安心とビジョン会議8(速) |
|
投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2008年05月14日 21:09 |
前回はどうも消化不良感があったのだが今回は面白かった。
皆さんも早く知りたいと思うので
サビの舛添大臣が登場してから後の模様を先に報告する。
前半部が後回しで少々分かりづらいところもあるかもしれないが
書き起こしが終了した時点で整える。
午後6時に始まって、大臣の到着したのが午後7時12分。
一気に場のテンションが上がる。
その間もそれなりに面白い中身の話はしていたのだが
主役不在で緊張感の薄い感は否めなかった。
舛添(このコメントは前半部がないと、やや意味不明だが、ご容赦を)
「事務局からビジョンの骨子案を示したと思う。順に言うと、医師数は増やす方向でいきたい。医師の配分バランスの改善もしなきゃいかん。職種間の連携もその通りだし、ネットワークも必要、住民の強力も必要だろう。というこれに肉づけして5月末に方向性を出して、その先の数字の具体的なことは総理とも相談して財源の問題もあるので高度な政治的判断になってくる部分もあるが、政府全体の政策として結実させたい。後期高齢者医療制度の評判がよろしくないが、医療の質も量も増やしてくれという希望が強いんだと思うので、財源がないと無理なものと、財源がなくてもできるもの分けて整理したい。その意味では若干抽象的になっても間違っていない方向性をこの会議で出したい」
辻本
「知り合いの医師から聴いた話だ。高齢の方が救急搬送されてきて、もう助からないだろうなという状況だったが、家族の求めに応じて2時間救命措置を施し、それで臨終を告げたら、家族が医師の胸ぐらを掴んで『なんで殺した』と言ったという。今、AEDが街の至るところにあるが、あれが普及したのは倒れた時に、まず家族が対応するということなんだろう。そういう発想を広めるために医師会とタイアップしたNPOがよく講習会なんかを開いている。ああいうことはお金がなくてもできること。私たち国民のできることでもある」
矢崎
「前回、医師を増やすのは精神安定剤と言って申し訳なかった。ただし、もし医師を増やすのが地域の医療機関の医師確保のためであるなら付帯条件が必要だと思う。安易に育成するというのでなく、貧しい環境で医学教育をやっているから臨床研修のようなものも必要になる。医師の育成には費用がかかる。その財源を国民は受益者負担する覚悟が必要だ。それと同時に将来医師が過剰になった時のリスクも覚悟する必要がある。もし新しく育成するのなら自治医大方式にするような抜本的変革なしに医師数だけ野放しというわけにはいかない。先ほども言ったけれど、産科の医師が足りないと言って騒ぎになっているけれど、もっと恐ろしいことに外科になる医師がものすごく少ない。あと10年経つとマトモな手術を受けられなくなるかもしれない。専門分野ごとの目標を立てた上で議論しないと、ただし専門医というのは学会に任せられていて国民の納得を得られないので、養成数は第三者の認証機関みたいなものを作って、皮膚科や眼科ばかり多くなるのはいけないんじゃないかと思うので、そうならないように。いずれにしても教育環境が整わないと育成も難しいので、増やすにしても今なら医学部のキャパシティの中に留めるべきでないか。それから医師の需給を考える時、閣議決定がどうしても一方にだけ規制するものなので、柔軟に養成数を変えることを考えるなら、閣議決定は見直すべき時期なのでないか」
舛添
「10年後にどうなっているかは、すごいリスク。だがリスクを取るのが政治的決断なのでやる。先ほど政府全体のと言ったのは、医師の養成は主に文部化学省マター、診療科ごとのバランスの問題も、今日の厚生労働委員会で麻酔科どうするんだという話になったけれど、大学で定員かける時に診療科ごとに細分化して枠を決める手法だってありうる。いずれにしても、これだけ医師が激務であるなら、倍に増やしたとしてもようやく業務量はノーマルになるわけで、余って使いものにならなくても、医師やめて国会議員になっている人も大勢いるし保健所の所長やってもいいし、まあ冗談だが、いくらでもつぶしは効く。リスクは政治にしか取れないから取る。池田勇人首相が所得倍増論をブチ上げた時、専門家は皆バカじゃないかと言った。けれど実際にはそれを上回った。あの時は、過度に政治化し過ぎた国民のエネルギーを経済へ向けさせることに大きな意味があって、その結果専門家も予想しえないような結果が出た。もちろん、そこに細かな配慮は必要で、だからこの会議の作業はまだまだ続く。医師養成の予算はほとんど文科省マターなので一度渡海大臣と話をしなければいけないし、地方の問題は総務大臣と話をしたい。閣議決定を見直すのかどうかについては、方法はいろいろあると思う。できれば閣議よりも、野党を含めた大きなコンセンサスを得た形にしたい。時の政権党のというより国民全体のコンセンサスの中でリスクを引き受けることを決めたい」
野中
