【投稿】我が国の医師国家試験の問題点 コメント欄

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2010年02月28日 14:27

 医師国家試験は、日本の医師の質、さらに言えば医療の質を規定する大切な試験であり、その位置づけ・内容・運営は真に「良医育成のため」というポリシーに沿ったものである必要があります。臨床現場に出ていない学生の立場から僭越ですが、以下の点について皆様に考えていただきたく、この場をお借りして問題提起させていただきます。(群馬大学医学部医学科5年 柴田綾子)

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米国の場合は、医師免許は州のmedical booardが管轄しており、医師資格は国家資格ではありません。
州が医師免許を与える際に、州のmedical booard(medical examiner)が合同で設立した第三者機関の資格試験(USMLE)を共用するだけ。
州を越えて働く場合、いちいち州の医師免許局に申請しなければなりません。

日本では、医師資格は国家資格となります。
一度とれば、国内の何処で働こうと医師免許の申請の必要はありません。
同じこと(医師資格=国家資格として登録)は欧州各国、韓国、オーストラリア、カナダ(もそのはず)にも当てはまります。
医師免許制度そのものが、米国と他の先進各国とでは違いますから、国と独立した米国型の第三者機関の設置を日本に導入する意味があるとは思いません。

医師資格が国家資格である上記の国々でも、アメリカ型のシステムは取っていません(知る範囲では)。

また、欧州のいくつかの国は、医学部卒業時に全国共通の医師資格試験がなく、医学部卒業試験合格が医師資格(大抵は仮免許)となります。
2年間前後の初期研修に終了して、国家の保健省、ないしそれに順ずる機関(英国ならばGMC)に医師登録となります。

卒業前に医師資格試験があるドイツの場合は医師資格は全て国家試験合格による登録制度です。

またドイツやアメリカと日本との違いは、医学部卒業前に医師資格試験があり、合格しないと卒業できない点。
(米国は卒業前にふたつ、卒業1年終了時に最終試験で、医師資格取得)。

アメリカのシステムは、あくまでアメリカだけで通用するものであり、他の先進各国が追随する必要はないと思います。


医師資格=国家資格である欧州や他の先進国の医師免許制度。

一応参考資料として。

【ドイツ】
岡島先生のサイトから引用。
医師免許規則
2002年6月27日版(2004年7月21日改定)
Approbationsordnung für Ärzte
http://www.hi-ho.ne.jp/okajimamic/d135.htm

【英国】
英国医師会のサイト
Becoming a doctor
http://www.bma.org.uk/careers/becoming_doctor/index.jsp

英国の医師登録機関(国家資格)
Genelal Medical Council
http://www.gmc-uk.org/

【カナダ】
カナダの医師登録機関(国家資格)
Medical Council of Canada
http://www.mcc.ca/en/

知識偏重の国家試験だからコミュニケーションスキルや、臨床実習がおろそかになるというのは、医師という職業を選びそのために大学で学んでいるということを忘れている無責任な学生の戯言である。国家試験が終わった直後ですら、基本的な内容すら覚えていない質の低い研修医がいる状況は、これ以上求める知識を減らすべきではないことを示している。国家試験を目標に勉強している段階ですでに医師としての資質に欠ける。国家試験合格を目的としているのか、医師となることを目的としているのかを理解していない。国家試験は医師としてやっていける最低限の水準を示しているだけである。

 自分は一度医師国家試験に不合格となり、二度目で合格しました。

> 国家試験は医師としてやっていける最低限の水準

というご指摘の通り、あまりに不勉強で不合格となったことは間違いないところと思っています。

 ただし、逆に言えば、1年間国試勉強だけすれば、他は何もしなくとも医師になれたというのも自ら経験したところです。

 もう18年も前のことですが、当時は知識以外の部分については卒後に身につけることが当たり前であった時代でした。

 いま、そういう時代ではありません。柴田さんの御主張を仔細に拝見すると、自分が学生であった時代とは、今の医学生達の問題意識のレベルが違うのだと感銘を受けました。

 医学生自身から、国家試験のレベルアップの要求が出るというのは、自分の頃には考えられなかったことです。

 また、確かに今の国試では全く評価が為されていない部分はあります。方向を修正して、そこを評価しないと、学生だけでなく、何よりも教える側の教官の考え方も未来永劫変わらないことでしょう。

