臨床研修検討会1(1) |
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投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2008年09月08日 17:43 |
文部科学省と厚生労働省の合同で
『臨床研修制度のあり方等に関する検討会』というものが開かれた。
何かと物議をかもしている新臨床研修制度の見直しをしようというもの。
こんな政治状況なので、果たしてどこまで実効性があるのかは不透明で
そんなに焦って報告するほどのものとも思えないけれど
ビジョン検討会でも見た濃いメンツが集まっているので
それはそれでとりあえず面白かろう。
ちょっとずつ報告する。
最初に鈴木文部科学大臣が挨拶。
「昨今、産科や小児科などの診療科、あるいは地域における深刻な医師不足が発生している。医師の養成と確保は喫緊の課題。政府としては骨太の方針2008で、文部科学省としても医学部入学定員の増員などで対策に取り組んでいる。その中で臨床研修制度が幅広い見識を持った医師の養成をめざすものである一方で、結果的に大学医局の医師を減らし地域への医師派遣能力を失わせる契機となったとの指摘があるのもご存じのとおり。効果的に質の高い医師を育成するには学部教育と卒後臨床研修とを一体的に捉え、臨床研修制度を見直す必要があるということで、厚生労働省との合同でこの検討会を設置した。省の枠を超え忌憚のない意見をいただきたい。結論が出た暁には必要な対策を可能な限り速やかに行っていきたい」
続いて舛添厚生労働大臣挨拶。
「先般、医療崩壊に対応するために安心と希望の医療ビジョンを矢崎先生を中心にお出しいただき、その具体化をここにいる小川先生などにおやりいただいた。その中で臨床研修制度について文部科学省と共同で検討会を設置して見直してはいかがかという提言をいただいたので、この会議を設置した。2つの点を強調したい。ひとつは二つの省が合同で行うということで、それは大学医学部の教育プロセスが両方の省にまたがっているにも関わらず、二つの省が合同でやる会議がなかったというのがおかしい。今の医学教育のありかたは本当にこれでいいのか大学6年間と卒後2年間でダブりがあるんでないかとか、臨床研修にしても興味がない科ではお客さんだという話も聞く。たとえば産科を3カ月回ったからといって分娩取扱いできるようにはならない。そういう問題を考えてほしい。それから、鈴木大臣からは臨床研修によって大学の医師派遣能力が落ちているという話があったけれど、元々研修制度は医師の水準を上げる、質の高い医師を育てるという目的があったわけで決して悪い点ばかりではない。良いところもきちんと評価したうえで検討しないといけない。
それからもう一つ、鈴木大臣がいる所で何だが、私もかつては大学で教える身だったわけで、魅力ある授業、魅力ある研修を提供しなければ、まともな学生が来るはずがない。プロフェッサーに魅力がなかったら来ないでしょと言いたい。そこで研究の能力と教える能力とは違うわけで、もし文部科学省が論文の数ばかり重視するような方針を取っているならそこは考えないといけない。論文の能力ばかりが能じゃない。その意味では、大学も同時に崩壊しつつあるという認識が必要だし、それに対して皆さんどう考えますかということも聞きたい。随分勝手なことを言うようだが、こんな状況であと何日大臣でいれるか分からないので言いたいことは言ってから辞めてやろうと思っているのでご勘弁いただきたい。大学も大学人も問われている、それが国民の目線で見た時に、どこに問題があるかということ。こういう時だからこそ、二つの省の枠にとらわれず自由にご議論いただきたい。大学の教育制度、医師の養成をどうするかにまでメスが入らない限り日本の医療崩壊は食い止められないと思う。みんなで、ぜひともいい制度を考えていきたい」
舛添大臣の言葉に会場から何回か笑いが起きた。鈴木大臣が退席し、事務局が、座長と座長代理を指名。ビジョン具体化検討会に引き続き高久座長と小川座長代理のコンビに。
議論の中身は次項。
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コメント
以下の意見は個人的なものであって、如何なる意味でも所属する組織の見解を代表するものでないことを予め申し上げておきます。
さて、この場に集められた臨床研修病院の先生方は、ひょっとすると卒後臨床研修を提供するというポジションだけから発言されていくことを期待されているのでしょうが、実のところ、医学部での臨床教育をどこまで分担していただけるのかの方がむしろ重要な問題だと考えます。
大学での臨床教育を強化しようと思えば、大学病院勤務の教官増員が不可欠ですが、これはそのまま大学病院以外の臨床研修病院からの中堅医師の引き剥がしを惹起します。
これ以上の医師分布の不均衡を回避するためには、卒前教育をどれぐらい臨床研修病院で引き受けていくかの努力が必要です。
ただし、医学生教育を主として担当するべきなのは、中堅医師ではなく、むしろ研修医ではないかとも思います。
そこまでの議論をしないと、この見直し作業は極めて悲劇的な結果に終わりかねないのではないかと危惧しています。
医療過疎地の臨床研修指定公立病院で研修委員を担当する者として,
手に汗かきながら議論の行く末を見つめています.
間違っても,この臨床研修必修化を逆行させてほしくありません.
確かに研修義務化は,いわゆる「医療崩壊」へ最後の一押しだったかも知れませんが,
連鎖反応の最終ステップだけに責任があるかのような一部の主張は,
まさに「医療だけやっていた」ための視野狭窄が遠因ではないでしょうか.
初期研修医によるアルバイト当直や教育なき労働,名義貸しによる医師数偽装,授業料を払いながら無給診療を強いられる大学院生,公立病院の名ばかり管理職,,,
こうした数々の矛盾のうえに辛うじて取り繕ってきた医療現場の実態が,
初期研修医の待遇だけを先に「適正化」したので瓦解しただけです.
「先富論」を強行した,鄧小平指揮下の中国みたいなものでしょうか.
逆に,いま研修の義務規定を解除してどうなると思っているのでしょう?
学生のうちから自分のキャリアパスを考えることを知った学生が,
いまさらJAROも真っ青な勧誘を展開する医局に吸収されるとは思えません.
今以上に都市部や有名病院に殺到するなどの混乱が,目に見えるようです.
それよりも,中村先生の仰る通り卒前教育の制度改革に目を向けるべきでしょう.
個人的な感想ながら常々感じているのは,
安全確保の条件をつけたうえで医学生に医療行為を開放すれば良い,と思うのです.
ドラマERで医学生がチームに参加してOJTを積んでいるように,
大学の教官不足,研修病院の医師不足,医学生の実戦経験,研修医の雑務開放に有用で,
問題の多くは,かなり呆気なく解決に向かうのではないか,と感じています.
実際,日本の研修医の業務の大半を,アメリカでは学生が担当していると聞きます.
日本でも既にCBTが実施されてますので,これで仮免許発給とすれば問題ないでしょう.
せっかく文科省とのジョイント会議なんだから後ろ向きな犯人探しはやめて,
この辺りの建設的議論を掘り下げてほしいものです.
>中村利仁先生、千葉大先生
コメントありがとうございます。
私自身は不勉強で、今のところ発言できるだけの見識を持ちませんが
とりあえず1回目の中身はご報告したような内容でした。