タバコが吸えなければ海に行かないですか?

投稿者: | 投稿日時: 2009年07月30日 10:21

今から2ヶ月近くも前になりますが、こんなニュースが流れました。

●海水浴場禁煙、違反には罰則 神奈川県検討
(朝日新聞 2009年6月3日)


神奈川県内の全ての海水浴場を原則禁煙とし(指定場所以外での喫煙を禁止)、罰則も検討するというものです。これについては検討会がすでに始動していますが、自治体の中には反発しているところもあり、議論は紛糾しており、本格的な検討に入るのは9月になるようです。


公共の場所での禁煙・分煙は徐々にではありますが、かなり進んできていると思います。私も関心があるところなので、今日はこれについて考えてみたいと思います。

続報は以下。

●海水浴場禁煙化で常任委も紛糾/神奈川県議会
(神奈川新聞 2009年7月2日)
●海水浴場のたばこ対策で県市町共同検討会が発足
(神奈川新聞 2009年7月16日)


ちなみに神奈川県は今年3月31日、公共的な施設での受動喫煙防止条例を全国で初めて制定しています。この条例では、「公共的施設」を、病院、学校、劇場、官公庁などの「第1種施設」と、飲食店、ホテル・旅館、カラオケボックスなどの「第2種施設」に区分したうえで、「第1種施設」は禁煙とし、「第2種施設」は禁煙もしくは分煙を選択するよう定めています。今回の海水浴場に対する規制はそうした喫煙規制の第2弾ということになりそうです。


神奈川県知事は定例会見で、海水浴場の禁煙化の理由として、吸い殻のポイ捨てが砂浜の美観を損なうこと、歩行喫煙が水着姿の利用者にとって危険であること、また混雑時に受動喫煙の被害が懸念されることなどを示したとのこと。例として、ハワイなど海外のビーチで禁煙が通例となっていることも挙げました。これについて環境推進団体はもちろんのこと、「タバコを拾う人手・手間が減る、規制は良いこと」など評価する海水浴場関係者もいるようですが、一方、「ここはハワイじゃない」「海の家などがどうなるか、海水浴客の半分は喫煙者。営業への影響が懸念」といった抵抗も多いようです。


私は個人的には禁煙推進派なので、日本の海水浴場が禁煙化されるのは大歓迎です。とくに小さい子供がいると、美観だけの問題でなく、安全面でもタバコは本当に気になるところ。副流煙とその受動喫煙の害はいまや常識ですし、街中でさえ、歩行喫煙は煙だけでなく火傷の危険があり、いつもビクビクしてしまいます。とくに子供の顔の高さでタバコを持って歩いている人や、自転車をタバコを吸いながらこいでいて突然、排水溝に投げ捨てる人もいて、唖然とするや恐ろしいやら。のみならず子供が1歳前後のころは、なんでも興味を示して拾ったり、目を離していると口に入れることも珍しくなかったので、道端に落ちている殻を拾おうとすることもしばしばでした。今でこそ口には入れませんが、いつ拾うのではないかといつも油断できません。これが海水浴場となればなおさら、安全に楽しく過ごせる場所であってほしいと思うのです。煙はもちろん、子供が砂にまみれて遊ぶ場所ですから、吸殻があちこちにあったら安心できません。


最近では、受動喫煙の害が叫ばれ、レストランやその他公共スペースでの禁煙・分煙が一般的になってくるとともに、喫煙権あるいは嫌煙権という言葉も一般化してきました。もちろんこれらは法律で認められたものではありません。しかし、かつて喫煙が当たり前だった頃(レストランや職場等はもちろん、飛行機の中でも吸い放題だったくらいです!)にはタバコの煙が嫌でも黙って我慢することを余儀なくされていたのが、近年の健康ブーム・健康志向で嫌煙家人口が増え、市民権を獲得してきたのです。レストラン等の側でもこれを無視できず、むしろ集客アップにつながるという理由で禁煙・分煙を進めてきた、というのが実際のところだと思います。


今回の議論の反対派の懸念は、禁煙化(指定場所外での喫煙禁止)により、海への来客が減るのではないか、ということです。しかし、「タバコを吸える場所が限られているから海に行くのはやめよう」という考え方をする人が、それほどまでに多いでしょうか。また逆に規制を加えないとして、そういった営業利益を主張する人が、海に来たお客さんがタバコによる健康被害等を受けたときに、適切に補償してくれるとでも言うのでしょうか。歩行喫煙による火傷は別としても、受動喫煙による害などは因果関係の立証も不可能でしょう。


そもそも、今まで多くの人がタバコの煙や吸殻を我慢しても海に出かけていました。そういう人たちが引き続き健康等に被害を受ける可能性(受動喫煙)を我慢しながら海水浴することを強いられるのと、他方、他人に健康被害を与えないために喫煙を我慢させられながら海水浴をすること、どちらが理不尽でしょうか。タバコを吸うことが他人に与える影響をきちんと自覚しているならば、マナーある行動は当然であり、ごく少数のマナー違反の人が罰則を受けることを認めても何ら問題はないはずです。


