福島県立大野病院事件公判(速報)

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2007年10月26日 12:50

傍聴に入っている
「周産期医療の崩壊をくいとめる会」のM先生から
午前中の速報が来ました!!
(午後7時30分更新)


(以下はM先生の報告です)
今日は、弁護側の産科医の証人、東北大学の岡村教授の尋問と
午後加藤被告に対する、前々回から持ち越しの再主尋問が行われた。


岡村教授は、33年間、周産期医療にたずさわってきた。
ソフトだが、はぎれの良いはっきりした口調で明快に答える。


弁護: 大学病院ではハイリスクの分娩を扱うのですね
証人: その通りです

 (中略)

弁護: 前置胎盤症例が最近増えていることはありませんか
証人: 大変増えています。
弁護: 何件くらい、数でいくと
証人: 今10月ですが、今年に入って既に20件くらいありました。
弁護: 去年は
証人: 14,5件と記憶しています
弁護: どうして増えたのですか
証人: 大野病院事件の影響もあるかと思いますが、少しでもリスクのあるものは大学病院を紹介されたり搬送されたりしてきます。
弁護: 前置胎盤よりも、よりハイリスクの症例に影響はありますか
証人: 大学病院が大変忙しくなったので、大学でなくてはいけないリスクの高い症例も、軽いリスクの症例も多くは大学病院に運ばれて紹介され、多忙になったのです。


弁護: 前置胎盤では分娩後、胎盤の用手剥離をしないで、胎盤が剥離してくることはありますか
証人: 前置胎盤の症例ですか
弁護: そうです
証人: 半分くらいは用手剥離をしています。
弁護: 通常の時は、用手剥離しなくても胎盤は剥離するのですか
証人: 子宮収縮を促すと剥離することがほとんどです。
弁護: 用手剥離の際に出血はありますか
証人: もちろん用手剥離の間、かなりあります。胎盤が子宮に付着しているのをはがすので、当初から出血してきます。


弁護: 出血により、胎盤の剥離を中断することはありますか
証人: 私の経験ではありません。剥離を始めたら最後まで完遂します。
弁護: 何故ですか
証人: 剥離を始めると出血が始まるので、まず止血するためには、胎盤を全て剥離するのが第一です。その次に止血をはかります。


弁護: 先生の帝王切開の症例で、開腹後、子宮を見ただけで、癒着胎盤とわかった症例はありますか
証人: 1例のみです。
弁護: 経膣分娩で、胎盤をはがしにくいのは何例ありましたか
証人: 記録していないが、10件以上はあったと思います
弁護: 胎盤がはがれにくいときはどうするのですか
証人: 胎盤が出てこないとき、用手剥離をします。用手剥離でとれない例もあり胎盤をむしったり、ちぎったり、そういう形で胎盤を出すこともありました。


以下、外来と入院の診療録の記載や超音波検査の写真に沿って、説明が続く。
弁護: 28週6日目の診療、このときには、previa前置胎盤(+)で、この時点で、前置胎盤の診断をしたのですか
証人: そうですね
弁護: この超音波写真から何が言えますか
証人: これは、頚管長を測っています。内子宮口に胎盤がかかっているので、
弁護: 頚管長は何のために測るのですか
証人: 早産のとき、頚管長が短くなります。前置胎盤では早産の可能性が出てきて出血する可能性があるので、それを確認します。
弁護: 癒着胎盤の所見はありますか
証人: ありません。胎盤は、写真の左上の白く見えるところですが、そこと子宮筋層の間には黒い線が見えますが、これはclear spaceと呼び、はっきりしているので、癒着胎盤の所見はありません。
(中略)
弁護: 12月3日の、下の超音波写真の右側には、血流(+)の記載があります
証人: 台形の枠の中に血流が見られるということです。
弁護: 今の写真で血流のある場所はどこですか
証人: 台形の中の真ん中から下にかけてです。
弁護: 前置胎盤の超音波検査をされたことはありますか
証人: 何回もあります
弁護: 何回ですか
証人: 数えられないくらいあります
弁護: この血流から癒着の存在を疑いますか
証人: 100%の否定は難しいですが、前置胎盤の場合、これくらいの血流はときどき見ますので、これをもって癒着胎盤とは言えないです。
(中略)
弁護: 12月6日の記載で、尿中潜血(±)にて、placenta accreta又はprevra bleeding注意とありますね。±はどれくらいの量ですか
証人: 肉眼でわからないですが、微量の血球が尿中に存在するくらいです
弁護: 尿中にごくわずかの血を認める場合、癒着胎盤を疑いますか
証人: 尿潜血は時々妊婦にみられる所見ですので、これをもって癒着胎盤と診断するのは、過剰診断というか、診断のいきすぎです。
弁護: 普通の妊婦にもみられるのですか
証人: そうです。
弁護: 12月6日、膀胱下血流(+)の記載がありますね。
証人: 超音波写真の台形の範囲の真ん中に白い芋虫のように見えているのが血流です。
弁護: 癒着胎盤を疑いますか
証人: 正常の方の超音波検査でも頻繁に観察されます。これをもって癒着胎盤とは言えないです。
弁護: 「本日、尿潜血(-)」の記載が、12月10日にありますね。
証人: 疑いを払拭したと思います。
弁護: 癒着胎盤を疑わせるものはありますか
証人: ありませんね


・・・・・以前尿潜血(+)では、検察側の被告に対する尋問があったが、それが、数日後の再検査では、陰性だった、ということは、検察は触れていなかった。傍聴人は今日はじめてその事実を知った。民事裁判では、お互い都合の良い証拠を提示して争う、それはわかる。しかし、刑事裁判でも、やはり警察・検察に都合のよい証拠だけが尋問され、そうでない証拠は隠蔽されているのだろうか。

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コメント

>しかし、刑事裁判でも、やはり警察・検察に都合のよい証拠だけが尋問され、そうでない証拠は隠蔽されているのだろうか。

もちろんそうです!
もっとすごい実例を複数知っております

司法と言うものは事実に基づかなくても良いものなのですか?
医療現場のカンファレンスにおいては、得られた検査データは尊重しますし、
都合の良いデータのみ使うということはありえない。
推測を述べることも許されない。既に文献となっているもの、
過去に報告のあった症例を根拠にしてのみ自分の支えとなりえます。

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