医療の機能分化と役割分担(3)

投稿者: 真木魔愛 | 投稿日時: 2006年09月03日 22:56

院長が気持ちよく(?) Y先生に、ウルトラ級雷を落とせたのは、Y先生が、その91歳の患者さんを受け入れて、週末にかけての手厚い治療のかいあり、熱も下がって体調が安定し数日で退院となったからに他なりません。
Y先生が、K先生の面子を潰すようなことをしていたら、院長はY先生に雷を落とすより先に別のことをしていたと思います。

以下、Y先生のご名誉のために・・・

Y先生のご専門は消化器内科で、研究熱心で海外での発表も多く積極的な先生でした。この点では院長も非常に高く評価し、頼りにもしていました。
ただ、ちょっと短気で言葉がストレートなので、患者さんの評判も二極分化してました。Y先生の熱烈なファンもいる反面、「ひどいことを言う医者だ。担当を代えてもらいたい」というような患者さんもいました。
そんな従来のY先生にまつわる評判を総合的にみての落雷でした。
院長は職員に対して、決して一回きりのトラブルでは怒りませんでした。

私は、Y先生に上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)をしていただいたことがあります。
実は、検査をしぶる私に
「アンタ、死にたくないんでしょ!!」
そう一喝すると同時に、検査室に翌朝一番の予約をインターホン越しに大声で叫んで入れてしまう先生でした。
当日、大きな身体で踊るようにファイバースコープを全身で操られる必死のお姿は圧巻でした。
最初の麻酔の導入から最後までお上手で全く苦しくなかったです。
なんせ、自宅の庭に水をまくホースを握ってさえ、どのようにカーブするかと常にイメージを膨らませ、三度のご飯よりファイバースコープが好きという先生でした。

私の胃の画面を前にして、Y先生がおっしゃった言葉。

「潰瘍もないし、すっごくきれいなんだけど・・(胃痛は)ストレスだって、絶対、院長室のストレス!!毎日あそこにいたら、俺だったら潰瘍だらけになって胃癌になって死んじまうョ」

勿論この件が原因で、Y先生が病院を去られることはありませんでしたが、この後、どの先生も、非常に快く紹介患者を受けてくださるようになった(本意かどうかは別として)ことは間違いありません。

今では、PHSが導入され、診療所の先生からの電話は直接担当医にまわせるようになりました。

近い将来は、電子カルテのデータを病院と診療所の医師同士が共有できるようになり、さらにベッドコントロールもセキュリティと一定の条件や制限をかけながら、開業医がオープンに操作できるようになれば、患者にとってはなお迅速で的確な対応が受けられるようになるのではないかと期待しています。
(でも、診療所も民間市中病院も、電子カルテに設備投資するには甚だ遠い現実ですが)

現在、Y先生は、海外の日本人診療所の所長医師としてご家族とともに生活をエンジョイされていると風の便りに聞きました。                                   ***  おわり  ***

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コメント

ああ~つ、良かったと胸を撫で下ろしました。
潰瘍とストレスの関係ですが、少々以前、潰瘍は細菌が起因しているとの情報を読みました。
今度、詳細を是非ご紹介頂けますか。
私の友人で外用ヨットをしていたのがおります。日本海横断の国際レ-スの時、海が荒れ、狭い廷内でのクル-同士の人間関係、帰国後、胃に潰瘍が出来、入院してしまいました。
潰瘍とストレス、あるいは細菌との関係などお時間が有りましたら、ご紹介いた抱けますか。
毎朝、とても楽しみにしております。

最後の部分に反応して申し訳ありませんが
電子カルテって何ゆえ、あんなに高いのでしょうね。
いずれ特集してみようと思っています。

>m、n。 様

そのようなご質問をお待ちしておりました!!
な~んて・・・
是非、下記「ロハス・メディカル」8月号特集「甘く見ないで胃腸のトラブル」を読んでいただきたいのですが・・・あいにく完売状態、在庫切れなので、何とかしてお手元に届くよう工面してみますね!!
ピロリ菌などのお話も、わかりやすく掲載されています。

http://www.lohasmedia.co.jp/medical/backnumber.html

>川口様

かなり無謀な想像にすぎませんが、独立行政法人の大学病院や、医師会立の病院でしたら、(電子カルテに移行する)予算が付きますし、多額の補助も出ます。

それと同じ感覚で業者さんが、診療所や民間病院に提案にお見えになります。

これは電子カルテに限らないかもしれませんが、お医者様は、元々「相場」とか「値切る」とか、「合い見積りをとる」とか、よほどの経営手腕に長けた人でないと日常的にやらないし、そんな暇もありません。(経理に詳しい人がお金を握っていたり、会計士さん任せだったりすると別ですが)

病診連携ソフトを導入しようとしたとき、競合他社の例を具体的に挙げると、平気で何百万単位の値引きをはじめた業者に、「最初の値段は何だったの?」と思った記憶があります。

また、近隣の診療所でいち早く病診連携ネットを立ち上げた、ITに詳しい若手院長は、大学院の学生にオークションをして、プログラムを完成させた強者でした。

特集、楽しみにしてます!!

そんな高額な電子カルテを導入するのは、単に病院業務の煩雑さを解消するため・・・だけ?と思ってしまう私。
受診している病院は電子カルテですが、患者として恩恵を受けたことは何もありません。
さて、電子カルテやカルテは誰のためのものなのでしょうか???

電子カルテだと、医師は画面とにらめっこしてタイプしている時間が大部分ですものねえ。「これじゃ、まるでパソコン教室みたいだなあ」とおっしゃっていた先生もおられました。

昔、「カルテは医者のもの」、
今、「カルテは患者のもの」、医者にとっては裁判に耐えうる内容でなくてはならないもの、だからこそ、英語は使うな、略語禁止、専門用語禁止、自分を守りたかったら、わかる日本語で丁寧に書けというのが、院長訓話でした。