「標準医療の底上げで、救える命を救う」森臨太郎氏インタビュー③

投稿者: 熊田梨恵 | 投稿日時: 2010年08月10日 12:37

 森臨太郎氏(東大大学院医学系研究科国際保健政策学准教授)インタビューの最終回です。国民全体の医療を向上させるには、先端医療の開発よりも今ある医療を標準化し、底上げすることが必要と伺いました。今年度から始まった戦略研究で、森氏は実際に標準医療の底上げに取り組み始めています。(熊田梨恵)

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コメント

その通り、と拍手を送りたいです。

まさに私のライフワークである「僻地における救急医療システムの構築」のベースにある考え方がこれです。

 当たり前のことを当たり前にやることこそが医療水準の向上に繋がるはずなので、本来資金や労力を投資すべきなのはその部分だと思います。

当院は常勤医3名、当直の2/3までを出張で賄っている僻地の極小公立病院ですが、院外心肺停止症例で心拍再開率が20%、長期生存率が5%強という都市部の大病院並みの数字をたたき出しています。これは別に私個人の力が優れているとか、救命に長けた医師が揃っていると言うことではなく、10年間かけて構築した当院の救急システムの力によるものだと考えており、来年の臨床救急医学会で発表するつもりです。

 私が臨床救急医学会で強調しようと考えているのは森先生のおっしゃる「ボトムアップ」の部分、すなわち「特段の事情がない限り確実に受ける初期救急医療機関」、「精度の高い情報提供を出来、的確な心肺蘇生を出来る救急隊員」この2つを達成するだけで、現在都市部の大病院で達成しているのと同程度の救命率が僻地でも可能である、と言うことを訴えたいと思っています(もちろん、都市部で当町と同様のことが出来ればもっと救命率が上がるはずですが)。

 実際問題、当院で院外心肺停止搬送があった場合に私がタッチしているのは半分足らずです。で、長期生存例にしても心拍再開症例にしても私がタッチしていない部分で達成されているものもやはり半数あるのです。しかもその中には出張当直医が一人で関わっているものもかなり含まれています(あくまで「医師は」一人という意味です。スタッフは大勢関わってます)
 このことは当院では個人の力ではなくシステムの力で救命していると言うことを明確に示しています。

 当たり前のことを当たり前にやると言うのは難しい話ですが、そう言う政策作りが出来るかどうかが医療の本当の質を決定していくのだと考えています。

> 当たり前のことを当たり前にやると言う・・・、そう言う政策作りが出来るかどうかが医療の本当の質を決定していくのだと考えています。

そのとおりです。森氏もおっしゃるとおり。

これまですべての医療政策を作ってきた厚労省官僚が、まさにそれとまったく正反対の方向へ長年密室内で政策誘導してきたことが、ロハスメディカルのこの記事と「率直に話し合ってみたら、役者が足りなかったhttps://lohasmedical.jp/news/2010/07/30004455.php」の記事とで隠しようもなく明らかになったことと思います。

故佐藤章福島県立医科大学名誉教授がお始めになった妊産婦死亡家族を支える募金活動は、まさに厚労省が前記のごとく責任放棄しているがため生じる偏向医療行政の現実の被害者を、官自身に行政の正常化をまったく期待できないのであてにせず、民間で相互扶助の精神で支えようという活動であり、森氏のボトムアップ理論をボランティアの形で先行実践したものであると思います。

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