また、都道府県レベルでの海水浴場の禁煙は前例がないようですが、市町村レベルではすでに静岡県熱海市が3ヵ所の海水浴場で指定場所以外での喫煙禁止に踏み切っています。違反した場合の罰則は、名前の公表とのこと。モラルに反したともいえるわけですから、そうして公の目に名前がさらされるくらいの処罰は妥当ではないでしょうか。


日本の海水浴場ではたいてい飲酒は認められています。海外ではアルコールは禁じられているところもめずらしくありませんから、禁煙くらいの規制は厳しすぎるということはないでしょう。まして、きちんと喫煙場所を設けるのであれば、吸いたいときにはそこで吸えばよいのです。それに海の開放感にお酒が入れば、なおさら気が大きくなります。となれば、マナーとしての禁煙を呼びかけても、全ての人がきちんと応じるとは思えません。公の規制でない場合、マナー違反を注意した人と注意された人(とくに酔っている場合)との間でトラブルが発生することも十分考えられます。


夏休み、家族で海水浴を楽しむ人も多いのですから、喫煙所を設けた上での禁煙措置くらいは喫煙家の方にも理解を示していただきたいものです。それに海水浴場関係者の方々も、まだ結果も出ていないうちから先回りして牽制をかけるのでなく(熱海のほうはどんな結果が出ているんでしょうね?)、本当に多くの人が安心して楽しめる海水浴場作りを考えていただければと思います。良識ある人はそれで海水浴をやめることはないでしょうし、むしろそうした海水浴場を選ぶはずです。そして自然と、マナーを守れる人たちの集まる気持ちのよい海水浴場になるのではないでしょうか。吸殻だけでなく、ゴミのポイ捨てだって減るかもしれません(・・・?それはちょっと期待しすぎかな)。

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コメント

堀米さんも書かれていますが、たばこもそうですが、ガラスの破片もよく落ちていますね。これも危ないと思います。

以前、浜辺を歩いていましたが、気になってガラスの破片を拾い出したら止まらなくなりました。それほどたくさん落ちていました。。

浜辺での飲食禁止など、海外では厳しく管理しているところもあります。結構、警備の人が来てうるさいですね。

ここはハワイじゃない。。という意見も分かるのですが、よその良いところは取り入れて、良くないところは反面教師として学び、ハワイ以上の良い環境の日本の海にしたいですよね!!

堀米さんの記事、ありがとうございます。

禁煙には全面賛成ですが

海岸での喫煙で受動喫煙を持ち出すことはむりがあるでしょう。煙が流れてきて臭いが嫌だというのと、受動喫煙による健康被害はずいぶん違いますので。

社会の禁煙という意味では、「人前でたばこを吸う事」「子供の前でたばこを吸う事」をこそ禁じるべきだと思います。そうすれば場所ごとの取り決めも要りませんし、映画やドラマでの喫煙も禁止ですし、たばこの広告もずいぶん変わると思います。「吸ってる姿がかっこ良い」と思わせることが「悪」です。

WHOのタバコ規制を批准し、「健康増進法」が発効していても、公共の場所での禁煙推進はまだまだ道通し、ですね。
ロハス新聞を読むような方は、すでに禁煙へのバイアス(悪い意味のではなく)があるので、ここでは表立っての反対意見は出ないと思います。そこが却ってもどかしいですね。
禁煙外来のジレンマもそこです。禁煙なんてしたくない、という人がほんとに重症のニコチン依存症なわけですから。まあ、禁煙の決心をした人を支援することもとても重要なのですが、それでも50%強しか成功しないわけで。
おそるべし、ニコチン依存(というか、薬物依存)。敵は強大です。諸外国の例を見ても、法律で禁じる以外に良い方法はないようです。
JTの最大株主である日本政府が禁煙立法できるか?地道に国会議員などに働きかけて、国民の健康を守るために、さらに厳しい禁煙立法化を!!!

おそらく絶煙はむりでしょう

法律で禁止することはハードルが高すぎるでしょう。
先進国中安いグループに属するたばこ税でも、国内では最高倍率物品として激しい抵抗がある以上、税率を上げることでさえ難しいのですから。

たばこ税は国税と地方税の両方であることも問題を難しくしているでしょう。そこでたばこ税と酒税を目的税に変えてはいかがでしょうか。これらの税額で国民の健康を守ることは不可能ですが、未成年を健康保険から切り離し、妊婦と合わせて新たな「みらい健康保険制度」でも創設すれば現状では何とかなりそうですし、将来この部分の医療費がかさめば、それに見合う額に増税すれば良いと思います。

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