ポリオ 私自身もおそらく二次感染していた?

投稿者: | 投稿日時: 2011年11月17日 16:52

昨日、神奈川県が不活化ポリオワクチン1200本を12月中旬より輸入・接種していくことを明らかにしました。対象は生後3ヶ月から18ヶ月、郵便はがきでの応募です。いよいよ動き出したというわけです。


こうして少しずつながらも着々とポリオワクチン問題が動いていく中、気がかりな話がもう一つ残っています。
以前から聞かされてはいましたが、昭和50年から昭和52年生まれの人は、ポリオに対する抗体の保有率が低い、というものです。

厚労省の資料を見ていくと、2000年8月31日に「『ポリオ』と『ポリオの予防接種』について知っていただくために」という文書を出していて、そこにもこうあります(【】は引用)。


【ポリオウイルスには、I,II,III型の3つタイプがあり、ふつう、健康な人がきちんとポリオの予防接種を受けた場合は、それぞれに対する免疫がつく割合(抗体保有率)は、I型で98%、II型で99%、III型で87%です(平成6年度流行予測調査より)。しかし、受ける人の体質、その時の体調などによって免疫がつかないことがあります。また、予防接種を1回しか受けなかった場合にも十分に免疫がつかないことがあります。(「IV-1 現在のポリオワクチンには、毒性を弱めたウイルスが入っています。」参照)

 昭和50年から52年生まれの方については、I型の抗体保有率が低い(昭和50年生:56.8%、昭和51年生:37.0%、昭和52年生:63.8%)ことがわかっています。しかし、この年齢層でもII型に対する免疫は十分についていますので、I型やIII型に対してもある程度の感染予防の効果はあるといわれていますが、ポリオの流行地に行く際やお子さんがポリオの予防接種を受ける際には、子どもの頃にポリオの予防接種を受けた方でも予防接種を受けることをお勧めします。】


とくに後半部分については、このようにも説明があります。

【接種を希望される方については、次に示す時期に、ポリオワクチンの予防接種を受けられることが適当です。
昭和50年から52年に生まれた方で、
1 ポリオウイルス常在国に渡航される時
2 お子さまがポリオワクチン接種を受ける時(受ける時期はお子さまと同時期)

 なお、希望により、抗体検査実施後、予防接種を受けることも可能ですし、抗体を有している方が予防接種を受けたとしても、特に副反応の発生する率が高くなるということはありません。上記年齢以外の方についても希望されれば、予防接種を受けることも可能です。以上の場合の予防接種は法律に基づくものではなく、任意接種の対象となりますので、自費で接種を受けることになります。また、抗体検査費用についても同様に自費となります。】


うーん。なんだかいろいろおかしくないですか?まず生ワクチンであることをさっぴいても、抗体価が低いのは非接種者のせいじゃないのに、抗体検査費用も追加接種費用も自費だなんて。


そういえば思い出しました。私も長男がポリオの生ワクチンを接種した当時、この事実が問診票と一緒に送られてきた説明書きに添えられていて、ちょうど昭和52年生まれで該当するので接種時に保健師さんと思しき方々に申し出たのですが、「それではご自身で別途、医療機関へ行って自費で検査するか、あるいは接種していただくことになります」と言われました。「だって今から長男が接種するのに、いまさら言われても遅いでしょう」と思い、「私もこのワクチン飲めないんですか?」と聞いたのですが、あっさり断られたのでした。(そしてそのままそれっきり・・・)


しかも、そもそも生ワクチンで麻痺が出やすい体質であったりしたら、2次感染対策に生ワクチンを飲ませるというのはいかがなものでしょうか。それこそ2次感染どころか、普通に感染して麻痺が出るかもしれません。とってもナンセンスですよね。


ちなみにこの文書は、ポリオ生ワクチンによると見られる麻痺などの患者が相次いだために、2000年春の予防接種が中止となり、秋の定期接種時期を前に、全面再開にあたって出されたもの。その件については以下のように説明しています。


【父親の事例はポリオの予防接種と関係があるものの症状や頻度はこれまでにも報告されている範囲内と考えられること、ワクチンの製造過程などにも問題がないことがわかりました。このような状況から、ロット39のワクチンに問題はなく、今後も使用して差し支えないと判断されました。】

【日本では、1980(昭和55)年の1例を最後にポリオの自然感染(野生株のポリオウイルスによる感染)の報告はありません。このような状況の中で、なお、ポリオの予防接種を継続する必要があるのだろうかという意見もあるかも知れません。しかし、今でも海外からポリオウイルスが国内に入ってくる可能性があること(V ポリオの予防接種は、今も必要なの?」参照)、一方、予防接種によりポリオの感染予防や流行を防ぐ効果は極めて高いことから、厚生省では、これからもポリオの予防接種を引き続き行う必要があると考えています。】


要は、「製造過程に問題のないワクチンでも、2次感染して麻痺が出ますよ」という確認。そして、日本では野生株は存在しないことも明記し、「日本ではワクチンからしかポリオに感染せず、感染すれば一生麻痺が残る可能性もありますが、それでも生ワクチンをうちましょう」ということですね。


また、今年の1月に発表された「2010年東京都流行予測調査事業におけるポリオ中和抗体保有状況」は、都内に居住する生後10ヶ月から78歳までの健康な都民について2010年7月~10月に調査を行ったものですが、そこにこんな記述があります。