「救急医療にしても地域のニーズを現場できちんと考えていただかないと際限がない。医療計画は私も立案の現場にいたが、ニーズからは立てられていない。医師や看護師も自分達の進む分野にどれぐらいのニーズがあるか把握しないで科を選んでいる。ニーズを示すことが必要だろう。ニーズを知らないうちは、あえて勤務の苛酷な科に進もうというおおきな力は湧いてこない。クラークやヘルパーは結構だが、地域の診療所ではなかなか雇える状況にないという現状を認識してほしい。医師不足、医師不足というけれど、大きな病院の中には過剰なくらい医師のいる所もある。そういうところと医師不足の病院とどこが違うのかの差も検討する必要がある。それから救急をどこがやるのか、受けないで二番煎じで手厚く診るという病院もあってよいと思うのだが、皆競争して同じことをして疲弊している。交通整理が必要。それは行政がやるべきで、ただし地域を縛るのでなく、活性化する観点からやってほしい」
辻本
「安心と希望ビジョンを厚生労働省が中心になって策定しているので厚生労働省にお願いしたい。後期高齢者医療制度のこの混乱は、明らかに説明不足と情報不足の結果であることを認識してほしい。その上でブレていただきたくない。自治体の担当者が上からの指示を口を空けて待っているような状況で一般の人まで情報が行き渡らない。平均在院日数短縮が行われた時も、役割分担をしたという趣旨だったのに、一般の人は『病院から追い出された』と言っていた。患者が賢くあきらめ、賢く選択するために、この安心と希望のビジョンについても、ぜひ分かりやすく説明してほしい」
西川
「地域で計画といっても、自治体は結局、医師会任せ病院任せで、本気で医療と向き合ったことなんかないと思う。今回はよいきっかけになる。地域住民が向き合うことになる。国民が常にお客さまで要求だけしている状況はおかしい。それはハッキリ打ち出すべき。先ほどの野中先生の医師が増えるかどうかは院長次第だと思う」
舛添
「実はあまり悲観的に思っていないのは、最初から診療科を決めるのは職業選択の自由との兼ね合いもあるけれど、それよりオリエンテーションであったり、あの先生のようになりたいということで、大学できちんと先生方が指導すれば悲観的になる必要はないと思う。問題は、今、勤務があまりにも苛酷なために、本人の意思を潰すだけ条件が悪いこと。楽を取れば皮膚科、眼科というのは出てくるだろう。まずは大学・指導者にきちんとしてもらって、それから地域ニーズをどう汲み上げるか、教育の場や地域でニーズがあると示せれば、自ら進もうという若者は必ずいる。あとはエンカレッジする。ディスカレッジしない。今はディスカレッジする要素が余りにも多いので、一つひとつ除いていっているところ。前回の精神安定剤みたいな言葉になっちゃううが、政治のダイナミズム。世の中を動かすにはシンボリズムが要る。せっかく道路特定財源が一般財源化されるのだからチャンス」
矢崎
「そういう風になれば素晴らしいのだが、医師不足の解消には養成数増加とスキルミックスという解があって、私達でアンケートしたところでは、医師の労働時間のうち伝票書きなどクラーク業務が10〜20%、医療行為でも患者からすると看護師にしてもらった方が嬉しいような補助的な業務が20〜30%あった。この部分を他の人に担ってもらえれば、病院勤務医が16、4万人いるけれど30万人分になる。ただし、そこを任せるにはきちんと看護師の教育をしないと、そのためには教育費が必要。厚生労働省の領域ではないけれど高等教育の費用がいる。急性期病院の崩壊を見るとき、勤務、当直、また勤務というのが勤務医を疲弊していることを考えると、救急部門の確立が欠かせない。特に二次救急は専門的な施設に機能集約して、そこには救急に特化した院内システムをつくるべき。24時間365日動いていて、でもスタッフは交替勤務。勤務医対策として150億円計上されたというけれど、現場のレベルからすると、自分たちの所に来る前にどこかに消えちゃう感覚。それよりは教育に新たな財源を投入するのと救急部門に財源を投入して、それは病院本体の会計とは分けないといけない。二次救急施設を特化させて設けた場合には、医師会の先生方にはサテライト診療所のような形で一次救急でトリアージを行いつつ病院の防波堤になってもらう必要がある。ポイントは二次救急。今後の方向性に関しては、やはり高齢者医療が大きな問題で、それは高齢者の視点で考えないといけないと思う。私など病院時代の経験から言うと、家族は老人についてものすごく要求する。しかし元気になるかといえばなりきらないことも多く、家にも帰れない。で、多くはQOLの悪い状態で病院に長く過ごすことになっていた。もっと高齢者自身の意思を尊重するように国民的コンセンサスを形成しない限り、なかなかうまくいかない」
野中
「治す医療から支える医療へ、ということで言うと、認知症は大きいと思う。的確に診断することは前提になるが、診断できたら治すんでなくともケアすることである程度治まる。しかし、その認識が医療側にも家族側にも希薄。しかも、そのケアは家族だけが担わなければならないものではなくて、周辺や地域でもできることがある。私は浅草だが、三社祭を見るだけで落ち着くようなこともある。それから多様な福祉施設の中の医療の問題も考える必要がある」
辻本
「患者の自立をどう支えるのかが大事になると思う。その意味で、骨子案に欠けているのが、MSWとかメディエーターとか、臨床系の人ではないけれど共に歩み背中を支えてくれる人。そういう人の存在を抜いて語ることはできないと思う。米穀にはペイシェントナビゲーターという職種もできていると聞く。人に相談することで自分を見失わないで済む、ということはある。それも支えることだと思うので、ぜひ提言していただきたい」
舛添
「方向性を広げる時に事務方に入れてもらえれば」
(いったん了)