事故調の大きな穴

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2008年05月05日 12:14

拙ブログでもずっと検討会の模様を追いかけてきた
いわゆる医療事故調を作ろうと厚生労働省が動いている件。
第三次試案に対するパブリックコメントの〆切が5月7日だとの説が
あちこちのブログに書かれている。本当だろうか。


厚生労働省のサイトには、そんなこと一言も書かれていないので
いきなり締め切るのはヒドイ話だと思うのだが
彼らに誠実さを求めるのは八百屋で魚を求めるに等しいと思うようになってきたので
今のうちに書いておく。


この問題に対する医療界の受け取り方を俯瞰すると
第三者機関の設置は総論賛成
その中身をどこまで詰めるか、という議論が多いように見える。
私も、ずっとその枠組でこの問題を捉えてきた。
しかし、そのカバーする領域を考えた時
明らかに寸足らずで大きな穴が開いていることに気づいた。


これは知り合いの歯科医から指摘されたことだ。
医療界の人たちにとっては盲点かもしれないけれど
一般庶民からすると歯科医院も医療機関である。
そして、歯科医院でも死亡事故が時おり発生している。
だが歯科業界では、医療安全に類するシステマティックな取り組みや
ブリーフケアが、ほとんど行われておらず
(そもそも個人開業がほとんどであり、それだけの人的資源がない)
その結果、遺族はまるで20年前に医療事故に会ったかのような
ツライ目に会うこととなっている。


つまり医療側はずいぶん努力していると言い
患者遺族側がまだ全然反省していないと言う
医療不信のボタンのかけ違いの一因として
医療界が自分たちと関係ない話と思っている歯科界の取り組みの遅れがあるようなのだ。


医療と歯科医療が完全に違うと思っているのは、業界内の人だけである。


資格云々はさておき、一般常識に従って
歯科も医療の一部であると捉え直し、歯科領域まで包含する形でないと
どんなに理想的な事故調査機関を立ち上げたとしても
少なくとも社会と医療との軋轢解消には全く意味がないのでないか。

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コメント

 歯科医については患者の急変に対してなにもする義務はないと、厚生労働省として正式に言明しています。心停止しても蘇生の義務はありません。気管挿管や薬剤投与は緊急避難として認められるであろうということですが、義務ではなく、むしろ医師法違反という解釈です。

 ただ119番ぐらいはした方がよいようです。

 発言されたのは医事課長時代の中島正治・元健康局長です。

http://www.evanam.jp/izm/PDFs/w.diamond.141102.pdf

>中村利仁先生
ご教示ありがとうございます。
現在の庶民常識に鑑みて
もし医師・歯科医師の職掌を整理しないのだとすると
「歯科医師は医師でない」という啓蒙キャンペーンを
医師会なり厚労省なり行う必要があると思います。

ただ、そんな不毛なキャンペーンを行うより
職掌を整理して必要な部分については研修つきで業務乗り入れを行う方が
よほど世の中の役に立ちそうな気もします。

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