死因究明検討会15(2) |
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投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2008年11月01日 16:18 |
質疑応答から。
前田
「鋭いご指摘をたくさんいただいたが、何かご質問があれば」
加藤
「並木先生の最後に、自浄作用を高めてという言葉があったが、どういう意味合いか具体的にお聞かせいただければ」
並木
「我々の現場でも反省すべき点はたくさんある。学会の中で話し合って、安全や質の確保に関して現状に甘えるのでなく医者だからというのでなく、しっかり取り組もうということになった。そうしないと、一般国民からの我々への信頼感がなくなる」
加藤
「堤参考人の話で、地方調査委員会の委員をどうするのか、公正中立な報告書を書けるのかという問いかけがあった。これについては同僚評価ピアレビューがきちっとなされる土壌があるかということになると思うのだが、現状はいかがか、お三方に伺いたい」
並木
「鑑定を頼まれることは非常に多くあるけれど、喜んで受ける人は少ない。だから鑑定してくれる人を見つけるのが大変。で学会に話が来るのだけれど、その分野に関する知識を持っている人じゃないとできないので、我々もそういう人を探すことになる。それぞれの地域ごとに、どういう人なのか学問領域、医師として、人間としてという所を絶えず日常の業務を通じて評価している。また学会としても、事例の収集分析に関与してかなきゃならんと思う。本当は再発防止につながっていけばよいのだが、個人情報保護法があってやっても保険会社から正しい情報の入ってこないところが悩みだ。できたら、そういうデータを見せてもらえるような形にしてもらえればと思う。医師として逃げるような態度ではダメ」
岡井
「ピアレビューだけだったらできるし普通にやっている。でも、それが刑事の責任追及と関わってくるから簡単でなくなる。能力の不足や誤りを正していけるようなペナルティが課されるのなら受け入れられる。刑事だと、こりゃかわいそうだ、絶対に悪いわけじゃないしということに必ずなる。大前提の211条がある限り100%刑事と切り離すことはできないから、だからピアレビューが機能するためにも普通の事例は刑事に問わないということが必要。職業人として反省するということはやるべきだが、そのためにはそういう反省が刑事とは関係ないことにならないと」
辻本
「患者の立場としては話の内容についていくだけで精いっぱいの難しい内容だったが、医療提供側としては当然の意見なんだろうと拝聴した。ただ、私どもも電話相談などをしていると一時期に比べて医療不信がトーンダウンしているのを感じる。だから、まさに今こそピンチはチャンスでないかと思う。そこで伺いたいのは、皆さんだって患者や家族になることはあるだろう。患者側の被害感情に対して何が必要なのか。総論としては分かるのだが、具体的な何かがあるなら伺いたい」
並木
「院内の事故調査で現場の人間がいかに真剣に話を聴くか、そこにかかっていると思う。最近は皆さん真剣にやってきてるから、だから不信感が少なくなってるんだろう。現場がしっかりしたものにすると、かなり変わってくる。じっと話を聴いていると、聴くと分かれば、今度は患者さん側も話を聴いてくれるようになる。まず現場だ」
岡井
「家族の気持ちを理解して共感して話すということ、事実を正しく伝えるということ、反省や謝意を伝えるということ、大変当たり前のことになると思う。ただ、被害者に対してしなければならないことと、刑罰とは別の話で、それが刑罰につながっていると思えばやりづらくなるから切り離してほしいと言っている。ごめんなさいと言える環境作るためにそういうことが必要だ。民事と刑事とは別。極端なことを言えば民事は勝手にやってくれたらいい。刑事にかかったら犯罪者になってしまうわけで、素直に回答できない」
堤
「このパターンということはない。患者、家族は様々。繰り返し対話を続けるなかで相手が何を求めているのか見極めることになると思う。単純に謝ってほしい人もいるし、最初からお金を要求する人もいる、医療者が様々なのと全く同じように患者も様々。時代は何でもマニュアル化するのかもしれないが、マニュアルには最もなじまない。そういう意味では、事故調を作ったら当事者は丸投げになる。それは却ってよくない。私も医療過誤と思われる患者さんを20年診察したことがあるけれど20年間怒鳴られ続けた。でも、そこから逃げないで受けて立つ、それが必要なことで、事故調に届け出ればいいんだということになると、かえって患者家族との人間関係を崩すことにならないかと思う」
