ポリオ生ワクチン接種率低下 懸念が現実に・・・!

投稿者: | 投稿日時: 2011年10月05日 01:40

昨日、厚労省は各都道府県に対し、保護者へポリオ予防接種(生ワクチン)を勧めるよう通知を出しました。またそれにあわせて会見を開き、小宮山厚労相自ら異例とも言える呼びかけを行いました。9月30日のワクチンフォーラムの話はちょっとお休みして、今回はそれについてちょっとまとめておきたいと思います。


●「ポリオ生ワクチンでも接種を」厚労省が呼びかけ 不活化導入は来年度末2011.10.4 産経新聞

●ポリオ:生ワクチン接種要請 厚労省2011年10月4日 毎日新聞


これらの報道によれば、不活化ワクチン導入は早くても2012年度末とのこと。つまり、例えば今年の春に見合わせて、任意で輸入ワクチンを打つわけでなく、不活化ワクチンの定期接種導入まで待とうという人は、2年近く無防備ということになります。シーズン入りしている秋の接種を見合わせるケースや、もうすぐ生まれてくる赤ちゃんたちで生ワクを避けようとする人も、このままでは続出しそうです。


この厚労省の異例の呼びかけを受け、昨日夕方の報道番組「News Every」(日本テレビ)でもポリオワクチンについての特集が組まれました。


そこでは、先日の不活化ワクチン検討会でも日本小児科医会の保科会長が触れていた、この春の東京都港区の大幅な接種率の低下が紹介されていました(震災の影響もあるかもしれませんが)。昨年の春・秋はともに平均で80%を越える接種率でした。ところが、この春は1回目接種が52.1%、2回目接種が70.9%。そして番組では一昨日の接種についても、「集まったのは、定員(150人)の3分の1にも満たない49人でした」と報告していました。


上記の数字、とくに今年春の1回目接種の想像以上の数値の低さ、そしてこの秋の出足の悪さに、思わず唖然としてしまいました。不活化ワクチンの絶対的な不足を考えると、ポリオに対してまったくの無防備の子どもが毎回半分以上、その傍らで、ポリオ生ワクチンを接種した子からは来年度末まで半年に1度、最低1ヶ月間は、ポリオウイルスが排出され続けるのです。もちろん、中国など、そう遠くない国での野生株の流行もニュースになっています。


昨日の厚労省の異例の呼びかけですが、改めて「なにをやってるんだか」と言いたくなりました。今年の5月、自ら不活化ワクチン導入を不用意に(まったくもって不用意としか言いようがないですよね!)発表しておいて、今さら何をあわてているんだ、という感じです。生ワクチンへの不安と不活化ワクチンを希望する声がこれだけ高まっている中で、そんなことを発表すれば、打ち控えは当然の結果。ちょっと考えれば予想できた事態です。


厚労省は、「ワクチンの未接種者が増えると免疫を持たない人が増え、国内でポリオが流行する危険性がある。いったんポリオが根絶された地域でも、中国などのように再流行が起きた国もあり、市町村から案内が来たら接種を受けてほしい」(毎日新聞)と説明したそうですが、自ら蒔いた種に対してなんともお粗末な対応です。これだけ情報が一人歩きした段階では、もはや策の伴わない単なる厚労省の呼びかけなんて無力じゃないかな、と思ってしまいます。事の重大さは、確かに厚労省が言っている通り、恐れている事態が迫ってきているわけなんですが・・・。


ちなみに、昨日の厚労省の説明では、生ワクチンで麻痺が残ったケースは「ここ10年間で15例(100万人あたり約1.4人)」という数字が示されていました。そしてNews Everyでは、不活化ワクチン検討会座長の岡部氏(国立感染研感染症情報センター長)がVTR中で、「年間に1人か2人」と説明していました。(←これだけのことを喋ってもらうのにわざわざ偉い先生のご登場!)ただ、我が子のように麻痺が出て回復したり、ごくごく軽度だったりして、ポリオの予防接種による麻痺と気づかないままの子を含めたら、その数はずっと大きくなりそうですよね。そこについては繰り返し言っていきたいと思います。


それにしても、今回の厚労省の通知と厚労大臣の会見にあわせて組まれたNews Everyの特集、厚労省の会見だけでは事態の全体像がつかめない人、そして、ただなんとなく怖がって生ワクチンを避けているけれど不活化ワクチンも受けさせていない親御さん、どんな人にもわかりやくかいつまんで状況を解説してくれました。テレビ、だけとは言いませんが、番組作りっていろいろと大変だなあ、とそんな余分なことをつい頭の隅っこで考えながら見た部分もあります。でも総じて、非常に参考になりました。特集の最後で「日本はワクチン後進国」「行政の責任」とまとめていましたが、本当にその通り。でも、だからこそ、私たち子どもの母親が知識をつけ、認識を高めて、「YES」「NO」を行動で示していくことが大事なんですよね。

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