メタボの原因はマグネシウム不足?!

投稿者: | 投稿日時: 2017年04月01日 23:08

「ロハス・メディカル」2017年1月号では、マグネシウム(Mg)不足が虚血性心疾患や2型糖尿病の発症を低下させることが取り上げられています。また前回は、Mgはカルシウムの暴走を抑え、細胞の興奮を鎮める方向に働く「抗ストレス・ミネラル」であるという話を書きました。今回は、Mg不足がメタボにつながる、という話です。


不足が中性脂肪値の上昇と善玉コレステロール低下を招く


脂質異常症は、中性脂肪やコレステロールといった血中の脂質成分の値が異常を示した状態を言います。具体的には、「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールや、血液中の中性脂肪(トリグリセリド、TG)が必要以上に増えてしまっているか、または「善玉」とされるHDLコレステロールが減っている状態です。


かつては、「悪玉」、「善玉」を区別せずに総コレステロール値が一定の値を超えた場合も、「高コレステロール血症」と呼ばれ、治療の対象とされてきました。しかし、実際に心筋梗塞や脳卒中を起こす動脈硬化を進展させるのは、「超悪玉」と言われるsdLDLコレステロールであることが分かってきました(ロハス・メディカル2017年4月号)。現在、人間ドックなどで行われている通常の血液検査では、LDLコレステロールとsdLDLコレステロールが区別されてはいませんが、LDLが高いほどsdLDLも高くなることが分かっています。また、中性脂肪値が高いほど、sdLDLが出来やすいことも明らかになっています。


では、こうした血中の脂質成分と、Mgがどう関係しているのでしょうか。


Mgは、血中の中性脂肪の分解に深く関わっています。肝臓から中性脂肪を積んで放出されたVLDL(LDLの前段階)は、脂肪分解酵素によって中性脂肪を分解され、LDLとなります。中性脂肪が分解されて出来る遊離脂肪酸は、体を動かすエネルギー源として利用されます。ところが、この脂肪分解酵素が産生され活性化するには、Mgが不可欠なのです。つまりMg不足は脂肪分解酵素の働きを低下させ、中性脂肪の分解が進まずに高TG血症を招くのです。


さらに、Mg不足はHDLコレステロールの代謝も停滞させます。小腸や肝臓で作られた未熟なHDLは、血中のLCAT(レシチンアシルトラスフエラーゼ)と呼ばれる成分の働きによって、体の各組織で使われなかったコレステロールを受け取ることができ、成長していきます。ところが、このLCATの活性にもMgが関わっているのです。つまりMg不足ではLCATの活性も著しく低下し、低HDLコレステロール血症につながります。


また、Mgは小腸での脂肪吸収にも関わっています。腸管内でMgは脂肪を固まらせる働きを持っているので、Mgの摂取量が増えると脂肪の吸収が抑えられて排泄が促進されるのです。ですからMgが不足している場合には逆に、脂肪吸収が増えることになります。実際、にがりなどMgを高濃度に濃縮した液を多く摂取することで、高TG血症が改善することが示されています。


Mgはメタボの背後にある全身炎症とインスリン抵抗性を抑制


東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科の横田邦信教授によれば、Mg不足は高血圧にも関与します。


これまでにMgのカルシウム拮抗作用について触れてきましたが、同じ仕組みで、Mgは血管の収縮と拡張をコントロールしています。Mgが不足すると、血管を形作りその伸縮を担っている平滑筋細胞から、カルシウム排泄が滞ります。細胞内のカルシウムが過剰になると、平滑筋細胞は収縮して血管は狭まり、その結果として血圧が上昇するのです。


さて、日本では、ウエスト周囲径(おへその高さの腹囲)が男性85cm女性90cmを超え、高血圧・高血糖・脂質代謝異常の3つのうち2つに当てはまるとメタボリック症候群と診断されます。


今回の脂質異常と高血圧、それにロハス・メディカル2017年1月号で取り上げた2型糖尿病(高血糖)、いずれもMgの不足によってリスクが高まります。つまり、Mg不足はメタボを発症する可能性を高めてしまうのです。


メタボの定義や診断基準は、これまでに細かい部分は少しずつ変わってきましたが、根本にあるのはインスリン抵抗性(インスリンがききにくい状態)です。一般に、カロリーの摂取過剰や運動不足により肥満になるとインスリン抵抗性が引き起こされますが、その背景には脂肪細胞の肥大に伴って放出される炎症物質と、それによる全身炎症があることが分かっています。そして、Mgを摂取するほど全身炎症は抑えられ、インスリン抵抗性が低下することも報告されているのです。


医療現場の認識は「下剤」のままですが・・・


さて、日本人には慢性的なMg摂取不足の現状があり、また一方で生活習慣病にMg不足が深くかかわっていることがこうして明らかになってきているのに、医療現場のMgについての認識はいまだに「下剤」(効果が緩やかで副作用も少ないため、お年寄りの慢性の便秘などに処方される「緩下剤」)の主成分、というのが現実です。非常にもったいないことですよね。虚血性心疾患も、糖尿病も、脂質異常症や高血圧も、いっぺんに改善できる身近な方策が見過ごされているのです。


ただ、見方を変えれば、Mgは処方薬として既にあるということですから、あとは用量と適応の問題とも言えます。しかも、多めに摂取した場合でも、副作用は下痢程度で済むことも分かっていますから、安全性が非常に高いということでもあります。


ただ、よくよく考えれば、Mgを生活習慣病治療薬として摂らねばならない理由はありませんよね(サプリメントとしては、カルシウムと一緒に配合されているものが一般的で、相対的にカルシウム過剰になりがちなことはロハス・メディカルで指摘しました)。医療費増大に不必要に拍車を駆けるようなものです。Mgを多く含む食品を食事に取り入れることは、心がけ次第でそれほど難しいことではないからです。


個人的にはお勧めは、「にがり」(塩化Mg)です。大きめのスーパーマーケットに行けば、小さなボトルに入ったものが数百円で売られています。ご飯を炊く際に研いだお米の中に数滴、あるいは味噌汁を作ったらお鍋に数滴、加えるのです。臭いもありませんし、味の変化なども感じず、普通に食事を楽しめます。また、無調整の豆乳を買ってきて小鉢に注ぎ、にがりを数滴たらし、ラップをかけてレンジでチンするだけで、風味豊かななめらか豆腐の完成です。にがりの量を調整すれば硬さを変えることができるので、柔らかくトロっとした食感にしても美味しいですよ。私は、出来立てのアツアツを、何も調味料を使わずに頂くのがお気に入りです。ぜひ試してみてください!

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