並木
「当事者どうしが話をすると感情的になって話がややこしくなることも多いので、そこは間に立つ医療コーディネーターが入ってきて客観的に判断してもらえるといい」
加藤
「医療安全調査委員会の制度ができたら丸投げという話が出たが、各医療機関は独自に院内事故調査委員会を設けるのだし、当事者が現場で向き合うことが大切だという趣旨で、この構想を議論してきたつもりだ。丸投げになるというのは一体何を根拠に言っているのか」
堤
「加藤先生は性善説で話をしている。私は、そうでない現場を数々見てきている。院内事故調査をやっても当事者が協力しないというようなことが現実にある。事故調の精神については、その通りだろう。しかし現場がその通りに動くとは限らない。むしろ、うまくいく根拠を教えていただきたい」
加藤
「では堤参考人は、院内で協力しない人がいた時に、どういう風にしたらきちっとしたものに変えていけるとお考えか」
堤
「周りの人間から情報を集めて確認をして、院内的にはペナルティだろう」
堺
「前回出席できなかったので、その時に言いたかったことも含めて。法律に関わっている方々、行政、医療者の方々にそれぞれお願いしたいことがある。法律家に対することは、いみじくも先ほど堤参考人が言われたこととほとんど同じ。法と医の対話をぜひ進めてほしい。ささやかな経験で法と医とが同じ席についた会議などをいくつか見て、医療者の常識が法律家にとっては全く常識でなかったり、法律家にとっては自明のことが医療者にとってはそうでないことをいくつも経験してきた。とても大事な話なので、ぜひ医と法の対話の場を設けてほしい。行政に対しては、院内事故調査体制整備を推進してほしい。院内の調査はあらゆる意味で非常に大事だ。しかしながら、設置するところが増えてきてはいるが、まだまだ全ての病院で実施されていないし、小さな医療機関では単独でやるのは無理だ。だからそこを行政に支えてやっていただきたい。医療に関しては3人の参考人に質問だ。事故調ができた時、できないかもしれないが、でも今日はたまたま医療の中でも特に忙しい領域の方々がお越しくださっているので伺いたい。事故調ができた時には協力するのか。学会としてじゃなくて、我々全員参加して協力するのかということ、医療者が自ら我々でやるんだというのを示していただけるのか」
並木
「麻酔科学会も近々公益法人になるので安全の向上に尽くすのは義務だと思っている。ただ全員にきちんと協力してもらうには、我々理事だけが分かっていても仕方ないので会員の疑問点をハッキリさせて明確にしないと。そのうえで広報、指導をしていく。積極的に協力していきたい」
岡井
「同じだ。全面的に協力する。ただし医師の中にも色々なのがいるので、こうやって見解を取りまとめるのだった大変で、だから1人や2人はイヤだというのが出てきて100%にはならないかもしれない。しかし多くの先生方は協力してくれるだろう。ただし、我々は意見を出しているので、それは前提になる」
堤
「順番に質問をしつつお答えしたい。先ほど堺委員が言われた法律家や行政に対するお願いは、我々もずっとお願いしてきたことだ。本当にするのか、本当にできるのか。私は無理なんじゃないかと思っている。今までも、法律家や行政のやり気があるのかないのか疑いたくなる場面が多くあった。院内事故調が大事、全く同感だ。では行政はそのためにいくらお金をつけているか。1人1入院あたり500円だ。平均在院日数が14日として1日あたり36円。それで何かあった時に外部委員を呼んでなんてことを本気でやれというのか。もうちょっと考えてほしい。協力できるのかできないのかという話、数字を挙げて考えてみよう。モデル事業からの類推で年に1000件調査するとして1調査に5人だと5000人。医師は25万人といっても診療所でないのは半分しかいない。できるとは思ってない。救急学会がどうするか、それはできる事故調がいかなるものかによって変わる。納得するものなら必死にやる。納得いかないものだったら、やる気なんか出るわけがない。現実には数年でパンクするだろう。パンクした時にどうなるか。医療側がやれやれというからやったのに、なぜやらないんだ、と、きっと責める、この辺の人たちは。(ノートを見ていたため、この辺がどの辺か不明)あれ、静かになっちゃった。先生方も間もなく引退なんだから、あまり気易くやるとかできるとか言わない方がよろしい」
前田
「救急が協力しないで動かないんだと思う。大きな溝があるように見えて、でも実は感情の問題であって、言っていることに、そんなに差はないんでないか。どちらから見るかの違い、いみじくも性善説と性悪説という話があったが、どちらから見るかで全く色が違ってしまうということなんだろう。通知の基準が不明確ということ、警察や検察との議論の内容が明示されていないというご意見もあったが、それについて他の方のご意見はいかがだろうか。私も少し時間をいただいて話をしたい」