 指導医講習会でよく聞かされるのは、今の研修医は使えない、という台詞です。ほぼ全て、大学病院の指導医がそうおっしゃいます。

 興味深いことに、市中病院からの受講者からはそういう意見が出ることは稀で、むしろその指導の在り方の苦労についての相談という形で問題提起が為されます。

 制度的な問題はともかくとして、どういう部分でどういう改善が必要であるのか、医学生達自身が考えることも、また医学部教官達が考えることも必要であろうと思います。

我が国は現行の国家試験制度を永年続けてきました。そして我が国の国家試験合格医師が働いて支えてきた我が国の医療制度および医療水準はWHOによると世界一だとのことです。いまあえてコストをかけて国家試験制度を変える必要が奈辺にあるのか。医療の質を上げるための費用対効果を問題にするなら、国試制度よりはるかに先行して厚労省が変えた臨床研修制度の抜本的見直しを先に行なうべきでありましょう。

>>よく「国家試験の勉強は、現場では全く役に立たないよ」と先生や先輩方はおっしゃいます。しかし「研修医として働くのに役に立たない」と断言されてしまう国家試験、その合格を目標にして大量の暗記を強いている今の医学教育とは一体何なのでしょうか。

こんな自虐的なネタ、冗談を真に受けるようでは医師としての適格性を疑われてしまい、他人事ながら心配になってしまいますね。

「研修医は頭を使うより、まず首から下を動かせ!」というように、とにかく体で習得せよというだけの話。ただし、動くにあたっての知識偏重の国家試験の基礎的知識がベースになければ、きちんとお仕事をすることはできません。

コミュニケーションスキル、診察技法については学内の卒業時点での評価とするべきであり、国が診療行為について評価するのは困難でしょう。2年前の診療報酬改定の際、"5分診療のお手本"のような極めてレベルの低い問診が文章化されてしまうのをみれば明らかです。

まずは国全体の改革より、現在の大学内での国試偏重の教育システムの見直し、上記の先輩方、先生方の「国試役立たず」の意図を確認してみることから始めてみてはいかがでしょうか。

恥ずかしながら私は国試を2回目で合格しましたが、予備校の先生方(きちんとした臨床医の先生方もいます)の意見としては医師国家試験は学内の卒業試験のようにマニアックな知識を問うものは少なく、現実の臨床現場からみても良問が揃っているとの評価がされていることも記しておきます。

>国家試験の勉強は、現場では全く役に立たないよ

前述の方のご意見と重なりますが、医師国家試験はゴールではなく医師としてのスタートラインと考えるべきではないでしょうか。私も学生の時は国試に合格することが医師になることだから暗記ばかりの試験でいいのかと憤慨していました。

今の医学教育カリキュラムは我々の時代より臨床医として必要な能力を身につける要素がかなり組み入れられていると思います。そのような能力は1回だけの試験で判定するよりは、日頃の実習態度も合わせて評価することが妥当であり、コミュニケーションの能力、診察技術などは国家試験という大規模統一試験ではなく、それぞれの大学の医学教育課程において評価されるべきものでしょう。卒業までの臨床実習の中で研修医としてスタートするレベルに達しないと判定されれば卒業を認めないとすればよいことです。
そのためには各大学が国家試験の予備校となることなく一定水準以上の臨床実習を一定時間行う必要があるでしょう。

国家試験の時に評価される知識は臨床現場の中で役立つものが多く、研修医であればスタートラインに立つにあたって最低限身につけておいて欲しいものでしょう。ただしその知識は一生ものではなく、臨床現場では医学知識・技術は常にアップデートされ続けますから、国家試験の勉強の時に一度身につければ一生安泰というものではありません。しかし国家試験の勉強の際に、知識を身につけるための思考過程や手順(文献・書籍を調べてまとめる能力など)を習得していればそのノウハウは一生役立ちます。

医師の先輩として医学生の皆さんに言いたいことは、医師国家試験は資格試験であるということです。卒業しても国試に通らなければ医師として臨床の場に出る資格が免許されません。車の運転が出来ても道交法の試験に合格した免許証がなければ公道を走れないのです。人が一人前の医師になれるかどうかはひとえに医師として臨床の場に自ら参加する臨床研修をいかに自己研鑽に徹して過ごすことが出来るかにかかっています。少年老い易く学成り難し。光陰矢の如しですから、国試をできるだけ早く終えて少しでも早く臨床現場に医師としておいでくださることを首を長くしてお待ちしています。

国家試験の知識が臨床で役に立たないって・・・そんなことはありません.非常に重要な知識です.私は18年目の医師ですけど,今でも,Year Noteや研修医向けの雑誌などを読んでいますもん.特に専門分野でないところは国家試験レベルの知識は参考になりますよ.