【40歳以上の年齢階層になると、ワクチン非接種者の中和抗体保有率は、1型、2型、3型とも100.0%で、ワクチン接種者の中和抗体保有率(1型:57.1%、2型:85.7%、3型:66.7%)よりも高い傾向であった。】

【ポリオ生ワクチン接種歴の有無による中和抗体保有率は、年齢階層が0~1歳児のワクチン接種者では、1型94.7%、2型100%、3型36.8%であった。ワクチン非接種者では、1型と2型が37.5%、3型0%で、ワクチンを接種した場合に比較して約4割あるいはそれ以下の抗体保有率に留まり、ワクチン接種者と非接種者の差は顕著であった】


びっくりしました。


まず1つ。要するに、ワクチンを接種しなくても、40代以上の人はみんな抗体がある。未接種の乳児でさえ、ある程度抗体を持っている。日本には野生株ポリオはいないわけですから、つまりはみんな、ワクチンを接種した子供や孫、あるいは同年齢の子供からの2次感染によって知らないうちに免疫をつけているのですね。


そもそも、ポリオは不顕性感染が多いことは、先の厚労省の文書にもちゃんとありました。

【ポリオウイルスに感染しても、多くの場合、病気としての明らかな症状はあらわれずに、知らない間に免疫(その後、ポリオに感染しない抵抗力)ができます(不顕性感染(ふけんせいかんせん))。】

【麻痺があらわれた患者さん一人の周囲には数百人から千人程度の不顕性感染の人がいると言われています。】


そんなこんなからすると、私は52年生まれ、主人も51年生まれですが、すでにきちんと免疫がついていることでしょう。何しろ長男はワクチンからポリオに感染して麻痺まで出ました。普段、子供たちがもらってきた風邪や胃腸炎でさえ、気をつけていても簡単にもらってしまうことを考えれば、長男が生ワクチン接種後に1ヶ月近くウイルスを排出し続けていた間、ずっとわが身をウイルスから遠ざけていられたとは到底思えません。抱っこしたりオムツを替えたり、密着しっぱなしだったわけですから。


それにしても、これだけ生ワクチンからウイルスが人から人へ伝わりやすい以上(不顕性でも感染は感染ですよね)、当然、生ワクチンをやめない限り感染者が国内から消えることはないわけで、むしろ接種すればするほどウイルスがばら撒かれると。いったい何のためのワクチン接種なのか、という気がしてなりません。


そしてもう1つ。接種者の中和抗体保有率が、軒並み低い(!)。今、世界で最も流行している1型の保有率も、60%に満たないとは・・・。日本では生ポリオワクチン2回接種が法定されていますが、1型~3型まであるのですから、それぞれの干渉を考えれば、生ワクでも不活化でも、やはり最低3回は打つべきではないのでしょうか。なぜ2回で良しとされているのか、誰が由よしとしたのか、非常に気になります。


最後にオマケ。日本小児科学会予防接種・感染対策委員会が去る14日、このところのポリオワクチンの打ち控えに対する見解を発表しました。


が、「接種率低下はまずいから、接種控えはやめましょう」「国によって承認されている生ワクチンで被害にあったら、国による救済があります」「今、国内メーカーが不活化ワクチンを作って、一刻も早くと安全性を治験によって確かめているところです」ということ。・・・って。これって要は厚労省の言っていることと全く同じですよね?


本当に子供たちを思うのだったら、一人や二人は被害にあうこともやむをえないのを前提とした救済制度の話などしていないで、世界的に安全性が認められている不活化ワクチンにいますぐにでも切り替えるべき、と主張するところではないのでしょうか。子供たちに一番近いところにいる小児科の医師たちを代表する見解がこれというのは、非常に残念です。もちろん、小児科の先生たちの中には信念を持って不活化ワクチンを個人輸入し、接種している方々もきちんといます。しかし上がこのような態度では・・・。現場の地道な努力を否定するようなものですよね。


万が一、いいえ2000万が一、未承認の不活化ワクチンで事故が起きること、つまり場合によっては自分たちが裁判の被告になる事態はなんとしても避けたいということでしょうか。しかし、だったら、その何十倍の可能性で、自分たちの手で投与した生ワクチンから子供たちに一生残る障害を負わせることは平気なのでしょうか。よくよくご再考いただきたいと思うばかりです。

<<前の記事:国会議員ポリオワクチン勉強会    TPP問題、医療界が押さえるべきツボは―梅村聡参院議員に聞く:次の記事>>

トラックバック

昭和50〜52年生まれの人はポリオの抗体価が低いというのはご存知でしょか? 9月からの不活化ワクチン開始に際して、子供と一緒に予防接種するのもひとつ... 続きを読む

コメント

日本の定期接種でのOPV二回って決まりが、

世界基準の三回あるいは四回から外れている、

ってことも皆さんご存じないのでしょうね。
ですから、日本人全体が抗体を十分に持っていない恐れがある中で、
とりわけ、昭和50~52年生まれ、がアウト。

成人になってからポリオに罹患すると重症化する可能性が高いと耳にしたことはありますが。

コメントを投稿


上の画像に表示されているセキュリティコード(6桁の半角数字)を入力してください。