堤
「参考人が出しゃばって申し訳ないが、私どもが呼ばれるのも最後だと思うので言わせてもらう。座長、仕切りで、溝が埋まった埋まったと毎回やっているけれど、それが13回(ママ)も続いてしまった原因だ。せっかく刑法学者が座長をしているのだから、医療事故の刑事責任をどうするのかキッチリ議論すれば良かったし、もし医療安全だというなら座長は医療の人間がするべきだった。座長、あなたの思うようにやったらいいのだ。毎回遠慮して、溝は埋まった埋まったとやっているからダメなんだ」
会場から大きな笑い声が挙がった。私も笑いそうになった。
前田
「それはやはり見方の違いだ。私は縮まったと思っているし、新聞なんかの評価もそうなっている。座長として刑法学者がし切っていて不満かもしれないが、しかし医療の側の意見もきちんと伺っている。もちろん私でなく医療側が座長でも構わないし同じ話になるはずだ。今日の話は、その辺の議論しているはずではないので私も一つだけ申し上げたい。
過失の限界が不明確というのは昔から論争のある話だし、医師の過誤を刑事に問うべきでないという意見も、211条が罪刑法定主義に反するというのも昔からある議論だ。ただ、過失行為であっても処罰せざるを得ない領域というのはあって、そこはだんだん固まって行く。下手だからとか、ちょっとしたミスだからというだけでは、国民から見てこれは処罰しないとということにはならない。薬の取り違えとかそういうのは処罰の対象にならない。しかし一例を挙げると前の晩に飲みすぎて、手術でミスをしたという時。故意ではない、しかし単純な過失でもない。我々の専門から見れば、医療に対する刑法の適用というのは他の分野に比べて随分とモデレートだ。罰金というのはハッキリ言って軽い。で罰金の割合が異様に多いし執行猶予もつく。それでも有罪は有罪だという気持ちは分かる。ただし被害者側の気持ちもある。そのバランスの中でやっているんで、実質としては岡井先生のご提示もあまり変わらない。救急で専門医の基準で判断するのかという話があったが、そんなことはない緊急条件という中で判断が行われる。じゃあ大野病院事件はどうかという話になるかもしれないが、あれは法的には無罪の結論が出ている。基準をつくるために会を作ってやっているんだということを堤先生に一番強く申し上げたい。
パイプをつないでおきたいという話があった。あれが今回の一番キモだと思う。勝手に警察が動くというけれど、警察だって、医療者の協力なり鑑定がなければ動けない。今回は医師の側から見てよりよいものを作ろうということで始まったんだし、その意味で法と医の対話もしている」
岡井
「大野病院事件に関して、医療側が鑑定したからだというけれど、あれは僕の所にも警察から電話がかかってきて、いやそんなに間違いじゃないという話をしたんだけれど、それは無視された。立件したかったら、自分たちの言いたいことを言ってくれる人の意見しかきかない。調査委員会の見解にしても、警察の方が自分の思っているのと同じ意見を探しまわったら1人や2人そういうことを書いちゃう医者も出てくる。だからパイプがあって調査委員会の見解を大事にしてもらうのが大事。若いからとか失敗したからといって刑罰にならないように。先ほどの話で言えば酔っ払って手術というのは正当な医療行為の遂行ではない。そういうものは処罰されて当然仕方ないと思っている。ただそういうニュアンスが誰が見ても分かるような条文にしてほしい。法律で標準からの逸脱と言われてしまえば、薬の取り違えなどはどう強弁しても逸脱してないとは言えない。実際、薬はよく似た名前のものが多いので、当直明けなどにふっと語呂の似たものを間違えちゃうことはある。考え方だから、国民がそういうのも全部刑罰だというなら仕方ないんだけど、しかし医療の向上には向かない、働かない。手錠を持って手術室の前で間違えたら逮捕だぞという、薬間違えたら逮捕だぞとやる、どちらもミスを減らすのには逆効果だ。それよりは本当のことを言ってくれという方が、原因が分かってくるから安全につながる。そのためにも刑事と切り離すことが必要だ」
前田
「そこは完全に切り離すべきだというのとパイプをつないでおきたいというのが裏腹になる。211条を直すといっても、それはきっと国会を通らない。その中で一番合理的なつなぎ合わせは、パイプをつなぐ中で情報交換することだ。そのような信頼関係があれば性善説でなくともうまくいく」
堤
