小林一彦・臨床医ネット代表インタビュー
――拝見しました。何だか患者さんに責められていましたよね。
実際の収録場面では、そんなことはなかったのですよ。詳しくは臨床医ネットの第2弾の意見書を読んでいただきたいのですが、前回の番組と同じように、我々と製作者とで問題意識がずれていました。
私たち臨床医は、進行がんの場合どんな治療にも反応しなくなる時が来ること、そうなってなお治療を続けるのは患者さんを苦しめるだけになるかもしれないこと、これをイヤというほど経験しています。進行がんの医療に意味がないと言うんじゃありません。進行がんは治らないということを患者さんや家族が直視してくれないと、患者さんの苦痛を取り除けないのです。
しかし番組は「がんは必ず治るものなのに、医療側の不備で満足な治療が受けられない」という誤ったメッセージが受け取られかねない内容でした。収録前日に初めて進行予定表を見せられて強く懸念を感じ、持ち帰って仲間たちと相談しました。そして、袋叩きに遭うかもしれないけれど現場から見た事実を言い続けよう、こう決めて収録に臨みました。
粘り強く言い続けたことで、最初は拒否感を示していた患者さんの代表たちにも最後は分かっていただけたと感じました。しかし実際に放映された番組では、こちらの真意を反映しない引用をツギハギで編集され、我々臨床医ネットの意見はまったく伝えられませんでした。マスコミはマスコミの都合でしか、問題点を捕らえられないのですね。マスメディアは怖い、と、しみじみ思いました。
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