この知識を臨床に生かすのは,国家試験に合格してから・・・で仕方がないでしょう.医学生の頃から心配しないでも,臨床力は研修医になってから鍛えられるといいのです.国家試験より臨床研修の方がずっとキツいのですから.

 まもなく初期研修が終わる研修医ですが、私も国家試験の知識は決して無駄だとは思いません。それについては先輩方が既に多くを語っておられますので、一つ気になった点について補足します。


>現在の日本の病院において「最善の策が施行できない」という状況はほとんどなく

と仰ってますが、これは適切な解釈ではないと思います。大学病院なら確かにそうかも知れませんが、市中病院ならできないことはいっぱいあります。

 私の経験で言いますと、精神科ローテート研修のとき、双極性障害で入院中の20代男性が当直時間帯に胸痛を訴えました。やせておられたので気胸かな、とも思って診察したのですがどうも様子がおかしい。まさかと思って心電図を取ったらAMI、しかも広範囲前壁梗塞で危険な状態でした。しかし当時私がいた病院は循環器医がおらず、PCIができないのです。もちろん転送しなければいけないわけですが、転送先を捜している間に心原性ショックになってしまうかも知れない。もちろんIABPもPCPSもありません。精神科病院なので血栓溶解薬もありません。オーベンは精神科の先生で全身管理は苦手です。

 まあ滅多にないような状況でかつ極端な状況でしたが、とにかく起こってしまった。さあこの状況で医師としてできることは? 如何に患者の命を守りつつPCIのできる病院に送るか? …という状況はいくらでもあるのです。だからもし国家試験に、AMIの心電図を載せて「以下のa~eから最も適切な処置を選べ」といってPCIやIABPやPCPSを選択肢にわざと載せない、という問題があったとしたら、その出題委員の方はとても現場のことをよく理解しておられると私は考えます。

 診断にも治療にも状況に応じた色々なステージが存在します。診断のつかないまま治療をはじめないといけないこともあります。施設によっては人員や設備が限定されていることが多く、診断や治療がそれで左右されます。最近の国家試験は以前よりクリアカットな問題が減っているのは事実だと思いますが、以前と違い医学生の半数が大学を離れ市中病院で研修をするという時代になった今、次善の策を選ばせる問題の価値はそれなりにあると思いますし、いざ現場に入ってみるとなるほどな、と思うことはいくつかありました。

 ちなみに、私の研修病院の内科部長は、私が病棟に持ち込んだイヤーノートを熱心に読まれています。系統的に知識をアップデートするのにこれほど適した教材はないそうです。もちろん疑問に思われたことはちゃんと文献に当たることが前提です。他の先生方も科を問わず手にしておられますよ。

>次善の策を選ばせる問題
実はこれが現場では最善の策となります。すなわち現実の救急の場では医学上やってはいけないことを避けるのが最善の策となるのです。

救急の事態はいつ何時発生するか誰にもわかりません。そのときに役に立つ知識と技術を身につけるのが医学を学ぶ基本です。診断検査も治療もすべて人の生身を傷つけながら行われます。資格のない者に体を傷つけられたいと思う人はいないでしょう。まずは国家試験という資格試験を通過して、実技を施す資格をもって現実の修羅場に覚悟をもって臨んでください。我々は同じ覚悟と経験をもって新人の皆さんの新しい知識をお待ちしています。
医学は出世や蓄財のための学問ではないのです。医学生の皆さんは大学で学んだ新知識を現場に伝えるすなわち社会に広める大事な役割を担っておられる。
国家試験は選抜試験ではない単なる資格試験ですから合格することは当然の前提であり、入試と違って人生にとって何の意味もない通過儀礼です。早く通過してください。

> 次善の策を選ばせる問題

 まあ、そうなんですが、大学でそのようなことを教えているということはあまりないであろうと思います。

 臨床現場と教育現場の違いといってしまえばそれまでですが、本当に国試で問うべき重要な問題であるというのが一致した現場の意見であるなら、医学生に対する教育の方も何とかすべきと思います。

 さしたる重要性がないのであれば、教えてもいないことを国試で問うべきではないと考えます。

    -オバマ大統領に捧げるメッセージー

 
    核戦争なき世界の理想実現に向けての第一歩


 
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