「事故調で一例一例積み重ねてよいものにしていくというのも一つの考え方ではあるが、しかし警察や検察の人が事故調に出てくるのか?出てこないとしたら、素人が過失のあるなしを判断することになる。過失のあるものが通知されなくなっても警察や検察は本当に構わないのか。どんなものが過失にあたるか検討しようと思えば、すでにモデル事業の経験が何十例もある。そうでなくとも業務上過失とされたもの過去何十年もの類型化もできる。で、実際はそんなこととっくに検察はやっているはずだ。だから法と医の対話を求めているんだ。警察や検察は組織で動くから1人だけ出てきて何か言ってくれと言っても無理だ」
高本
「随分と誤解がある。過失があるかどうかの判定はしない。本来、離れている。法的判断と医学的判断を同時にやるようなファンクションする話じゃない。再発防止のためにやるんだけれど、しかしそれでは刑事事件に関する心配が拭えないから、警察の捜査にも裁判にもそれぞれ誤りはあり得る。だから刑事事件で処理するのを極めて限ろうという話だ。岡井先生とほとんど同じと思う。刑事に振り回されていると思うのは誤解だ。刑事で扱うものを悪質なものに限りたい。医療者が皆で考えて、これはちょっとヒドイというものだけに。医学界は8割どころか9割ぐらい、これには賛成している。しかし今のように誤解があると話がおかしくなるので、今まで14回の議事録をもう一度読み直していただきたい。我々は、責任追及するためにするんじゃないと繰り返し確認している」
山口
「せっかく3学会から来ていただいて、常に触れられているのは、この医療行為にどこで刑事の線を引くかということで、せっかく3学会から来ていただいているので、故意と悪意のあるものを刑事で扱うことについては異論がない、だったらそれ以外の医療行為で、悪意というのも実は難しいのだが、こういうもの以外でどういうものは刑事の対象になると線引きできるだろうか、おっしゃっていただければ」
岡井
「法律の文章にするとどうなるのかは難しいのだが、自分も手術するのが良いとは思っていないのだが診療報酬が高いから手術したというようなものは正当な業務遂行とは言えないだろう。自分の研究のために、きちんと説明せず、もちろんきちんと説明すれば良いのだが、ちゃんと正当な手順を踏まないで新しい術式を行って患者さんが不孝な目に遭った、そういうのも正当な業務遂行とは言えないだろう。ただし一所懸命やったのだけれど力が足りなかったというような場合、大野病院事件でもブラックジャックみたいな医師がいれば助かったかもしれない。技量を上げていく方向に行かないといけないのだが、刑罰では難しい。これは論文を読んだとかではなく人に聴いただけの話だが、米国でも単純ミスを刑罰の対象としていたが全く減らず、システムの改善に取り組むようにしたら半減したということがあったと聞いている」
堤
「資料の中に我々の見解は出ている。明白な過失というのが、それだ。医療で国が過失に問える医療水準とは何なのか。国家試験レベルでないと他の国家試験との整合性が取れない。なんで専門医のレベルが業務上過失に問えるのか。医療界は各学会が努力して技量や知識を向上させ専門医の制度を作っている。弁護士会よりもよほど努力している。弁護士が司法試験を通った後にさらに医療問題専門弁護士資格なんてのを作って更新しているか、していない。そこを我々が医師としての誇りとプライドにかけて医療水準の向上を日々図っている。それを国が業務上過失のあれにするのは本当に法的に合っているのか。自ら努力していることを処罰の基準にする、一体どこにそんな根拠があるのか、法曹界の方々に問いたい」
前田
「代表して答えるというわけではないが、水準が高く設定されているという主張だと思うが、現実に刑事罰が課されているのは本当に問題のあるものだ。刑法というのは過誤の再発防止だけが目的ではできていない。被害者の応報感情に応えるというのも入っている。被害に遭って苦しんでいる、そういう人にどう対応するのかも入っている。実際の運用では、医療が特別のものというのは入っている。その中で有罪になるのは、ごく一部であり過失の程度も限られている」
児玉
「3人の参考人の意見は、微妙な点で異なっているが、パイプ、第三次試案の(39)の部分については異論がないように聞こえた。それで間違いないか」
堤
「届け出ない部分に問題あるものも含まれることになる。それで国民が納得するのか。問題あるものを見逃さないためには全例送るしかないのでないか。高本先生のお話では、過失のありなしは判断しないということだったから。これ以上分かりやすく言えないくらいに簡単な話だと思うのだが」
児玉
「岡井先生、並木先生はご同意いただいているのだろう。堤参考人は全例届け出るという主張か」
堤
「そうではなくて」
児玉
