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ニュース〜医療の今がわかる

和賀井敏夫・順天堂大学名誉教授インタビュー 

――研究費は医局から出たのですか。

 いえ。助手が自分で勝手に始めた研究ですから、共同研究のパートナーを自分で探すしかありませんでした。そこで手を上げてくれたのが日本無線(現アロカ)です。もちろん満足な研究室もありませんでした。

――初歩的な質問で申し訳ないのですが、なぜ超音波で検査ができるのでしょう。

 画像診断装置は、体内を透過する電磁波などが、間にあるものの状態により透過の具合が変わることを利用して、体内の様子を再現するものです。CTやMRI、PETなどは電磁波を用いますが、超音波影像法では読んで字のごとく音波を用います。音波の大きな特徴は伝播速度が電磁波よりはるかに遅いことで、結果として透過波だけでなく反射波を捉えて解析することも可能になります。画像診断に用いる超音波は100万~1000万ヘルツという非常に高い周波数のものです。なぜこのような高周波を用いるかといえば、周波数が高くなると指向性が高まり波長も短くなって解像度が上がるからです。

 最初のころは単純に反射波形を見る「Aモード法」の研究をしていましたが、どうも再現性と説得力に欠けるので、魚群探知機やソナーにも用いられている「Bモード法」で人体の断面を描くことができないかと考えました。しかし、このアイデアを工学部の先生や日本無線の技術者に話しても、きれいな海の中と違って体内は障害物だらけだから像になるはずがないと相手にされませんでした。ならばまずは自分たちでやってみようということになり、大学から歩いてすぐの秋葉原まで出かけていって、ジャンク屋で部品を揃えて実験してみたところ、ちゃんと体内の断面が撮れました。日本無線の技術者も納得して、昭和28年に試作品第一号が完成しました。

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