります。
 一般に、固形がんで腫瘍が局所に限られている場合は、局所治療の切除手術か放射線照射が選ばれ、完治を望むことができます。血液がんや固形がんでも遠隔転移のある場合には全身治療である化学療法が選ばれます。もちろん単独ではなく、組み合わされることもあります。
 前にも書いたように、始めたが最後、元の状態には戻れない一発勝負。進行の早い特殊なものを除き、治療が1カ月や2カ月遅れたからといって、そんなに予後が変わるものではありません。分からないことを分からないままにせず、医師と十分に話し合って、考えることが大切です。
 主治医は選択肢と推奨する治療法を伝えるはずですので、それが自分で想定していたものと異なったり、他の治療法との間で迷いがあるなら、即決せずセカンドオピニオン(次項コラム参照)を取りましょう。
 ただ早期で医師が「簡単に切除できる」と言う場合には、あまり悩む必要はなく任せてしまって構わないでしょう。
 しかし、難しいがんで「簡単」な治療法が存在しないとか、逆に有力な複数の治療法が存在する場合には悩む価値があります。
 標準的な治療法は確かにありますが、前にも述べたように何を大事に考えるかは本人や家族にしか分からないことなので医師に確実に伝え、そのうえでどの治療法を選ぶか相談しましょう。
 治療は、危険を冒して、「大事なもの」を守りに行くことです。決して楽しいだけではありません。「大事なもの」が医師と共有できてこそ信頼関係も結べますし、危険を冒して「がん」と闘うこともできます。
 「私はこういうことを望んでいる」と言われて怒る医師はいません。治療後に「私は他のものを望んでいた」と文句を言われたら、やり直しが利かないだけに医師も困ってしまいます。
 気になることは残さず尋ねておくべきですし、言うべきことも言っておきましょう。

がんの三大療法  がんを医学的に分類すると、がん化する細胞の種類によって、癌、肉腫、白血病などに分かれます。前2種は固形腫瘍となるので早期の場合は丸ごと取り除いて完治させることが可能です。この場合には外科的に切除する「手術」が最も一般的に行われ、がんの種類によっては「放射線照射」が選ばれることもあります。がんを取り残さないよう腫瘍部より少し広めの範囲が、切除や照射の対象になります。化学療法と組み合わせて根治率向上をめざすことも多くなっています。  白血病など全身性のがんや、固形腫瘍でも血管やリンパ管を通じてがん細胞が全身へ回ってしまっている(遠隔転移)場合は、局部治療は原則として行わず、抗がん剤による化学療法が選択されます。がん細胞以外に全く悪影響がないような薬剤はまだ開発されておらず、その効果や副作用の出方は人と場合によって異なるので、向き不向きを見極めながら副作用を上手にコントロールする必要があります。  三大療法すべて、正常細胞にも悪影響が出て体力を奪います。この正常細胞への悪影響を少しでも減らそうと日夜研究が続けられているのです。
虫歯は化学療法の大敵  化学療法を選択する可能性がある場合、前もって虫歯や歯槽膿漏の治療を行っておくことが大切になります。抗がん剤によって粘膜細胞が障害を受け、また免疫力も低下するので、それまでは大して悪さをしていなかった虫歯の菌や歯槽膿漏の菌が暴れるのです。体力を奪われる原因になりますし、ひどい場合は化学療法を中断しなければなりません。  いつ「がん」になるか分からないことを考えると、日々の口内ケアが意外と重要ということになります。

  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
掲載号別アーカイブ