「イエスかノーかで言っていただきたい」
堤
「イエスとかノーとか言う話ではないだろう。プロスペクティブにやるのか、レトロスペクティブにやるのか、ゴチャゴチャやっているんだから、それで責任追及するならいっそ全例送った方がスッキリするだろう、という逆説的な言い方だ」
児玉
「逆説的言い方が多いので、真っ直ぐに言っていただいたら、先生だったらどうなるのか」
堤
「そういう具体的な事を我々は検討して資料として出している。明確な基準を、医療界と法曹界とが共同して示せと」
児玉
「では、この文言をどう変更しろというのか」
岡井
「今まで主張してきた通り、そういうものも含めて刑事にすべきでないというのが我々の主張だ。皆エラーをするんだ。それが重大な結果になる。別に若いから技量がないからミスするとは限らない。イチローは世界一守備のうまい外野手だと思うが、それでも1000回守備機会があれば何回かはポロリとやる。それと同じで、ベテランでも名手でもミスをすることはある。そして、それが人の死につながる。いつ自分がそうなるかと誰もが思っている。そういう背景があるから、文言の表現としては、せめて「悪質な事例」というのを例外の中ではなく全体にかかるようにしてほしい。そこをしつこく言っている」
前田
「会場の借りている時間もあるので手短かにお願いしたい」
木下
「医療界としては、医療事故を警察に届け出るという流れが避けられなくなっていて年間250例くらいあって、そのうち検察へ送られる立件されるのも100件くらいある。この第三者機関ができなければ、この流れが今後も続く、それを何とかしたいということで、この議論はやっている。あえて前田先生が座長を引き受けてくださったことは、医療界は感謝しないといけないんだ。司法の話というのは難しい。一番大事なのは警察へ届け出る代わりに、どんな組織を作るかという話であり、原因究明だけで責任追及しないということであれば、今まで通りに警察は入ってくる。そうでない組織を考えましょうということなんだから。一番大事なのは大綱案の12の1に書いてある通り、医療関係者の責任追及が目的ではなく、医療関係者の責任については、委員会の専門的判断を尊重する仕組みとするということだ。
真剣に議論して、これはヒドイというものであるなら刑事に通知すると判断するんで、そうでないケースであればそれこそ警察は入ってこない。いかに限られたものにするかということで議論しているので、誤解だ。性悪説じゃなくて、社会の現実からスタートしないと、議論しただけで終わってしまって全く意味がない。あえて司法も協力してくれるということになった中で作るとなった以上、できないじゃなくてやる必要がある。前田座長が引き受けてくれたのはいいこと。司法の側も、法務省も警察庁もやるならやってみてほしいと任せてくれているんだから、救急も今の議論に全面的に協力していただきたい」
豊田
「内容が刑事ばかりで、遺族の私にはとても入れない議論だった。一言言わせていただければ、被害者の一番望んでいることは真相究明だ。あまり詳しく述べられないが、わたし自身は医療界を信じられなくなるできごとがあった。事故を起こした医師に対して、その直後に学会が専門医資格を与えた。どこが事情作用なのか。これまで被害者の思いに、医療界が応えてくれたとは言えない。ここにようやく様々な立場の人が一緒になって作っていこうという場が初めてできた。私も医療安全の現場に身を置いて、院内の事故調査がいかに難しいかに直面している。丸投げじゃなくて実現性を考えると第三者機関を作って、そこが支援する流れの方がよいのでないか。今は真相究明してもらえていないと多くの遺族が考えていることだけは知ってほしい」
鮎澤
「この検討会は議事録を含めだいぶ注目されているので、今回随分と逆説的な表現がなされたので、一言申し上げておきたい。仕事柄、院内の事故調査委員会などによく出させていただいているが、その参加者たちは、ほとんどが例え厳密には公正でなくとも公正であろうと、中立でなくとも中立であろうと真摯に対応されていた。そこの所はきちんと分かっていただきたいので、一言言っておきたい。モデル事業に関して言えば、双方が出席しての説明会が開かれている。ここの議論の資料になるはずなのだが、外から見ているとどうも分かりづらい。何とか見せていただくことはできないだろうか」
山口
「今、現場では公正中立であろうとしているというお話をいただいた。なかなか難しいのだが、しかし本当に皆さん真摯に対応されている。ああいう人達がいる限りは、第三者機関ができても大丈夫だと思う。資料に関しては、表に出すあれとして全てではないが、ご了解得られた報告書の概要はホームページに公表されている。将来のこの委員会の参考になるだろう。モデル事業の宣伝が足りないということは言われるとその通りなので今後もっと広めていきたい」
