「任意接種」 っておかしくないですか?

投稿者: | 投稿日時: 2011年10月04日 13:10

9月30日のワクチンフォーラムでは、前回取り上げたムンプスワクチン以外にも水痘ワクチンやB型肝炎ワクチン等、任意接種ワクチンの問題が紹介されました。それらに触れながら、任意接種そのものの問題点も考えてみたいと思います。


●水疱瘡ワクチン、日本の接種率はわずか30~40%。
日本で開発されたワクチンで、任意接種。国内の接種率は30~40にとどまるのに対し、海外では国のワクチンプログラムに取り入れられており、齋藤氏によれば諸外国では感染者を見たことがないとのこと。

水疱瘡はおたふくかぜと同じように、合併症が深刻なことも有名。ウイルスが中枢神経にダメージを与え、小脳失調や脳炎を引き起こし、とくに妊婦では胎児死亡率が高くなります。がん化学療法後の白血病の患者さんなど、免疫不全の人にとっても脅威です。


●おたふくかぜワクチン、水疱瘡ワクチンは、2回接種を。
この両者は、日本では1歳から1歳3ヶ月の間に1回接種するのが標準的です。ただ、添付文書にはないものの、国立感染研や日本小児科学会が推奨するスケジュールでは、さらに5歳から6歳にかけて、両方のワクチンをもう1回接種するのが望ましいとしています。

というのも、接種率が上昇してくると、今度はそれらの病気と自然に遭遇・接触・感染する機会が減るため、社会全体として免疫力が下がってしまうのだそうです。そしてまた患者が増えてしまうとのこと。実はこれらのワクチンは、1回の接種で免疫は90%つくと言われますが、要するに不完全。2回接種で99%となるそうなのです。我が家でも、下の子の1回目の接種だけでなく、上の子の2回目接種も検討を始めました。もちろん、本当はおたふくかぜはJeryl-Linn株がいいのですが・・・。


●B型肝炎の3分の1は母子感染以外のルートで感染。
日本では母親がB型肝炎のキャリアの場合に、生後2ヶ月から数ヶ月間に3回、健康保険適用で接種することができます(母子感染防止対策事業)が、国立感染研作成のスケジュールは分かりにくく、何より、母子感染以外の水平感染については想定されていません。実は母子感染以外に、父子感染が全体の24% 、その他の感染源が12%となっています。濃厚な接触(唾液などのついた手でものを食べた、タオル共有など)が原因で、齋藤先生によれば数年前には保育園の保育士がキャリアで園児ら十数名が感染した例もあるそうです。

海外の多くの国々では、キャリアの人が身近にいる子どもに限らず、水平感染防止のため国のスケジュールとして、selectiveでなくuniversalに接種を行うのが通常。日本は国内での感染のみならず、感染者の多い中国等にも隣接しているのに、あまりに無防備です。


こうしてみると、そもそも定期接種と任意接種の区別があるのがおかしい気がしますよね。

①ワクチンで防げる病気で、
②深刻な合併症を引き起こす可能性が少なからずあり、
③国家全体として、ワクチンの費用よりも、治療費や罹患・看病のための欠勤・休職による損失が上回る

という場合、それは国民を守る観点からも、国家経済の問題としても、国が費用負担してワクチン接種を推進するのが当然といえます。専門化が必要だと認めたうえで国が薬剤として認可したワクチンなのに、なぜ国が積極的に、責任持って接種を国民に働きかけないのでしょうか。


ここで改めて、定期接種と任意接種の違いを、フォーラムの冊子から抜粋してみます。
●定期接種:国が責任を負う、予防接種法で規定、費用は原則国が支出
●任意接種:個人が責任を負う、予防接種法の規定なし、費用は原則実費(一部、地方自治体が補助)、接種者の経済的負担が極めて大きい

予防接種法はこちら

要するに、任意接種というのは、「何かあっても国は責任を負いたくない!」ということなのでしょうか(そのワクチンそのものについて、使用方法等含めて国が承認しておいて何を言っているのか、という気がしますが)。ここでいう「責任を負う・負わない」というのは、副作用などが生じた場合に、国による「救済制度」が受けられるかどうか、で、任意接種は「NO」というわけです。任意接種による被害がおきた場合は、ワクチンやその他の薬を審査する機関である「医薬品医療機器総合機構」(PMDA、)が補償することになっているようです。といっても、これはワクチンそのものに問題がある場合で、投与量を誤るなどの医療機関での問題については補償の対象にはなりません。(ちなみに定期接種に組み込まれているワクチンでも、定められた期間を過ぎてしまえば、任意接種と同じ扱いになってしまいます。だから接種スケジュール管理がなおさら大変なんですよね。まったく、どれだけ国は責任逃れの道をたくさん用意しているんでしょうか・・・。)

この「救済制度」の問題、実はこれが定期接種・任意接種の問題の“肝”、という話もあります。それについてはまた後日改めて書いてみたいと思います。


なお費用について言えば、齋藤氏がフォーラムで報告した例では、0歳から15歳までにインフルエンザ、B型肝炎、水疱瘡、おたふくかぜ、ヒブ、肺炎球菌、HPV(子宮頸がん)の予防ワクチンの任意接種を受けるとすると、親の負担は子ども1人当たり25万円にもなるそうです!!

改めて負担額の大きさに驚いてしまいました。病気をワクチンで予防できるなら(もちろんワクチンの安全性が担保されていなくては困りますが)受けさせてあげたいと思うのが親心ですが、この金額では、子どもの多い家庭では到底、全種類受けさせられないのではないでしょうか。なかなか接種率も上がらないのも無理もない話です。(ポリオの不活化ワクチンが手に入ったとしても、それまで実費となれば、負担はさらにかさみます。つい打ち控えて様子を見てしまいたくなる気持ちもわからなくはありません。実際にはそれもとても危ない橋渡りですが・・・)。


さて、次回は同時接種について書いてみたいと思います。そこにもいろいろおかしなことがあるようです。

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