次回は11月10日だそうだ。
(了)
コメント
サスガに、厚労省の大綱に反対を表明した臨床医団体の先生がたを参考人として招いただけのことはありますね。
駄目なものは駄目、と明確に主張しておられます。
WHOの医療安全のセクションもご存知のとおり、安易な処罰→刑事事件化は行うべきないと提言していますし、WHOの医療安全の研究機関(WHO Collaborating Centre for Patient Safety Solutions )も純粋に、医療安全のシステム作りを考案していますが、刑事事件化には言及していません。
World Alliance for Patient Safety
http://www.who.int/patientsafety/worldalliance/en/
WHO Collaborating Centre for Patient Safety Solutions
http://www.ccforpatientsafety.org/
厚労省の医療安全委員会の基本が、そもそも間違っているのです。
何を持って、医療安全に繋げるかの認識が誤っていたのです。
会議の構成メンバーの人選、座長の人選、議論の根拠となる土台、全てが、国際的なレベルからはかけ離れたところから始まりました。
WHOの医療安全のセクションのメンバーをみれば、厚労省とのそれが一目両全です。
こんな愚かな会議を15回も続けてきたのは、厚労省の医系役人に責任があります。
しかし、現場の臨床医の意見をくみ取ってくださった舛添厚労省の頑張りで、厚労省の目論む国際的基準からかけ離れた医療安全委員会づくりは頓挫しかけています。
基本から姿勢を改めて、まともな医療安全委員会作りを練り直すべきです。
> 刑法というのは過誤の再発防止だけが目的ではできていない。被害者の応報感情に応えるというのも入っている。…
う〜ん、そうでしたっけ?
中村先生に便乗して。
>刑法というのは過誤の再発防止だけが目的ではできていない。被害者の応報感情に応えるというのも入っている
でしたら、医療安全のシステムに刑法=刑事罰を用いるのは間違いですね。
なぜなら、WHOや他の欧米の先進国の医療安全部局は、患者サイドの応報感情で医療職に処罰を与えるのは間違った考え方であり、医療安全にはつながらない、と明確に断言しています。
各国の医療安全部局のホームページを読めば、誰でもわかることなのですが。
この会議の座長は、その知識すらない、言い換えれば、医療安全の国際的標準となっている考え方を全く知らない、すなわち勉強していない、ことを意味します。
やはり、この会議そのものが、座長の人選を含めて、まったく間違ったスタートラインにたったものであることが明確になりました。
会議の続行は時間と労力の無駄です。
上のAnonymousはわたくしです。すみません、無記名でした。
>hot cardiologist先生、中村利仁先生
コメントありがとうございました。
社会の安寧のために法と医療と、どちら優先するかという発想はおっかないなあと思います。
お互い譲り合って折り合いつけるのがいいと思います。
厚労省の方と話をしても、「現場のことは我々に分かるわけはない」と開き直り、逆ギレされますが、耳を傾ければきちんと声の届く手段はあるはずです。委員会の人選が大抵間違っているのです。正論が正論として認識され、このように広報されることはとても大事だと思います。川口さんのご努力に感謝します。
岩田健太郎先生
ご無沙汰しております。
その節は大変お世話になりありがとうございました。
また、ご丁寧なコメント恐れ入ります。
引き続き可能な限りお伝えしていきます。
昨日の日医シロクマ通信の理事会報告速報には、以下のように、「誤解に基づくものもあり」と真摯な学会からの意見を切って捨てているように見えます。
こういう姿勢が、日医は信用できないということにつながることに想像が及ばないのでしょうか。
>第15回診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会の件
(報告・木下常任理事)
標記の検討会が、10月31日、都内で開催された。
当日は、日本麻酔科学会、日本産科婦人科学会、日本救急医学会の3学会から、「三次試案及び大綱案に関するヒアリング」が行われた。
各学会からは、第三次試案および大綱案に対する意見や要望などが出されたが、なかには誤解に基づくものもあり、検討委員会より都度適切な回答がなされた。
>ミヤテツ先生
お知らせありがとうございます。
典型的な大本営発表ですね。